2024年 3月 29日 (金)

<ジョーカー・ゲーム>
スパイに仕立てられた亀梨和也・・・派手なラストシーンに「よっ、待ってました」

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   日本推理作家協会賞受賞作である柳広司の同名スパイ小説の映画化である。第2次世界大戦前夜の陸軍士官学校で、上官の命令に背き極刑を言い渡された青年(亀梨和也)を謎の男・結城(伊勢谷友介)が訪ねてくる。極刑を免れる代わりにスパイになれというのである。

   結城が作ったスパイ養成組織「D機関」で訓練を受けた青年は、ある任務を命じられる。国際都市「魔の都」にあるといわれる機密文書「ブラックノート」の奪還だった。

   青年は嘉藤という名前が与えられ「魔の都」に向かうが、ブラックノートを狙う各国のスパイたちが次々と立ちはだかる。

ハリウッドにゃ作れない低予算傑作アクション

(C)2015「ジョーカー・ゲーム」製作委員会
(C)2015「ジョーカー・ゲーム」製作委員会

   原作に漂うほの暗い雰囲気にポップな作風の入江悠監督がどう切り込んでいくのか、期待と不安を抱えて見たのだが、見事に入江色に染まっていて驚いた。原作のエピソードを取り入れながら再構築されたストーリーは、どこかご都合主義で、キャラクター演出もこれでもかというくらいステレオタイプなのだ。

   しかし、そんな「俗っぽさ」がかえって質の高いエンターテイメントになっている。たとえば、嘉藤が各国のスパイと戦うシーンでは、周りのあらゆるものを武器するのだが、ハラハラしながらもクスッと笑ってしまう。そんな演出が随所に出てくる。

   同じスパイ映画をハリウッドが作ってもこの魅力は出ないだろう。それ相応のお金をかけてしまうからだ。この映画は舞台が架空の国際都市というスケールの大きい話でありながら、比較的少ない予算で撮られている。少ない予算をどう工夫して使うか。自主制作映画や低予算映画を作り続けてきた入江監督の真骨頂だ。推察するに、今回、入江監督に白羽の矢が立ったのもそんな理由からだろう。抑えるところは抑え、その分クライマックスは派手に打ち上げる。そんな入江節ともいえるラストには、「よっ、待ってました」と声をかけたくなる。

   原作ファンからクレームがつく可能性は高いが、映画は映画と割り切って見れば、この原作をこう描いたのかと2倍楽しめる。日本映画がハリウッドの真似事をしても仕方ないということを改めて思い知らされる作品だった。

野崎芳史

おススメ度☆☆☆☆

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