2024年 4月 29日 (月)

文科省がまた「もんじゅ改革案」 原子力規制委が早くも批判、すんなり行かない

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   高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を運営する日本原子力研究開発機構について2013年8月8日、文部科学省が改革案をまとめた。今の組織を分割し、新組織の業務を「もんじゅ」の運転や福島第1原発事故の対応などに絞り、その他の研究部門は切り離し、職員400~500人削減などの内容だが、原子力規制委員会の田中俊一委員長が早速、異議を唱えるなど生煮えの感は否めない。

トラブル隠蔽の黒歴史

   改革論議のきっかけは12年11月、「もんじゅ」で1万点を超す機器の点検漏れが発覚したこと。だが、振り返れば、1995年のナトリウム漏れによる火災事故以来、何度もトラブルを繰り返し、そのたびに組織の大規模な改編を重ねてきた歴史がある。

   火災事故では虚偽報告で国民を欺き、2年後にも別の火災爆発事故で虚偽報告を重ね、1998年に運営母体の動力炉・核燃料開発事業団は核燃料サイクル開発機構に改組、2005年には日本原子力研究所と統合して原子力機構になり、2010年に運転を一度は再開したが、原子炉容器に部品が落下、運転を停止して現在に至る。

   今回の点検漏れでは5月、原子力規制委から「もんじゅ」の運転再開準備の禁止を命令され、鈴木篤之理事長(当時)が引責辞任に追い込まれたが、さらに同月、茨城県東海村の加速器実験施設で放射性物質が漏れる事故も起こした。

   こうした事態を受け、6月に発足した文部科学省の機構改革本部(本部長・下村博文文科相)がまとめたのが、今回の改革案だ。

   改革案は、これまで、原子力の総合研究開発機関として幅広い業務を担ってきた原子力機構の業務を重点化し、経営陣が統治可能な組織にしようというもの。具体的に、核融合研究部門などは機構から切り離し、(1)「もんじゅ」を中心とした核燃料サイクルの研究開発、(2)原子力の安全性向上研究、(3)原子力の基礎基盤研究、(4)福島第1原発事故の対応業務――の4分野に業務を重点化し、同機構の常勤職員約3900人のうち400~500人減らす。

   「もんじゅ」は理事長直轄の「もんじゅ発電所(仮称)」という運転管理に専念する組織にし、人員は330人から280人に削減、電力会社の発電所長経験者らを現地駐在の安全担当役員として招くほか、もんじゅ発電所所長代理や課長、チームリーダーにも電力会社からの出向者を配置するといったことも盛り込んだ。ただし、別に100人規模の「もんじゅ発電所支援室」(仮称)も新設し、契約業務や新規制基準を支援するので、「もんじゅ」関連スタッフはむしろ増える。

読売もクギを刺す

   文科省案に対し、規制委の田中委員長は、原子力機構がもんじゅの開発と運転管理を続けることを問題視し、「原発の安全技術を支える機関が発電まで手を広げるのはどうか」などと批判、機構の業務を「もんじゅ」などに絞ることで安全研究がおろそかになりかねないとの懸念を示している。

   今回の改革案を踏まえ、原子力機構は秋をめどに具体的な改革計画を策定するが、規制委は今後、文科省や機構に対し意見の反映を求める考え。規制委が認めない限り、原子力機構は「もんじゅ」の運転再開に向けた作業ができないだけに、文科省には大きな壁になる可能性がある。

   そもそも、国のエネルギー政策の見通しが不透明な中で、もんじゅの改革などできるのか、という根本的な疑問も残る。大手紙でも、「もんじゅ」継続に否定的な「朝日」「毎日」が「もんじゅの存続にこだわるより、事故への対応や廃炉、安全研究に機構の業務を集約する方が、よほど日本の将来のためになる」(「毎日」8月14日社説)などとするのは当然としても、今回の重点業務への集約という方向を支持する「読売」でも、「政府の原子力政策や核燃料サイクル政策の混迷が続く中で、もんじゅの位置付け自体が不明確だ。これでは、機構の速やかな改革にも障害となろう」と釘をさしている。

   文科省案がスンナリ通る状況ではないようだ。

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