2024年 5月 2日 (木)

安倍首相は朝日の「社是」「意思」を事前に確認したのか 辻元議員、「撃ち方やめ」報道蒸し返す

   与野党の「政治とカネ」をめぐる応酬について安倍晋三首相が自民党内の会合で「『撃ち方やめ』になればいい」と述べたと報じられ、安倍首相が国会答弁で朝日新聞を名指しして「捏造」と事実関係を否定した一連のやり取りが、野党議員の質問主意書で蒸し返されることになった。この問題では、首相発言の情報源だとされた人物が後に発言を覆したため、結果的には朝日新聞以外にも同じ内容を伝えた複数のメディアが誤報を出している。にもかかわらず安倍首相が朝日新聞のみを批判した理由などを問う内容だ。

   安倍首相は、自らの発言内容について確認取材がないまま記事になったことを憤っているが、安倍首相自身、国会答弁では朝日新聞について「(安倍首相を)攻撃しようという意思があって記事を書く」と断定的に批判している。安倍首相がこの点を事前に朝日新聞に確認したとは考えにくく、発言の整合性を問われることになりそうだ。

朝日以外にも5社が発言を報じていた

安倍首相の発言の整合性が問われることになりそうだ
安倍首相の発言の整合性が問われることになりそうだ

   主意書は2014年11月10日に民主党の辻元清美衆院議員が「『撃ち方やめ』報道に関する質問主意書」と題して提出。主意書では、10月29日から30日にかけて、朝日新聞以外にも共同通信、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞、産経新聞の5社が「撃ち方やめ」発言を伝えたことを指摘している。だが、安倍首相は10月30日に衆院予算ン委員会で朝日新聞だけを名指しして「捏造」と批判している。

   このことを前提に、主意書では(1)安倍首相は朝日記事を「捏造」と批判する前に朝日以外の5社の記事は読んでいなかったのか。事務方は日ごろから安倍首相に朝日とそれ以外の記事を分けて伝えているのか(2)朝日以外の5社も「捏造」という認識なのか。そうでないとすれば、朝日記事との違いは何か(3)朝日以外に5社も報じたにもかかわらず、国会答弁で朝日だけに言及したのはなぜか、といった点を質している。

   また、安倍首相は10月30日の「捏造」発言の際に、こうも述べている。

「朝日新聞は安倍政権を倒すことを社是としているとかつて主筆がしゃべったということでだが、これはブリーフをした萩生田光一議員(自民党総裁特別補佐)に聞いていただければ明らかで、私に確認すればすぐわかること」

   安倍首相としては、朝日新聞をはじめとする各社が、萩生田氏か安倍首相に確認取材をすれば「撃ち方やめ」の誤報は防げたと考えているようだ。主意書ではこの答弁をもとに、「『朝日新聞が取材した出席者』は、萩生田光一総裁特別補佐で間違いないか」とも質問している。匿名で取材に応じた情報源を安倍首相が暴露してしまったのではないかとの指摘も出そうだ。

安倍首相は確認取材なく記事が出たことを憤っていたが...

   一連の答弁のこの発言について、朝日新聞は10月31日の紙面で、「撃ち方やめ」発言の情報源の人物が、発言は「自分のものだった」と説明を翻したことを報じた上で、

「朝日新聞社に『安倍政権を倒す』という社是はなく、主筆が話したこともありません」

と反論した。朝日新聞の反論に、安倍首相も10月31日の衆院地方創生特別委員会で再反論を試みている。

「こういう捏造というのはなぜ起こったかということが問題であって、それはまさに、安倍晋三を攻撃しようという意思があって記事を書くからこういうことになるわけでありまして、そこの中においてやるべき取材を全くやっていないというのは、これは大変な問題」

   主意書の中では引用されていないが、安倍首相はこの答弁の中で

「私は言ってないんですから。言っているか言ってないかは本人に確かめるのが当たり前じゃないですか!伝聞で、じゃあ、それをいちいち記事にするんですか?なおかつですね、あの朝日の記事は、『これは問題化する』、そういう趣旨のことが書いてありましたね。『問題にせよ』と言わんばかりの記事じゃありませんか」

と感情をあらわにしてもいる。

長妻昭衆院議員も同様の主意書を提出

   安倍首相は自らの発言について確認取材がなかったことを憤る一方で、自らの答弁では明確な根拠を示さないまま、「撃ち方やめ」発言を伝えた各メディアの中で朝日だけを取り上げ、朝日新聞が安倍首相を攻撃しようとする「社是」や「意思」を持っていることから「捏造」につながったと主張しを前提においていることがわかる。主意書では、これを逆手に安倍首相の発言の不整合を指摘した。

「(「社是」や「意思」が)朝日新聞社にあるかどうかは、同社に確認すればすぐわかることであるが、安倍首相は、この点について事前に確認したか。していないのであれば、事前確認を怠ったまま答弁した理由はなぜか」

   主意書に対する答弁書は11月18日に閣議決定される。この問題をめぐっては、辻元氏以外にも、民主党の長妻昭衆院議員が10月31日に

「安倍晋三内閣総理大臣の『捏造』等発言に関する質問主意書」

と題する質問主意書を提出している。

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