2024年 4月 28日 (日)

QC活動に「残業手当支給」 そんな会社は半分以下?

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   生産現場の従業員が勤務時間外に小集団で行うQC(品質管理)サークル活動「カイゼン」をトヨタ自動車が業務として認定し、原則的に残業代を全額支払うことになった。QCサークル活動は生産効率を上げる取り組みとして製造業を中心に広く取り入れられ、日本のモノづくりの下支えとも言われている。しかし、残業手当を支給する企業は半分以下と見られ、サービス残業に当たるとの批判も最近になって強まってきた。

「正規の時間外手当を支給」企業は37%

   トヨタ自動車は2008年5月22日、「カイゼン」を業務扱いとし、残業代を全額支払うことを決めた。同社はJ-CASTニュースに対し、

「QCサークル活動については、従来より活動を奨励する目的でその一部を業務扱いとしている。08年6月より、QCサークル活動については、会社としての人材育成の重要な活動であるという趣旨に沿って活動内容を見直した結果、業務扱いとする部分を拡大する」

とコメントした。
   これまで月2時間までとしていた残業代支給の上限を撤廃する。「カイゼン」は自主的な活動とされながらも、生産現場の従業員の全員参加が原則となっており、活動での働きが人事評価の対象となっているという現状もあった。さらに07年11月には、名古屋地裁が愛知県豊田市堤工場の元従業員男性(当時30)の急死を過労死と認定する判決を下した中で、QC活動についても「使用者の支配下における業務」との判断を示していた。

   一方で、半世紀近く続いているQC活動は、品質管理を徹底することで日本のモノづくりの推進力になっているとの見方もある。しかし、「自主的な活動」か「業務」と捉えるかはあいまいなのが実情で、トヨタと同様にQC活動を重要視している同業の日産自動車の場合は「業務として捉え、残業代は支給している」(広報部)としている。

   QC活動を推進している日本科学技術連盟によれば、08年4月現在でサークル数は3万1564に上り、サークルメンバー数は29万2300人にも上る。このうち6割が製造業で、サービス業でもQCサークル活動を行っているところが多い。

   同連盟の04年の資料によると、QCサークル活動に残業手当を「支給している」とする企業は47%。「内容によっては支給している」が18%、「支給していない」が30%となっている。「支給している」という企業でも、「正規の時間外手当を支給している」とする企業は37%に過ぎない。

金融業界では「QCなんて死語」

   インターネット上のQ&Aサイトでは、

「これで効率があがるとは思えない」「仲良しクラブ的なニュアンスの『サークル活動』と捉えているのであれば、参加する必要もない」「断ると査定にひびくと脅される。サービス残業の指示は完全に労基法違反ではないか」

などと製造業やサービス業の従業員と思われる人から様々な意見が書き込まれていた。

   08年1月には東京地裁が、日本マクドナルドが「管理職」として扱っていた店長に対して残業代を払わないのは違法との判決を下すなど、企業にとっては残業代の支払いについて明確な基準が求められている。QC活動についても「業務」なのか「あくまで自主的な勉強会」なのか、切り分けが進む可能性が高そうだ。

   もっとも、QC活動が下火になっている業界もある。かつて盛んだった金融業界の関係者は「多くの銀行員は、土日に出勤して、事務や窓口業務、帳票類のまとめかたなどについてQC活動をやっていた」と話している。当然のことながら残業代は支給されなかったが、最近では事情は異なる。

「いまでは銀行を挙げてやることはなくなった。やるといってもちょっとした勉強会程度。残業代については最近うるさくなっているからこれについても注意してやっている。QCなんて死語でしょう」(ある大手銀行員)
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