2024年 4月 29日 (月)

高橋洋一の民主党ウォッチ
TPP参加問題で問われているのは 規制緩和や民営化へのスタンスなのだ

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   TPPで議論百出だ。私はTPP交渉参加に賛成だが、その第一の理由は自由貿易のメリットだ。もちろん自由貿易にはデメリットもあるが、メリットがそれを上回る。これは理論的にも歴史的にも示されている。もしこれが否定されるならノーベル賞ものだ。

   TPPによるいろいろな影響を包括的かつ計量的に網羅した応用一般均衡モデルもいろいろあるが、国際機関でも使われているGTAP(Global Trade Analysis Project)により構築されたものでも、メリットのほうが大きい。これはデメリットにもなんらかの対応策があることを意味している。

混合診療との関係は?

   第二の理由は国際交渉上のものだ。TPPには今のところ中国が参加していない。中国は今のところ自由貿易協定への参加は消極的だ。いまのうちに日本が参加しておけば、将来中国が自由貿易協定へ参加したり、あらたな枠組みを提示したりした場合、早めにTPPに参加した日本はルール作りに加わっているので対中国との関係で有利になる。

   いずれにしても、今の国内議論をみていると、TPP慎重派(なぜか反対派とはあまりいわない。タイミングを見ての参加ということか)は、規制緩和反対派や民営化反対派とかなりダブって見えてしまう。

   TPPについて議論していくと、医療の混合診療がどうなるか、郵政民営化がどうなるか、などという個別問題の是非にいきあたる。

   政府が、TPPで混合診療も議論の対象になるといったら、TPP慎重派から猛烈な反発を食らっている。要するに、現在の日本で原則禁止になっている混合診療について、TPPがきっかけになって解禁されていることをTPP慎重派はおそれているのだ。歯科や産科では事実上混合診療になっているのをTPP慎重派はどうみているのか。

   ならば、今の政府は混合診療について禁止か解禁なのか。このところがはっきりしていない。解禁というスタンスなら、早速法改正への準備が必要だ(今のままでは先の最高裁判決をみれば分かるように、解禁できない)。混合診療については小泉政権時代にも検討していたが、今の政権は議論すら避けている。それがTPP問題の混乱に拍車をかけている。

郵政民営化問題へも波及

   郵政民営化ではどうか。これへの政府のスタンスははっきりしている。今国会へも郵政改革法案を出している。小泉政権時代に郵政民営化を担当してきた私から見れば、民営化せずに国が関与している代物だ。

   ならば、郵政民営化もTPPで議論になる可能性があるのかを、政府に問わなければいけない。混合診療が議論対象なら郵政民営化もそうなるはずだ。となると、今の政府のスタンスは交渉上苦しくなる。また、郵政民営化反対論者は、TPPで再び郵政民営化になることをおそれているので、TPP慎重派になる。

   要するに、TPPを通じて、問われているのは規制緩和や民営化などへの国のスタンスである。それを曖昧なままにすると、TPPどころか国内問題もうまく対応できなくなる。

   例えば、食の安全を理由にするTPP慎重派もかなりピントがずれている。食の安全が必要なのにそのための規制を規制緩和としてなくすのは馬鹿げた議論であるのと同じで、TPPで食の安全は犠牲にならない。これは国民皆保険でもいえることだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。


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