2018年 7月 21日 (土)

長谷川洋三の産業ウォッチ
アピール:アルバニア首相のセールスマンぶり

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「彼の残したものはほとんどすべてが過去のものとなった(His legacy was almost behind)」

   アルバニア共和国のサリ・ベリシャ首相は2008年2月7日、東京・有楽町の日本外国特派員協会での昼食懇談会で、かつてのアルバニア指導者ホッジャ元労働党書記長についてコメントを求めた私にこう答えた。旧ソ連の影響が強かった東欧にあって毛沢東の中国と結び、旧ソ連共産党の平和共存路線を修正主義と批判し、旧ソ連崩壊まで徹底した鎖国主義を貫いたアルバニアだが、ベリシャ氏は15年前に初めて民主主義的手続きで大統領に選出され、開放戦略を展開してきた。今回は首相として来日し、天皇陛下との謁見や福田首相との会談を通じて日本企業の投資を呼びかけるなど、徹底したセールスマンぶりをアピールした。

   「中国から帰国したホッジャは、(ソ連に対抗して)長大な地下トンネルを建設するなど、パラノイア(妄想主義者)だった」――。現在の北朝鮮を引き合いに出しながら、ホッジャ批判を繰り返したベリシャ氏は、「今のアルバニアが目指すのはEUとNATOの加盟だ」と強調。「(旧ソ連の崩壊で)欧州にもはや脅威はなくなっているのになぜNATO加盟をめざすのか」という質問には、「欧州の小国にとってNATO加盟は最高の安全保障に通じる」と指摘、「先日チェコを訪問したが、チェコ首脳はNATOに加盟したとたん外国企業の投資が増えるようになったと話していた」とNATO加盟の経済的効果についても言及した。

   欧州最貧国の一つであるアルバニアは水力発電やボーキサイトなどの天然資源にも恵まれ、年率6%の経済成長を目指す急成長国。外国企業に対する法人利益課税を大幅削減するなど熱心な外資誘致活動を続けている。福田首相もアルバニア人が多数派を占めるコソボ自治国の独立承認を示唆するなど、親アルバニア政策の愁眉を送った。25年前にウィーン勤務をしたことのある筆者としてはかっての「赤い孤児」の変容振りに、「今昔」の思いを新たにした。


【長谷川洋三プロフィール】
経済ジャーナリスト。
BSジャパン解説委員。
1943年東京生まれ。元日本経済新聞社編集委員、帝京大学教授、学習院大学非常勤講師。テレビ東京「ミームの冒険」、BSジャパンテレビ「直撃!トップの決断」、ラジオ日経「夢企業探訪」「ウォッチ・ザ・カンパニー」のメインキャスターを務める。企業経営者に多くの知己があり、企業分析と人物評には特に定評がある。著書に「クリーンカー・ウォーズ」(中央公論新社)「ウェルチの哲学「日本復活」」、「カルロス・ゴーンが語る「5つの革命」」(いずれも講談社+α文庫)、「レクサス トヨタの挑戦」(日本経済新聞社)、「ゴーンさんの下で働きたいですか 」(日経ビジネス人文庫)など多数。


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