2024年 5月 4日 (土)

英シティーの譲れない一線 EU離脱後の生き残り戦略

   英国の欧州連合(EU)離脱決定で、世界屈指の金融センターであるシティーの行方が注目されている。国民投票の結果が出てから時間の経過とともに、パニック的な反応は収まりつつあるが、長い目で見て、金融機関が海外に移転する、金融機能の一部が他のEU加盟国に流出するなどの可能性もあり、日本企業、日本の金融機関もさまざまな対応を迫られる。

   シティーは、ロンドン中心部の約1マイル(1.6キロ)四方にイングランド銀行(中央銀行)やロンドン証券取引所、大手金融機関が集積する国際金融街。大英帝国時代から商品取引市場として発展した伝統と、1980年代にサッチャー政権が断行した「金融ビッグバン」による規制緩和が求心力になり、米国とアジアの間に位置するという地の利もあって、世界の金融機関と金融取引を引き付けてきた。会計事務所や法律事務所の集積という金融業に必要なインフラの蓄積もある。このため、ロンドンには現在、世界の約250銀行が拠点を置き、1日当たりの外国為替取引量は2兆ドルを超えて世界シェア4割とトップの座を占める。

  • EU離脱で英シティーはどうなるか
    EU離脱で英シティーはどうなるか
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独フランクフルトなどへ移転示唆する金融機関も

   特に、EU内での位置という点では、EU加盟国のどこかで免許を取れば、EU域内ならどこでも営業できる「EUシングルパスポート制度」があることから、外国の金融機関の多くはロンドンを欧州事業の中心拠点にしており、EU域内の金融業の約25%が英国に集まり、2位ドイツの約15%に大差をつけている。

   英国の優位性はEU離脱でどうなっていくのか。やはり影響が大きいとみられるのが「シングルパスポート」が適用されなくなる懸念で、英HSBCは「本社移転を再考する必要はない」とコメントを出す一方、「本社従業員のうち最大1000人をパリへ移すことを検討」(英BBC放送)と報じられている。米系金融機関のモルガン・スタンレーは欧州の本拠をロンドンから、ダブリン(アイルランド)か独フランクフルトに移す可能性を示唆しているほか、JPモルガンも社員宛てメールで拠点再編に備え、海外に一部業務を移転することを検討中とされる――といった具合だ。

   日本の金融機関では、三井住友銀行が欧州を統括する現地法人をロンドンに置き、英国での免許によりEU域内に6支店を展開している。英国に約2500人の従業員がいる野村ホールディングスも、英国で免許を取り、EU域内5か国で事業を展開している。両社などは、支店の営業ができなくなる可能性があり、拠点移転をにらみつつ英国とEUの交渉を注視する考えだ。

   これに対し、オランダのアムステルダムに現地法人を置いている三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行は、他社に比べれば大きな影響はなさそうだが、それぞれロンドン支店を為替や有価証券の売買といった市場関連業務の中核拠点にしており、シティーの地盤が低下すれば、機能を別都市に移すことも検討する方針だ。

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