2024年 4月 24日 (水)

TPP副大臣「ブルーチーズは美味しかった」は失言なのか 国会でお詫びさせた民主党追及の「後味」

   ニュージーランドで行われた環太平洋経済連携協定(TPP)の署名式では、辞任した甘利明前担当大臣に替わり、高鳥修一内閣府副大臣が和服姿で出席したことが話題になった。しかし、2016年2月8日の衆院予算委員会では、それ以上に高鳥氏のブログの内容が俎上に上がることになった。

   高鳥氏は署名式直後に「ブルーチーズは美味しかったです!」と書き込んだが、実はTPPの合意ではブルーチーズの関税は半減することが決まっている。こういった点を念頭に「甘利大臣はニュージーランドと酪農の交渉で戦っていたのではないのか」などと、民主党から批判され、高島氏は「誤解を招いていることについてはお詫び申し上げたい」と陳謝した。一方で、担当副大臣の資質を問うことが狙いとみられる民主党の質問自体、些末な議論だといった指摘もある。

  • ブログの「ブルーチーズは美味しかったです!」という書き込みが問題になった(画像は高鳥氏のブログのスクリーンショット)
    ブログの「ブルーチーズは美味しかったです!」という書き込みが問題になった(画像は高鳥氏のブログのスクリーンショット)
  • ブログの「ブルーチーズは美味しかったです!」という書き込みが問題になった(画像は高鳥氏のブログのスクリーンショット)

TPP交渉とブルーチーズの関係を答弁できず

   問題とされたのは、高鳥氏が2月4日に「TPP署名式」と題してブログに書き込んだ内容。車の後部座席から写した写真付きで、

「先ほどニュージーランドにて閣僚会合の後、無事に署名式と共同記者会見が終わりました。私一人に空港まで6台の白バイとパトカー、上空からヘリコプターが警護に付く厚遇でした。 ブルーチーズは美味しかったです!」

と書き込んだ。この記述を民主党の福島伸享議員が、

「すばらしいですね、人生でなかなかこういう経験もないと思いますよ?」

などと皮肉りながら、ブルーチーズの関税について質した。

「いやー、いいですねー。今回、ちなみに、ブルーチーズも交渉の対象になってますけど、ブルーチーズの関税ってどうなるんでしたっけ?」

   福島氏はこの点を事前通告しておらず、高鳥氏が

「即座にはお答えできずに恐縮ですが、確認させていただきます」

と応じると、福島氏は

「通告していないので答えられないと思いますけれども、私が言いたいのはそういうことではない」

と引き取った。

関税が11年目に半減され、日本の酪農家に影響

   福島氏はブルーチーズの関税は、TPP発効後11年目までに29.8%が14.9%に半減し、クリームチーズについては16年目で撤廃されることを指摘。これに伴う日本の酪農家の苦労について

「特に家族でやっている人は、休みもなく毎日乳搾りをやったり牛が病気になったり出産があったりとか、本当に大変なんですよ!みんなこれを気にしていて、チーズの一部の関税が撤廃ですよ、重要5品目が」

と代弁し、

「一番乳製品(の関税撤廃)を要求していた国はどこですか?ニュージーランドですよ!甘利大臣はニュージーランドとの酪農の交渉で戦ってたんじゃないんですか?そのニュージーランドに行って『ブルーチーズがおいしかったです』ということをおっしゃる感覚が私は理解できない」

などと高鳥氏を非難した。高鳥氏によると、「実はチーズは好きではない」が、夕食会の閣僚テーブルでチーズが出てきた。正面にはニュージーランドの担当大臣が座っていたため、高鳥氏は

「ブルーチーズは、私は好きではありませんでした。昨日まで。だけど、今日からニュージーランドのチーズがおいしいということはよく分かった」

などと会話を交わしたという。こういった経緯をブログにつづったといい、

「自分が何とか元気にやっているということを短い時間の中でお伝えしたいということで書いた。誤解を招いていることについてはお詫び申し上げたい」

と釈明した。

高鳥氏は2011年当時、TPPを「国家主権の放棄」と非難していた

   このブルーチーズのやり取りに先立って、福島氏は高鳥氏の「変節」ぶりも指摘している。高鳥氏は11年2月11日のブログで、「TPPについて(平成の売国)」と題して、

「私はTPPについて国家主権の放棄であり、平成の『開国』どころか平成の『売国』だと考えている。政治家の中にもいろんな考えや判断があるけれど、TPP問題は日本を守る断固とした決意のある『保守政治家』か否かのリトマス試験紙みたいなものだ」

などと息巻いていた。特に「TPP問題は~リトマス試験紙」のくだりはフォントを太字にするという念の入れようだった。福島氏は、このブログについて

「この説に従うと、TPPの署名式に和服で参加した方は売国の政治家になるのではないか」

と皮肉り、高鳥氏は

「ご指摘の通り、私がかつてTPP協定に反対していたことは事実」

だと事実関係を認めながらも、交渉の結果として、コメでは国家貿易制度や枠外税率が維持されたことを理由に、

「私が変わったというよりも、当初懸念されていた内容と交渉結果が別物になったということで、私が国を思う、国益を思う気持ちは一貫している」

と釈明するのがやっとだった。

   一連のやり取りを各紙は簡単に報じたが、ネットメディアなどのコメント欄には

「次元が低く、品格もない」
「個人攻撃に終始して、恥ずかしくないのか民主党」

などと福島氏に批判的な内容が目立つ。

   そういったことも影響しているのか、福島氏はフェイスブックで

「我が国にとって極めて大事なことを審議を通じて明らかにしてきたつもりですが、政策について勉強しないメディアは一切取り上げようとしません」

と不満をもらしている。

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