2019年 11月 12日 (火)

「ひぐらしのなく頃に」が殺人事件を引き起こしたのか?
――東京大学特任講師・吉田正高氏に聞く

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「ひぐらし」が事件の引き金になっているとは考えにくい

「ひぐらしのなく頃に」の原作ゲームのプレイ画面。「萌え系キャラ」のほのぼのとした会話も数多く登場する
「ひぐらしのなく頃に」の原作ゲームのプレイ画面。「萌え系キャラ」のほのぼのとした会話も数多く登場する

――たしかに作品の全体を通してみれば、そのようなテーマ性を感じとることができるのかもしれませんが、アニメの場合は、最初から最後まで見るとは限りませんよね?

吉田 そこがテレビアニメというコンテンツのむずかしいところですね。テレビアニメは、ゲームや漫画と違って「買う」という行為なしに受動的に見ることができてしまう。公共の電波を通じて、誰でも無料で視聴できるし、たとえば1話から3話までのうち、3話だけを見るということもありえます。すでにゲームで「ひぐらし」に馴染んでいる人達ならともかく、そういう耐性がないところでいきなり見た人は、やはり衝撃があったんじゃないかと思いますね。でも、だからといって、放送中止になるとか特に問題にされることはありませんでした、京都の事件が起こるまでは……

――2007年9月に京田辺市で、16歳の少女が父親を斧で殺害する事件が起きると、KBS京都を始めとするテレビ局は「ひぐらしのなく頃に」のアニメ番組の放送を休止しました。理由は「少女が凶器を持っている場面があり、不快に思われる視聴者がいる可能性を考慮した」というものでした。また、08年1月の八戸市の事件では、「ひぐらし」と思われる漫画本が押収され、事件と漫画の関係を指摘する声が出ました。

吉田 私が視聴していたテレビ埼玉なんて、13話で打ち切られて、いきなり「パタリロ西遊記!」になりましたからね……。でも、「ひぐらし」が事件の引き金になったかといえば、そんなことはないと思うんですよ。環境が犯罪を作り出すという「環境決定論」自体がそもそも間違っていると思いますし、人間の行動ってそんなに単純なものじゃないでしょ?

   鉈(なた)とか斧で人を殺す作品なんてほかにもたくさんあります。たとえばスティーブン・キングの「シャイニング」とかそうだし、ドストエフスキーの「罪と罰」だって斧で人殺しをする話ですよ。八戸の事件にしても、「ひぐらし」の漫画は累計で数百万部も売れているのだから、数ある本の中にあってもおかしくはない。一つの作品を見ただけで思い詰めて人を殺してしまうというのは、常識的には考えにくいでしょう。

――京田辺市の事件は08年1月の下旬に家庭裁判所の決定が出て、加害少女の処分が決まりました。そのときの家裁の認定によると、斧を凶器に選んだのは、「興味を持っていたギロチンから連想した」からだそうです。

吉田 「ひぐらし」とは全然違いますよね。結局、なんでもいいんですよ。マスコミからすれば、事件とアニメや漫画を結び付けたほうが話にオチを作りやすいので、そういうことをやるんでしょうね。特にテレビ局は、ワイドショーで扇情的な報道をしておきながら、関連しそうな作品は封印してしまうというのは矛盾があると思います。残念なのは、「ひぐらし」という作品の質とかテーマ性を見ないで、因果関係も分からないうちに、あいまいな基準でフタをしてしまっていることです。
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