2024年 5月 3日 (金)

スカイマーク再建、いまだ視界不良 「政権交代」の遺恨で大揺れ

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   経営不振に陥っている国内航空3位のスカイマーク再建をめぐり、政官民入り乱れて、分かりにくい議論が戦わされている。再建には同業他社との共同運航を柱とした業務提携が不可欠だが、相手が日本航空か全日本空輸かで大もめにもめているのだ。

   背景には自民→民主→自民の政権交代に絡む「怨恨」もあるとされ、決着はなお予断を許さない。

自力再建は困難として提携を検討

どうなるスカイマーク(画像はイメージ)
どうなるスカイマーク(画像はイメージ)

   スカイマークは、格安航空会社(LCC)との競争激化や円安による燃料費高騰などで経営が悪化。2015年3月期は136億円の最終赤字に転落する見通し。業績悪化に伴い、エアバスの超大型機「A380」の購入延期に関して、約7億ドルの違約金支払い(損害賠償)を求められる可能性もあり、自力再建は困難として、提携を検討している。

   提携は、スカイマークの羽田と札幌、福岡などを結ぶ5路線36便を「共同運航」にすることが柱。座席の2割程度を他社に予め買い上げてもらい、売ってもらうことにより、スカイマークは搭乗率をアップさせられる。

   スカイマークは当初、日航との提携を打ち出したが、11月下旬にこれが表沙汰になると、国土交通省が日航の単独支援に難色を示した。このため、スカイマークは全日空との提携を申し入れる方針を表明するという展開になっている。

   このように迷走するのは、羽田発着便が、航空会社にとって、のどから手が出る宝の山だから。1便当たりの売り上げが年間20億~30億円にも上るドル箱で、限られた枠を奪い合っているのが現状で、スカイマークの36便の行方が日航と全日空の力関係に大きく影響するのだ。

   具体的に見てみよう。現在の便数は日航184.5便、全日空173.5便(出発、到着のみは0.5便)。日航に、共同運航によってスカイマーク便が加われば220.5便に膨らみ、全日空との差をさらに広げることになる。ただ、全日空は、資本関係を結んで共同運航しているエア・ドゥ、スカイネットアジア、スターフライヤーを加えた「全日空陣営」全体でみると244.5便に達し、羽田発着枠の5割以上をすでに押さえているともいえる。

   純粋の経済活動としてみれば、両者いい勝負で、従来であれば国際線なども含めて取ったり取られたりの駆け引きになるところだが、今回は、自民党サイドから日航との提携への強い拒否反応が出ているのが特徴だ。というのも、日航は民主党政権時代に公的支援を受けて再建した経緯があるからだ。

民主党政権で「唯一の業績」が自民党には面白くない

   日航は2010年1月に2兆3221億円の負債を抱えて会社更生法を申請、政府系ファンドの企業再生支援機構から3500億円の公的資金投入を受けて再建に取り組み、2012年3月期決算では過去最高となる1866億円の純利益を上げ、その9月には上場廃止からわずか2年7カ月で再上場を果たした。支援機構は全株を売却して3000億円の売却益を得て、約900億円を国庫に納付した。民主党政権で唯一の業績とも評されるが、これが自民党には面白くない。

   特に、企業が赤字を出した場合に翌年度以降の黒字と相殺し、法人税が減免される繰越欠損金制度により、再建途上に巨額赤字を計上した日航は、数年間にわたり法人税減免を受けることが槍玉に挙がった。

   そこで、国交省は、日航再上場の際、「公的支援によって競争環境が不適切にゆがめられることがあってはならない」とする確認文書を作成。2016年度まで日航の新規投資や路線開設を制限することになった経緯がある。文書には共同運航については書かれていないが、自民党からは「スカイマークとの共同運航は、実質的に日航の新規路線開設と同じ」との批判の声が上がり、太田昭宏国交相は11月25日の会見で「(認可に当たっては)健全な競争確保の観点から厳しく判断する」と、慎重姿勢を示していた。

国交省に「日本の空」の青写真はあるのか

   ただ、そうした怨恨はさて置き、そもそも2社寡占に風穴を開けるため新規航空会社を育てるのが「国策」だったはず。エア・ドゥやスカイネットなどが経営不振から全日空の出資を受け入れる中、スカイマークは独立系の最後の砦だ。

   同社の西久保慎一社長は2015年1~2月に第三者割当増資などで投資ファンドから最大25%の出資を受ける方針を明らかにしている。現在、西久保氏が議決権ベースで同社の約30%の株を持つ。新規出資を受ければ、西久保氏とファンドが同規模の株数を持つことになり、西久保氏としては提携に関わりなく経営の独立性を保つねらいがあるとみられる。そもそも西久保氏が日航との提携をまず考えたのは、日航がスカイマークへの出資を求めなかったためとされ、エア・ドゥなどを続々と傘下に収める全日空への西久保氏の警戒心は根強い。

   自民党政権の継続が確実なだけに、日航との単独提携はあり得ないとの見方が強く、全日空との単独提携か、日航・全日空の「相乗り」になるか、国交省の判断が注目されるが、提携後の日本の航空行政の競争について、どのような青写真を描くのか、国交省の構想力も問われている。

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