大リーグ帰りのソフトバンク・松坂大輔が2015年3月4日の阪神とのオープン戦で登板。3回無失点の投球は開幕投手の可能性をアピールした。「1、2回はキャッチボールの延長みたいなもの」松坂が甲子園のグラウンドに姿を見せると、スタンドから声がかかった。「大輔、お帰り」これは日本プロ球界に戻ってきたことだけではなく、横浜高時代に春夏連覇した甲子園というグラウンドに戻ってきた歓迎だった。高校球児だった選手にとって最高の言葉なのである。さすが関西の野球ファンだ。試合の内容は3回を投げ、4安打を許したものの無失点に抑えた。日本のマウンドは9年ぶり。この空白は短くない。それをどうやって埋めるのか、と見ていたのだが、松坂は抜け目なく、さまざまなテストをし、また情報を手にした。ピッチングを振り返った言葉がある。「1、2回はキャッチボールの延長みたいなもの」これはマウンドの確認だ。大リーグに行ったときに、米国のマウンドの硬さに悩まされたことはよく知られている。日本の球場はどこもさほど違わないから、甲子園のマウンドを踏んで感じを思い出したはずである。「エンジンがかかったのは、3回ですね」走者を得点圏に背負い、満塁でマートンを迎えた。真ん中のストレートで勝負し、遊ゴロに抑えた。まさに実践を想定した場面で、どう通じるか試した投球だった。この1球は収穫だったことだろう。工藤監督は「まかせておけば大丈夫」それだけではない。1回を投げた後、主審と会話を交わした。ゴメスへの投球で気になった1球があったからだ。「真ん中のストライクだと思ったので、それを確認した」ストライクゾーンの確認である。日米のゾーンは明らかに異なるので、現在の日本はどうなっているか、との情報を得たのだと思う。阪神にヒットエンドランを決められた。これは日本のキメの細かい戦法を思い出すことになったはずである。大リーグでは細かいことにあまり神経を使わない。日本はスキがあれば次々と攻撃を仕掛けてくることを再認識したのではないか。試合が始まってそのイニングを投げるために、ベンチ前でキャッチボールをすることは、大リーグでは禁止されているが、日本では許されている。松坂はこれも9年ぶりに行った。投手にとってこれは重要なことで、しっかりとした肩を作り、調整をしてマウンドに上がることができる。松坂はこの有利な点を最大に生かしていくに違いない。「まかせておけば大丈夫」工藤監督は満足そうなコメントを残した。最大のポイントだった投げられることが確かめられたうえに、さまざまな課題を確認していた姿をみることができた。手術の後遺症はとりあえず問題なしと確信したはずである。甲子園での初登板という味な配慮をした工藤監督。こうなると開幕投手松坂を描いているかもしれない。それが実現したときの球場の盛り上がりはすごいものだろう。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷齊)
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