2024年 3月 29日 (金)

長谷川洋三の産業ウォッチ
環境: チェコ大統領の京都議定書批判

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「地球温暖化はひどい誤解だ。チェコは京都議定書に署名したが、悲劇的な間違いだと思う」――。

    日本、チェコ国交樹立50年を機にビジネス代表団を伴って来日したチェコ共和国のヴァーツラフ・クラウス大統領(65)は2007年2月14日、東京・内幸町の日本記者クラブでの会見で地球温暖化対応について質問した私にこう答えた。

   チェコは2004年に欧州連合(EU)に加盟し、日本からもトヨタ自動車松下電器産業などが進出している。首相時代にも来日したことのある同大統領は、双方の経済交流活発化をねらいに来日し日本経団連日本商工会議所など経済界首脳に愛想をふりまいた。しかしEUや日本が地球温暖化防止の先導を切ろうと批准した京都議定書に、2年後にはEU議長国になるチェコの大統領自ら異論を唱えた発言に周辺はびっくりした。1980年代にワルシャワ兼ウィーン特派員としてチェコを何度も訪問したことのある私としても、中欧の先進国首脳として地球温暖化対応推進に踏み込んだ発言を予想していただけに意外な返答だった。

   クラウス大統領は1941年6月プラハに生まれ、プラハ経済大学を卒業後、イタリア、米国に留学。チェコスロバキア科学アカデミー研究所に勤務し、同アカデミー予測研究所主任研究員を務めたこともある。1989年のチェコのビロード革命後、チェコスロバキア連邦財務相を務め、1992年から97年にかけては首相にもなった。2003年3月に大統領に就任し、小泉前首相のチェコ訪問の際には歓迎陣の先頭にたった。14日の記者会見では「この10年間に日本企業のチェコ進出企業の数は49社から182社に増えた。もはや共産主義の時代は話題にものぼらず、チェコは普通の欧州の国になった」と強調したが、京都議定書については不協和音をかもしだした。

   京都議定書は1997年、地球温暖化防止のため世界各国の代表が京都に集まり、温暖化の原因とみた二酸化炭素(CO2)の排出量削減を決めた国際取り決めで、EUや日本が批准している。クラウス大統領は異議を唱える根拠として「地球温暖化議論は科学的言動を欠く」と指摘し、「理性に富む人は拒否すべき概念だ」と断じた。さて自国政府が署名し、EU議長国の元首となる大統領が明言した京都議定書批判発言。今後尾を引くのは間違いない。


【長谷川洋三プロフィール】
経済ジャーナリスト。
BSジャパン解説委員。
1943年東京生まれ。元日本経済新聞社編集委員、日本大学大学院客員教授、学習院大学非常勤講師。テレビ東京「ミームの冒険」、BSジャパンテレビ「直撃!トップの決断」、ラジオ日経「夢企業探訪」「ウォッチ・ザ・カンパニー」のメインキャスターを務める。企業経営者に多くの知己があり、企業分析と人物評には特に定評がある。著書に「ウェルチの哲学「日本復活」」、「カルロス・ゴーンが語る「5つの革命」」(いずれも講談社+α文庫)、「レクサス トヨタの挑戦」(日本経済新聞社)、「ゴーンさんの下で働きたいですか 」(日経ビジネス人文庫)など多数。


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