2024年 5月 1日 (水)

中国で外国人記者に警察官が「暴力」 当局「黙認」、取材現場でのルール違反主張

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   中国・北京で、取材中の外国人記者が警察官から暴行を受けたと報じられた。中国人の人権活動家の裁判取材を巡って、記者が殴られたうえカメラを壊されたのだという。

   2012年には朝日新聞の記者が暴行されたとして、中国側に抗議する事態となった。ルール違反の疑いがある記者は当局が容赦なく暴力で抑え込む、ということなのか。

「もみ合い」は珍しくないが度を超えた暴力は振るわない

外国人記者に対する暴行は北京で起きたと報じられた
外国人記者に対する暴行は北京で起きたと報じられた

   市民の権利と社会の改革を訴える「新公民運動」を掲げる許志永氏が公共の秩序を乱したとして逮捕され、2014年1月26日に北京の裁判所で懲役4年の判決を受けた。当日、海外メディアはこの様子を取材するため裁判所付近に来たが、警察側による妨害を受けたようだ。この日のNHKのニュースを見ると、記者が路上でリポートしている最中に複数の警官がやって来てカメラの撮影を邪魔し、うちひとりが「身分証を見せて。業務に協力しろ」と怒声を浴びせていた。

   1月27日付のTBSニュース電子版によると、裁判が始まった22日、外国人記者が取材中に警官に暴行を受けたそうだ。これについて中国外務省の秦剛報道局長は定例会見で、「取材現場で中国の規定を守り、現場関係者の管理にきちんと従えば、そうしたことは発生しない」「外国人記者は中国の法律や規定を守るべきだ」と強調したという。記事は、「当局による暴力行為を暗に容認する考えを示しました」と結論づけている。

   記事からは暴力の度合いや、どの程度のけがを負ったのかは分からない。ただ、「取材させろ」「だめだ」と記者と警官がもみ合いになり、その拍子に小突かれたといった程度は珍しくないと、ジャーナリストの福島香織氏は話す。警察側が取材を制限している場所でも、記者やカメラマンは少しでもよいポジションを確保しようとする。そこで小競り合いが起きるというわけだ。「北京は外国人が多いので、警官は相手が記者証を持っていると知れば度を超えた暴力をふるったりはしません。トラブルになれば後々面倒になるとわかっているのです」。福島氏自身、もみ合いには巻き込まれても暴行された経験はないと話す。

   中国には「中華人民共和国常駐外国報道機関及び外国人記者取材条例」がある。中国側は、在中外国メディアと記者に「合法的権利・利益を保障するとともに、それらが法に基づいてニュース取材・報道業務に従事するための便宜を図る」とする。一方で「中国の法律、放棄と規則を順守し、報道の職業道徳を順守し、客観的、公正に取材・報道を行わなければならず、その機関の性格又は記者の身分にふさわしくない活動をしてはならない」と求めている。

日本人記者は語学堪能、見た目が似ていて「誤解」されることも

   過去には、中国の警察とのもみ合いにとどまらず、明らかに暴行を受けたとの報告がある。朝日新聞の奥寺淳・上海支局長が2012年、江蘇省南通市啓東でデモを取材中、警官に突然カメラを奪われたうえ殴られたという。2012年8月3日付の同紙記事によると、奥寺氏は後頭部に4か所の腫れ、背中と腕に打撲傷のあざが多数でき、病院で全治2週間と診断されたと証言した。朝日新聞は市当局に抗議、だがその後公安当局が「証拠なし」として捜査を打ち切ったと報じられた。

   国際人権組織「ヒューマンライツウォッチ」も2011年3月3日、北京で同年2月に外国人記者が警官に「繰り返し顔面を殴られ蹴られるという暴行」を受けた揚げ句カメラを没収されたと発表した。その記者は打撲と内臓損傷の疑いで治療を余儀なくされたという。ほかにも米ブルームバーグやCNN、英BBC、独ARDテレビのジャーナリストが、制服警官らに暴行されたとした。これに対して中国外務省は、一連の暴行に対する抗議を認めず「適切に対応した」と主張。記者たちが「公共の場所に集まりうろついていた」のが原因とみなした。

   外国人記者よりも中国人記者はさらに扱いがひどく、警察側が手加減なく殴りつけたりするのだという。福島氏によると、欧米の記者の場合は中国人を助手を雇って通訳などに当たらせることが多いが、警察とトラブルになった場合「中国人助手に『外国人の味方をしやがって』と厳しく接することがあります」。一方日本人記者は、見た目が中国人と似ているうえに中国語が堪能な人も多く、通訳をつけないでいるとしばしば「誤解」されることもあるそうだ。

   今回の中国外務省による「規定を守れば暴力行為は発生しない」という声明は、特に新しい話ではないと福島氏は指摘する。規則を破ったからといって暴力に訴えるという方法は、決して好ましいわけではない。ただ在中ジャーナリストにとってはある程度「想定の範囲内」で、「だからと言ってすごすごと引き下がるほど、記者たちも『やわ』ではないでしょう」。

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