2024年 4月 28日 (日)

枝川二郎のマネーの虎
米国よりも深刻な欧州 金融危機が国家の財政危機に直結

通貨統合の拡大その先のロシアどうなる

   さらに通貨について考えると、統一通貨「ユーロ」を採用している国を除くと、金融危機が通貨の信頼に悪影響を与えるようになったところが多い。英国でさえも大手銀行RBSの問題が引き金となってポンド価格の暴落が起きたし、ましてハンガリーやアイスランドといった国々では自国通貨の信用力低下が国家の基盤を揺るがす事態となっている。それに比べて日本円は世界での評価も高く、このところほとんどの通貨に対して円高に推移している。

   では、欧州の今後は?

   欧州は経済、環境、エネルギーと、さまざまな観点から、さまざまな利害を共有する大きな地域だ。そのために欧州諸国が今以上に連帯して難局を乗り越える仕組みを構築することが必要だろう。ドイツやフランスのように経済状況が比較的よい大国がリーダーシップをとってまとめていくことが期待される。

   ECB(欧州中央銀行)の創設による金融政策の統合と通貨統合は成功裏に推移しており、地域の経済促進に大きな効果があったことは間違いない。しかし、このところの経済危機の下で国家間の格差は広がる傾向にあり、今後の展開は予断できない。

   また、統一通貨「ユーロ」を使用する国が増えるのは当然の流れながら、東欧各国さらに将来的にはトルコなどまで視野に入ると、当然ながらリスクも増える。そして、その先にはロシアがあるのだ・・・。

   政治・文化の多様性を認めながら経済面では協調する、という「いいとこ取り」は可能なのか。壮大な実験が進行している。


++ 枝川二郎プロフィール
枝川二郎(えだがわ じろう)国際金融アナリスト
大手外資系証券でアナリストとして勤務。米国ニューヨークで国際金融の最前線で活躍。金融・経済のみならず政治、外交、文化などにもアンテナを張り巡らせて、世界の動きをウォッチ。その鋭い分析力と情報収集力には定評がある。


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