2024年 5月 8日 (水)

連載・世襲政治に未来はあるのか(4)
日本人は世襲が好き リーダーに能力求めない文化がある 作家・評論家の八幡和郎さんに聞く

自民党には地盤を継ぐ人を競争して決める仕組みがない

―― 親族を擁立しなくても、公募や予備選挙といった方法もあるように思います。

八幡:自民党については、それは難しいのではないでしょうか。予備選挙と言っても、米国では半年~1年かけて行われるので、「元々無名だった人が知名度を得ていく」といったことも可能ですが、日本では「立ち会い演説会を1回やってすぐ投票」というのが関の山です。そうなると、新人候補は知名度を上げる機会がなく世襲後継者に勝てるわけがありません。地盤を継ぐ人を競争して決める仕組みがないわけです。

―― 他党についてはいかがですか。

八幡:民主党について言えば、党本部で一度に公募して、合格者を全国の選挙区に割り振る仕組みになっています。比較的よく機能していると言えます。ただ、民主党が全体として自分で適切に候補者を選考できているかというと、そうではありません。支援団体の日本労働組合総連合会(連合)が組織内で候補者を選んで、民主党はそれを受け入れるだけのことも多い。
   公明党の場合は、創価学会がその役割を担っている。「適切な候補者を選び出す」という点ではきちんと機能していると言えますが、組合員や学会員以外が候補者になりようがないという点は問題です。政党として候補者選びの機能があるのは共産党ぐらいでしょう。
   4つ目は、当選してからも世襲の方が出世が早いという点です。選挙区の有権者からすれば、たたき上げの人を送り込んでもなかなか偉くならないのに対して、「安倍さんの息子や小渕さんの娘であればすぐ大臣になれる」となる。これが世襲を助長している面があります。
   佐藤栄作内閣(1964~72)の前までは、当選回数が比較的少ない官僚やジャーナリスト、財界人出身の議員が閣僚に抜擢されることもありました。佐藤内閣以降、入閣には当選回数が重視されるようになったのですが、そのためには地元からすれば「若い人を押し込んで当選回数を稼がないと偉くならない」。その結果、首相に最もなりやすい人の条件は「父親が衆院議員で、早死にすること」となる。
安倍首相や、橋本龍太郎元首相、小沢一郎氏らが当てはまります。赤城徳彦元農相のように、1代飛ばして祖父の地盤を受け継いで若くして当選し、入閣するケースもありました。小泉内閣以降は一転、当選回数が無視されることも多くなったのですが、それはそれで、閣僚を抜擢する客観的な基準がないので、本人の能力ではなく、「誰々の子どもだから」という周囲が納得しそうな理由でしか抜擢ができないようになっています。

―― こういった状況は、日本に特有のものなのでしょうか。

八幡:イギリスは、党の中で評判のいい人が閣僚に登用されるため、世襲は多くありません。フランスは官僚や学校の先生といった公務員出身者が多い。本人の能力が重視されるので世襲は困難です。米国では個人の後援会があるため世襲は少なくありませんが、予備選などを経て、優秀でない世襲候補は淘汰される仕組みになっています。
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