2024年 4月 26日 (金)

高橋洋一の民主党ウォッチ 
東電のリストラ「世間の目では不十分」 法的整理なぜできないのか

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   少し前までは、経産省の意向を受けた東電の国有化の報道が多かった。それが国有化に反対する東電や財務省の盛り返しにより国が過半数の株を持てるかどうかわからなくなった。新聞は、この滑った転んだという攻防を報じているが、なぜ法的整理できないのかを議論しなければいけない。

   法的整理をした上での一時国有化であればともかく、法的整理させないために国有化を行うことはおかしい。枝野幸男経産相は、東電の国有化をりそな型処理と言うが、破綻をさせないための措置であった、りそな型の処理とは違う。

債務超過と資金支援の関係

   そもそも東電に対する現状認識として、債務超過ではないと枝野経産相はいう。たしかに直近の決算では形式的には債務超過ではないが、賠償その他で東電が立ちいかなくなっている。これは東電幹部がすでに言明しており、誰の目にも明らかだ。つまり、公的な財政支援を前提にしないとすでに数兆円程度の債務超過になっている。

   ちなみに、2月13日に東電救済機構から賠償資金として6894億円の追加支援を受けた。この資金が入らなければ、実質的に債務超過になるところだ。その点、不良債権を抱えていたとしても、財政支援なしで債務超過になっていなかった、りそな銀行とは財政状態で決定的な差がある。

   債務超過であれば、法的整理をして株主や債権者が責任をとるのが資本市場のルールだ。ところが、民主党政権は法的整理ではなく「東電救済法」(原子力損害賠償支援機構法)で東電を温存させた経緯がある。

株主や債権者の救済「隠す」?

   昨2011年の夏、民主党と自民党の「過去官僚」が密室で談合し、実質的な国会審議なしで「東電救済法」が成立した。この法律は、損害賠償という名目で、東電の法的整理を行わないで東電を救済するものだ。東電を法的整理しても、電力供給は問題なく行えるし、損害賠償もその任務だけの別の組織を作ればできる。

   東電が2012年4月から企業などの大口向け電気料金を17%、秋から家庭など小口向け料金を10%値上げするとの方針を、なかば通告のように示した。西沢社長から、値上げは権利という趣旨の言葉もあったという。燃料の輸入コストが上昇したとの理由であるが、国際的にもそれほど高くないLNG価格なのに日本では高値で購入している。法的整理していないので、資産売却などのリストラは世間の目から見れば不十分で、そのしわ寄せは電力料金値上げで国民にきている。

   なぜ枝野経産相は、りそな型を強調しているのかといえば、資本注入すれば株価も上昇するという「りそな銀行効果」を狙っているのだろう。同時に、それは株主や債権者の救済を隠すこととなって「東電救済法」の失態から世間の目を遠ざけ、法的整理をしないために国民負担が数兆円過大になっていることをどさくさで葬りたいからだろう。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。


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