提携案に見当たらぬ「他に類をみない先進サービス」
もともと、26項目のなかには、TVコンテンツのネット配信など、既にネット業界で先行例があるものが多い。「他に類をみない」「先駆者利益を享受できる」先進サービスは見当たらない。これには、まとめられた項目のなかに、楽天の独自のネット技術を活用した提案が一つも含まれていないことも影響している。
楽天側には、楽天会員の拡大と囲い込みのためTBSのコンテンツを活用する意図がうかがえる。だが、技術的にも、利益を生み出すビジネスモデルとしても、「ネットと放送の融合」と誇れるレベルではない。かつてTBSに経営統合を提案した際に掲げた「世界に通用するメディア」の理念にいたっては、影も形も残っていない。
この「楽天・TBS」でも、その前の「ライブドア・フジテレビ」でもそうだが、新興ネット企業がテレビ局に経営統合や提携を迫った例では、いずれも成果が出ていない。
とはいえ、テレビ局などの既存メディアの側にネットへの関心がないというわけではない。
ネットの巨大掲示板「2ちゃんねる」のスレッドで生まれた「電車男」のコンテンツは、ネットで話題になった後、映画やテレビ番組に発展した。
また、著作権のあるテレビ番組の投稿を巡り、テレビ局側はネット上のビデオ共有サイト「YouTube」と厳しく対立していたが、今ではテレビ局の一部は、YouTubeと提携したうえで、コンテンツ配信に乗り出している。
楽天はTBS株主総会での大敗を機に、自身がネット企業としてどれだけ先進的なのか、既存メディアにどれだけ魅力的なのかを訴える必要があるといえそうだ。