2024年 5月 8日 (水)

連載・世襲政治に未来はあるのか(4)
日本人は世襲が好き リーダーに能力求めない文化がある 作家・評論家の八幡和郎さんに聞く

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サミットに参加する人はその国トップクラスの「学歴」

―― 世襲が多いと、どんな悪影響がありますか。

八幡:そもそも世襲と民主主義はなじみません。後援会や政治資金を相続税なしで引き継げるのは世襲でない候補と比べると不公正です。社会階層が偏るのも問題です。安倍首相が典型的ですが、東京で生まれ育ち、地元に住んだことがない。こういった特殊なキャリアの人が多くを占めるのは望ましくありません。

―― 世襲政治家の能力については、どうお考えですか。

八幡:トップクラスの政治家は、知的水準、専門知識、職業経験において、本来は一流の人がなるべき職業のはすです。ところが、2世の場合はほとんど何もないと言わざるを得ません。首相をやるためには法律、経済、歴史などトップクラスの大学や大学院レベルの知識が求められるはずです。サミットに参加する人で、広い意味でのその国トップクラスの「学歴」を持っていない人は、日本の他にいるでしょうか。
   例えば早野透・元朝日新聞コラムニストの著書「政治家の本棚」(朝日新聞社)によると、小泉元首相の読書は、ほとんど大衆歴史小説に限られると言ってもいい。日露戦争について知りたいと思ったら、真っ先に日露戦争を題材にした小説を読むわけです。
   安倍首相について言えば、2013年の国会答弁で、憲法学者の芦部信喜氏(1923~1999)の名前を知らなかったことが話題になりました。この質疑には「変なことを聞くな」といった批判もありましたが、安倍首相の世代では、最も有名な憲法の教科書の著者は芦部氏だったはずです。その時代の憲法学の最高権威の名前を知らなかったということは、憲法を勉強したことがないということに他なりません。
   福田康夫元首相は丸善石油(現:コスモ石油)で課長まで務めましたが、トップマネジメントの経験はない。首相や主要な政治家を務める前提としてふさわしい職業経験を持つ人は誰もいない。  松下政経塾出身者も、職業経験を積まないまま政治家のキャリアを重ねてしまう点で、同様の問題を抱えています。唯一の例外だと言えそうなのは、宮城県職員を辞めて松下政経塾に入り、議員に当選してから一度は公職選挙法違反で辞職した小野寺五典前防衛相ぐらいです。

―― 2世議員は、昔から能力が低いと考えられていたのですか。

八幡:最近の問題です。今では主な政治家が2世ばかりなので、難しいことが分からなくても問題が表面化しないようになってしまっています。ですが、いわゆる「三角大中福」の時代であれば、「大中福(=大平正芳、中曽根康弘、福田赳夫元首相)」は元官僚なので色々なことを知っている。田中角栄元首相や三木武夫元首相は官僚出身者に馬鹿にされないように必死で勉強を重ねてきた。宮沢喜一元首相は、「サミットに行ってみて、やっぱり英語だけではダメだと思いましてね...」と、フランス語を勉強していたといいます。ですが、今の自民党では教養や専門知識がなくても何も恥ずかしくない。ですから、勉強する必要がなくなっているわけです。
 そんな中でも、今の安倍首相は1次内閣の時と比べると英語が格段に上達しています。第1次内閣退陣後に努力を重ねたということで、少なくともこの点は評価できます。本来ならば、1次内閣発足までに身につけておくべきだったのですが...(苦笑)。
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