2024年 5月 1日 (水)

徹底調査:モノが消えた(7) 納豆とヨーグルト今も品薄、意外な理由

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   震災の影響により首都圏の小売店で品薄になっていた商品も、徐々に数が戻ってきた。一方で、いまだに店頭でお目にかかれないものもある。代表格が納豆とヨーグルトだ。

   東日本の物流網は徐々に回復し、被災した生産工場も再開しつつあるが、資材不足や計画停電、さらには福島第1原子力発電所の事故による放射性物質の拡散が、生産の本格化にブレーキをかけている。

フィルムなしの生産はかえって効率落ちる

納豆は包装フィルム不足が品薄の原因
納豆は包装フィルム不足が品薄の原因

   東日本大震災からおよそ1か月。2011年4月7日の正午過ぎに、都内スーパーを訪ねてみた。震災直後は売り切れが続出したコメや牛乳、卵、カップめんといった品は豊富にそろっている。しかし当初から品薄だった納豆はひとつも見当たらず、ヨーグルトも数が少なかった。別のスーパーでは3パック入り納豆が2つだけ残っていた。

   東北自動車道をはじめ、地震発生当初から寸断されていた道路の開通が進んできた。東北新幹線など鉄道網も徐々に回復、被災した港も物資の取り扱いが可能となるところが増え、首都圏のモノ不足の元凶だった「流通ルートの断絶」は改善されてきた。それでも納豆とヨーグルトが品薄なのは事情がある。

   納豆の場合、原料となる大豆の確保は大きな問題ではない。だが出荷の際に欠かせない、納豆パックを包むフィルムや、納豆の上にかぶせる透明の薄いフィルムが不足しているのが増産の障害になっている。包装フィルムは石油製品だが、千葉県市原市や茨城県神栖市の石油化学コンビナートが火災や液状化で操業停止に追い込まれたのが響いている。納豆メーカー大手のタカノフーズ広報に聞くと、震災直後からストップしていた茨城県や宮城県の生産工場が稼働率50%にまで戻している一方、包装フィルムの不足で「一気にフル生産に持っていけない状態」だという。

   納豆の上にかける薄いフィルムは、「取り除いて出荷すると納豆がカラカラに乾いてしまう」ため、どうしても必要だ。別の素材を使おうにも、なかなか適したものが見つからないと説明する。包装フィルムも代替え素材を検討、また包装フィルムを使わずに、原材料表示や大豆の産地をパックに直接印字して出荷してはとの提案が出たが、いずれの場合も生産ラインの機械の調整が必要になり、手間がかかるうえ生産効率も落ちる。費用面も無視できない。当面は、フィルムの入手状況をにらみながら生産、出荷を調節することになりそうだ。

原乳の出荷制限「影響小さくない」

   ヨーグルトの場合は、計画停電が妨げとなっている。乳製品メーカー大手、明治の広報によると、製造過程で重要となる発酵や冷蔵の際、途中で停電が起きると温度調節ができなくなり、品質にかかわる。機器の洗浄などを含めると、これらの工程にはおよそ半日を要するため、計画停電が数時間でも実施されればその日の生産は中止せざるをえない。停電の有無が前日に分かったとしても「従業員の勤務割をすぐに組めるわけではなく、生産計画を立てるのも難しい」というのが実情だ。

   東京電力は、4月10日までの計画停電実施見送りを明らかにしている。気温の上昇で暖房需要が減り、火力発電所の復旧で電力供給量も若干回復したため、4月末で計画停電をいったん打ち切るとも報じられている。だがヨーグルトの生産は「計画停電がなくなったとしても、見通しを立てづらい」(明治広報)ようだ。納豆同様、容器をはじめ出荷に欠かせない資材も入手が困難になっていることや、原乳の供給も正常化していないのが大きい。特に原乳は、福島県や茨城県産から食品衛生法上の暫定規制値を超える放射性物質が検出され、出荷制限の対象になっていることも、「影響は小さくありません」と話す。

   メーカー側の生産態勢は改善しており、出荷量も徐々に増えていくと見られるが、すぐに震災前の状態に戻るわけではなさそうだ。

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