ANAも在宅勤務導入目指す コミュニケーションとれるのか
「仕事と生活の切り分け難しい」「労働時間が増えた」
ただ、セキュリティ面が課題だ。
NECのようなシンクライアントシステムについては、「コストや手間がかかる」として利用しなかった。代わりに、個人認証情報を取り込んだUSBを利用し、それをカギのように自宅パソコンに差し込んで操作することで、会社の情報にアクセスできるようにしてある。これまでに情報流出などはないというが、「セキュリティはこれから改善を考えていく」としている。09年度に、シンクライアントシステムを導入するかは「分からない」という。
在宅勤務のデメリットは、こればかりではない。
NECが2006年7月から試行し、07年末にアンケートした結果、「仕事と生活の切り分けが難しかった」「労働時間が増えた」「成果へのプレッシャーが強い」「資料の置き場に困った」「コミュニケーションがとりにくくなった」といった順で指摘が多かった。
社内コミュニケーションの問題は、試行開始直後は指摘のトップだったが、同社がWeb会議・カメラのツールを導入したことと慣れたこともあって、かなり改善されたという。これも、IT企業だからこそ実現したと言えそうだ。
国交省が06年6月に発表したテレワーク実態調査でも、NECのアンケート調査と同様な結果が出ている。
NECによると、一般企業が在宅勤務を成功させるには、ITがうまく使いこなせるようになることや、顧客サービスの質を落とさない工夫が必要になってくるのではないかという。
テレワークに詳しい大分大経済学部の松岡輝美准教授は、「オフィスを廃止し、月に1回営業マンが集まるだけの製薬会社の話を聞いたことがあります。在宅勤務で重要なことは、進捗状況の報告方法を取り決め、連絡を密にすることです。また、レクチャーを充実させて、自己管理ができるようにしてもらうことも必要でしょう。コミュニケーションが大事なのは、アナログでもデジタルでも同じことです」と話している。