2024年 3月 29日 (金)

「日中偶発軍事衝突」は起こるのか(5)
中国空軍はなぜ危険行為を仕掛けるのか 自衛隊機に異常接近繰り返す背景
元駐中国防衛駐在官・小原凡司氏に聞く

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   中国空軍が自衛隊機に異常接近を繰り返している。偶発的な軍事的衝突につながりかねない危険な行為だが、その狙いはどこにあるのか。中国の国家としての意志なのか、それとも現場のパイロットの独断なのか。海自出身で駐中国防衛駐在官を務めた東京財団研究員の小原凡司さんに聞いた。

30メートルまで接近するのは非常に危険

東京財団研究員の小原凡司さん。「異常接近事案の再発防止には交流を深める必要がある」と話す。
東京財団研究員の小原凡司さん。「異常接近事案の再発防止には交流を深める必要がある」と話す。

――相次いだ異常接近事案は、日本側は「危険きわまりない」として強く非難しています。「30メートル」という距離は、どのくらい、どのように危ないのでしょうか。

小原 複数の軍用機が一度に飛ぶ際はフォーメーションを組みますが、30メートルというのは一番きちんと組む「タイト・フォーメーション」と大差ない距離です。私が乗っていたヘリの場合でも、ヘリ同士はローター一つ分の距離を開ける。ローターは18~19メートルなので、そうなると40メートル近く開きますが、それでも経験の浅いパイロットは怖がってポジションを維持できないこともあります。そのくらい30メートルというのは怖い。まさに「目の前に機体がある」という感じです。

――仲間同士であっても、30メートルという距離は相当な緊張感があるわけですね。

小原 フォーメーションを組むときは同じ機種どうしで組みますし、お互いに意図があって、リーダー機は、そのフォーメーションが事故に陥らないよう常に気を配って飛びます。技量のある人間同士がフォーメーションを組んでおり、信頼感もある。それでも接触の危険があるので、高度差をとります。しかし、そういう取り決めも信頼も何も無い状態で30メートルまで接近するのは非常に危険です。
   相手の技量は見ればだいたい分かりますが、中国が公表した航空自衛隊機の写真は非常に離れており、中国が言うように数十メートルといった距離ではありません。200~300メートルといったところでしょう。
   戦闘機は元々高速で飛ぶように設計されているので、低速になると、だんだんコントロールの効きが悪くなり、最終的には翼が揚力を発生できなくなる。そうなると失速して、「きりもみ」状態になってしまいます。2001年には米海軍EP-3と中国軍機が衝突していますが、当時の中国軍機は非常に不安定な運動をして、おそらくコントロールを失って接触したのでしょう。01年の事故で接触した中国側のパイロットは、事故が起こる前から危険行為を繰り返す人物だとして米海軍の中でも有名だったそうです。
   日本側のP3Cの場合、哨戒飛行をしているときはさほど高速ではありません。中国機は、その横に無理矢理並んで飛ぼうとしたわけです。自分の飛行機の特性を理解しておらず、まったく技量が低いと言わざるを得ません。そういう状況では、接近される側の自衛隊機は大変な緊張を強いられたことになります。中国側の飛び方は、安全のことを配慮したとは思えない危険な飛び方です。日本や米軍から「技量が低い」と言われても仕方ありません。
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