2024年 4月 24日 (水)

大キャリアと同じやり方では失敗する ジェットスター成功の秘密 
(連載「LCC革命の衝撃」第5回/ジェットスター航空日本支社長・片岡優さんに聞く)

片道300ドルにヴァージン・ブルーが99ドルで参入

片岡 ジェットスターが立ち上がったのは04年ですが、オーストラリアの航空業界では、01年にアンセット・オーストラリア航空が倒産しました。元々、オーストラリアではアンセットとカンタスとで50%ずつシェアを分け合っていました。日本で言うJAL-ANAのような感じです。当時は日本と同じで、競争があまりありませんでした。お互いに利益をあげていて、いわば「殿様商売」。01年にアンセットが倒産する前に、英国のヴァージン・アトランティック航空の子会社の「ヴァージン・ブルー」という会社がオーストラリアにできました。これがオーストラリアのLCCの発祥です。
   彼らが、今まで高かった航空運賃の価格破壊を始めたんですね。例えば、シドニー-メルボルン間。日本だと東京-大阪のような路線で、非常にビジネス客の利用が多くて利益を上げていたのですが、カンタス-アンセットの時代は片道300ドルだったものが、ヴァージン・ブルーは99ドルで参入してきました。衝撃的な料金で、顧客は一気にシフトしました。かつ、アンセットが倒産して、ヴァージンのシェアは広がっていきました。
   カンタスとしては、この状況に困惑しながらも、当時はプレミアム路線で生き残れるとみていました。でも、時代は変化するもので、カンタスのシェアはどんどん低下、「このままでは大変だ」ということで、ヴァージン・ブルーに対抗するために別の会社を作ったという訳です。ヴァージン・ブルーよりもコストを下げないと勝てないので、カンタスの運航コストよりも40%コストを下げた会社を作るという命題が下されました。
   カンタスのグループ内での競合が一番恐れられていたのですが、逆にグループ内で安い料金の会社をつくって、価格志向のお客様を取り込むことができましたし、逆にプレミアム志向のお客様を取り込むこともできました。この二つの流れがあって、グループ全体のシェアは急激に上がりました。現時点では、オーストラリア内のカンタスグループのシェアは約65%に達しています。

――子会社が伸びるのは分かるのですが、親会社の業績も伸びるというのは珍しいですね。

片岡 カンタスのプレミアム感が上がったということはありますね。例えば、カンタスだとラウンジが利用できたり、マイルがたまったりします。出張の際は、運賃は会社が負担しますし、頻繁に便が飛んでいる方が便利。航空券の変更がきくといった柔軟性も必要です。その部分はカンタス。ところが、土日になって、家族4~5人で旅行に行こうとなった時には、多少朝早かったり夜遅くても、安ければ選択していただけることが多い。そういう住み分けができています。
   さらに、路線が競合しないようにしています。例えば、今までカンタスが運航していたビジネス需要が少ない「レジャー路線」と呼ばれる路線や、カンタスで利益が上がらない路線をジェットスターに移管しています。当然コストが下がりますので、路線の収支が改善します。できるだけ2つの航空会社が重複しない工夫をしています。
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