2022年 5月 16日 (月)

解雇規制の緩和、撤廃 これで雇用が増える
経済学者・池田信夫さんに聞く

機能が進化した八角形ベゼル型"G-SHOCK"

「北欧モデル」、民主党も興味を示している

――-デンマークはなぜ可能だったのでしょう。

池田:    ひとつの見方としては、労働移動が自由だと言われていることです。労組の組織率が非常に高くて、仮に会社をクビになったとしても、組合の中に転職をしやすいようなインフラができている。人口が500万人に過ぎないからこそ出来ることかも知れません。日本では労組の組織率も低いですし、簡単にマネはできないと思います。
ただ、「高福祉高負担」でも米国よりGDPが高い理由を考えてみると、「労働生産性が高い」ことにつきます。企業は労働生産性が落ちると、労働者をクビにせざるを得ない。さらに、「同一労働=同一賃金」という原則があります。儲かっている会社もダメ会社も、同じ労働には同じ賃金を払わないといけない。そうすると、効率が悪い、採算の悪い会社は、人を雇えなくなってしまう。賃金が労働生産性を上回りますから、労働者をクビにして会社自体が撤退、クビになった労働者は他の会社に転職する。労働者にはやさしい、でも企業にとっては厳しい仕組みです。

――-解雇された労働者は、どうなるのでしょうか。

池田:    職業訓練設備も充実していますし、「職業訓練を受けないと、失業給付も受けられない」という仕組みもあるようです。(1)柔軟な労働市場(2)厚い失業給付(3)職業訓練、という「黄金の三角形」とも呼ばれています。この3つを組み合わせることによって、一見、労働者には不親切に見えるシステムでも、結果的にメリットが大きい、ということが分かってきたんです。
英国のように細分化された労働組合があると、労働移動が難しくなりますが、北欧は、「柔軟な労働移動で、グローバリゼーションに対応できている」というのが、ひとつの説明です。「グローバリゼーションに対応できる」というメリットが大きいのであれば、北欧の例は、日本も参考にする価値があると思います。

――-日本が参考にできるのは、どのような点でしょうか。

池田:    今日本経済が危機に瀕している理由を考えてみると、「中国などに、負けてしまっている」ということです。特に労働集約的な製造業では、これが顕著です。そういう産業は、日本では立ちゆかないはずなんです。ところが日本は終身雇用なので、「産業と労働者が一緒に沈没する」という現象が起きてしまっています。
日本経済にとって大事なのは、「競争できないところはあきらめる」ことで、福祉なり介護、サービス業などの需要がある分野に労働者を移転させる必要があります。その場合、北欧の例が参考になるかもしれません。セーフティーネットをしっかり整備して、労働者が「この会社、もうダメだ」と判断し、キャリアを途中でやめても大丈夫な仕組みが必要でしょう。
個別の企業にとってセーフティーネットはない方がいいんですが、社会全体にとっては、あった方がいいんです。もっとも、企業にとっても、要らない労働者を辞めさせやすくする意味で、長期的には(セーフティーネットは)あった方がいいんです。

――-日本の例に当てはめて考えると、いかがでしょうか。

池田:    かつての日本の大企業は、会社の中で雇用調整をしていた。「A部門で人がいらなくなったら、再トレーニングしてB部門に配属する」といったように。これが上手くいっていたのは、企業別組合が配置転換に協力したからですが、今や企業グループの中の配置転換では対応できなくなった。北欧のケースでは、産業別労組が企業を超えた労働移動を支援する役割を果たしているのです。実はこの「北欧モデル」、民主党も興味を示しているようなんです。「労組が転職を世話する」というスキームですから、(連合を支持母体に持つ)民主党としては政治的にも乗りやすいですよね。

池田信夫さん プロフィール
いけだ・のぶお 経済学者。1953年京都府生まれ。東京大学経済学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして報道番組の制作に携わる。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、上武大学大学院教授。近著に「ハイエク 知識社会の自由主義」、(PHP研究所)、「なぜ世界は不況に陥ったのか」(共著、日経BP社)など。

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