2024年 4月 29日 (月)

稲盛名誉会長が「JAL批判」に猛反発 ANA増資、野村証券、未公開株報道に怒る

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   2012年9月にも再上場を控えている日本航空(JAL)が12年8月2日に開いた定例会見で、「公的資金の支援で業績が回復するのは競争環境をゆがめている」といった数々の批判に反論した。さらに、稲盛和夫名誉会長は、全日空(ANA)が発表した2000億円規模の大型公募増資について「びっくりし、戸惑っている」と強い不快感を示した。

「財産評定効果だけが、好業績の要因ではない」

記者会見に臨むJALの稲盛和夫名誉会長
記者会見に臨むJALの稲盛和夫名誉会長

   JALの再上場は、7000億円規模の大型上場になる可能性も指摘されている。企業再生支援機構はJALに3500億円を出資していることから、上場で出資分を回収できるのに加えて、政府はさらに3500億円規模の歳入を得られる可能性がある。

   その一方、JALが法人税減免などを受けながら、最新鋭中型旅客機ボーイング787型機の導入など大型投資を進めていることについて「競争環境をゆがめている」などとしてANAが批判を強めているほか、自民党のプロジェクトチーム(PT)も7月13日に再上場反対を決議したばかりだ。

   これらの批判を受けて、植木義晴社長は、

「3500億円にプラスアルファをつけて早期に国庫にお返しできるようにしたい」

と述べる一方、

「財産評定効果だけが、好業績の要因ではない」

と主張。その根拠のひとつとして、12年3月期の連結営業利益の内訳を挙げた。更生計画で「必達目標」として掲げた数字は757億円で、そのうち財産評定効果によるものが460億円だ。だが、実際の業績では2049億円を記録し、過去最高を更新した。JALでは、その大半を占める1366億円が、人件費や各部門での費用削減によってもたらされたものだと説明している。

法人税減免がおかしいなら「日本の税法を変えなきゃいけない問題」

   また、今後も法人税が減免されることに対する批判についても、稲盛名誉会長は

「なぜそうおっしゃるのか、私はまったく理解ができない。もしそれがおかしいというのであれば、日本の税法を変えなきゃいけない問題だと思う」

と突き放した。さらに、メガバンクなどが過去に減免を受けてきたことを念頭に、

「急に変えたのでは、経済の関係が非常にいびつなことになってしまう」

とも述べた。

「儲かると思って出資した会社はない」

「公的資金で新型機材に投資している」との批判もある(写真はJALのボーイング787型機)
「公的資金で新型機材に投資している」との批判もある(写真はJALのボーイング787型機)

   また、11年3月15日にJALが行った127億円の第三者割当増資のうち、稲盛氏が創業した京セラが50億円を引き受けたことについて

「濡れ手に粟で未公開株50億円ゲット!JALを私物化する稲盛和夫会長の『強欲』 」(週刊文春、12年8月9日号)

などと批判されていることについても、稲盛氏は

「京セラと言えば私というようになっているが、実際は今は給料も何ももらっていない、名前だけの名誉会長。京セラが50億の増資に応じたというのは、現在の経営陣が決断したこと」

と反論。さらに、この増資をめぐっては、500億円を目標に数十社に対して打診したにもかかわらず8社しか応じなかったという経緯がある。このことから、稲盛氏は

「京セラだけでなく、(出資した)8社は大同小異不安をいただきながら、『(震災前に)約束をしたんだからしょうがない』と出資をしていただいたものだと思っている。決して『儲かるからなんとか』ということでもって出資した会社は、おそらく1社もない」

とも述べた。

ANAとの「主幹事掛け持ち」に不快感

   稲盛氏が一番語気を強めたのが、ANAが7月3日の発表した最大2110億円の公募増資だ。記者から、

「IPOを目前に控えた航空会社としては、資金を先取りされた格好だが」

と水を向けられると、

「(再上場に向けた)主幹事証券として野村(証券)さんと大和さんを(JALに3500億円を出資している企業再生支援)機構の方でお決めになって、しょっちゅう機構とJALの経営陣とで打ち合わせをしていた。そこには、野村のトップの方もナンバー2の方もしょちゅう、いつも見えて(来て)いたので、我々も主幹事としてやっていただけると思っていましたので、まさか全日空さんが、突然、ああいう大型の増資をするとは思っておらず、びっくりした」

と述べた。実は野村証券はANAの増資の主幹事証券でもある。競合他社と主幹事証券を「掛け持ち」されたことに不快感を示した形だ。

   さらに、

「3500億円を(機構が)回収するための上場というのは、やはり、国から出していただいたお金を、瑕疵(かし)のないような状態でお返しするということが一番の命題だったので、もしそういうこと(再上場)を妨害するためにされたという風に(理解)するならば、大変問題だと思うが、まさか、そういう意図ではなかったと思う。資金の需要の見通しがあって、ああいうことを突然されたのだと思うが、大変私たちは、びっくりし、戸惑っている」

と、ANAに対する怒りは収まらない様子だ。

   この日の会見では、13年3月期第一四半期(12年4月1日~6月30日)の連結業績も発表された。売上高は前年同期比12.5%増の2867億円、営業利益は同83.1%増の314億円、最終利益は同111.2%増の269億円だった。旅客需要が堅調で、営業利益は四半期ベースとしては過去最高水準を記録した。12年5月に発表した「売上高1兆2200億円、営業利益1500億円、最終利益1300億円と減益予想」との13年3月期の業績予想は、そのまま据え置いた。

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