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「選挙」巨大政治マシーンに翻弄される素人候補

【 365日映画コラム 】
07/4/16 コメントを見る・書く(1)
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   記録映画というのは、だらだらとお説教され退屈なものと相場が決まっていた。だがマイケル・ムーア監督が02年にアメリカの銃社会を批判する「ボウリング・フォー・コロンバイン」や、ブッシュ大統領を馬鹿だアホだと罵倒する「華氏911」などで関心が高まり、今年はアル・ゴア元副大統領の地球温暖化の危機を訴える「不都合な真実」が大ヒットするなど、ドキュメンタリーへの関心は高まっている。

(c) Laboratory X, Inc
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   東京都知事選挙など統一地方自治体選挙前半戦は終わったが、自治体選挙は後半戦を迎える。タイミング良く地方選挙を取り上げたドキュメンタリー映画がある。アメリカ在住の映画監督、想田和弘が独自の取材で纏め上げた作品。05年秋、東大時代の学友、山内和彦が川崎市議補欠選挙で自民党公募に応じ、全く無縁の川崎市宮前地区で「落下傘候補」として戦った選挙戦2週間を追った記録だ。

   ドキュメンタリーといえども予め脚本があり進行表がある。(だからヤラセは常識なのだが)想田和弘はシノプシスも脚本も準備は一切なし。ぶっつけ本番で監督、撮影、編集をやってのける。ハンディなHDカメラで高画質の撮影が出来るのも、ドキュメンタリー映画が発達した理由の一つだ。気軽に候補者、山内和彦の後を追っている。

   山内和彦は不思議な人物。気象大学校と信州大学を中退して東大を卒業。その後、東大社会情報研究所の研究生を経て、気ままにコイン商を営む。自由奔放な性格で、暇を見つけて世界を鉄道旅行し、切手とコインを集めた。40歳になり経験もない政治の世界に足を踏み入れることになったのは、誘いに乗って川崎市議補欠選挙に応募したから。選挙には自分の財産総てをつぎ込む。

   自民党と言う巨大政治マシーンが、このずぶの素人を選挙戦の枠組みの中でいじめおだて、教育していく。興味は果たして当選するのかしら? ドラマでなく実際の選挙だから面白い。伝統としきたりと上下関係ばかりの自民党組織。「何をやっても怒られ、何もやらなくても怒られ」あっちに頭を下げこっちに詫びを入れ、こづきまわされても笑顔を絶やさぬ候補者。キャリアウーマンのさゆり夫人は深夜に仮住まいの狭いアパートでインスタントラーメンを食べながら文句たらたら。「電柱にまで頭を下げる」どぶ板選挙の実態が描かれる。

   幸いなことに「小泉劇場」の真っ只中。参議院議員神奈川補欠選挙の川口順子候補者の応援に小泉首相がかけつけ「ついでに」山内候補も応援してもらえる僥倖に映画は盛り上がる。選挙戦にはその他の国会議員も駆けつける。石原伸晃、橋本聖子、荻原健司など雲の上の先生方がおざなりの応援演説をする。神奈川県議員、川崎市議員など先輩諸氏が哀れな候補者を引き回し手取り足取りコーチする。

   今年2月のベルリン映画祭など海外の映画祭に参加して、賞こそ貰ってはいないが、珍しがられて注目を浴びた。ヴァラエティ誌の批評は「日本式地方選挙の誰も知らぬことを詳細に(fly-on-the-wall)皮肉に描いている」と誉めている。ただ2時間になんなんとする長さにはいささか辟易とする。60分のショートバージョンがユーロパブキャスターで、90分版がアメリカPBSで放映される予定。


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