その瞬間、何が起きたのか理解できた人はどれだけいただろうか。FIFA(国際サッカー連盟)主催のサッカーの試合で、史上初のビデオ判定が導入され、判定が覆る事態が起きた。2016年12月14日に行われたFIFAクラブワールドカップ準決勝、アトレティコ・ナシオナル(コロンビア)と鹿島アントラーズ(日本)の試合でのことだ。「歴史的なシーン見てますよ我々」前半27分50秒、鹿島のフリーキックのシーンで、ペナルティエリア内で西大伍が倒されたが、試合は続行された。ところが、28分35秒、プレーが途切れると、主審が「待て」のジェスチャーとともに笛を吹き試合を中断した。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)だ。FIFA主催大会で初めて導入され、PKや退場などの微妙なシーンで、主審とビデオ判定室で映像を確認する制度で、西が倒されたシーンがファールの判定となり、鹿島がPKを獲得した。主審が確認した映像はオーロラビジョンで場内にも映されていた。日本テレビの中継で解説の都並敏史と岡田武史は「何があったの?」「画期的だなこれ。でも引っ掛けられてたよね、本当に」「歴史的なシーン見てますよ我々」と興奮を隠さなかった。アトレティコの選手は「何が起こったんだ」とでも言いたそうに5~6人が主審に詰め寄った。しかし、PKの判定はそのまま。中断してから約3分半後の前半32分00秒、ようやく鹿島の土居聖真がPKスポットにボールをセットし、プレー再開。鹿島が先制ゴールをあげた。ピッチ解説の城彰二によると、問題のシーンでは「鹿島ベンチからファールじゃないかとの意見が出ていた。それに対しレフェリーが第4審に伝えてビデオ判定になった」という。前半アディショナルタイム、逆にアトレティコの選手が鹿島ペナルティエリアで倒され、アトレティコの監督はビデオ判定を要求するかのように、両手でモニターのような大きな四角形を2度描き、両手を広げた。しかし、ここではビデオ判定はなされなかった。城が伝えたところによると、後半開始時にも、アトレティコの選手はピッチに入る際、関係者に詰め寄り、両手を広げてあのシーンは本当にPKなのかと話をしていたという。ツイッター上では「先制点がビデオ判定で世界的に物議をかもしそう」「サッカーでビデオ判定って必要かな...」「正直モヤモヤ感はあった」などといった声もあがっている。なお後半、鹿島は2点を追加し、3対0で勝利。日本のクラブとして初めて、奇跡のようなクラブW杯決勝に進出した。
記事に戻る