キリンビールが2016年夏、ウェブ限定で公開していた缶入りチューハイ「キリン氷結」のアニメCMが中止になったことで、「復活」を求めて署名活動が始まった。「キリン氷結」のアニメCMは、2016年8月2日にYouTubeで公開。「氷結」が発売から15年目を迎えたことで、「あたらしくいこう」をコンセプトに、アニメやソーシャルゲーム、アイドル声優のライブなどに熱中する瞬間をイキイキと描いた、ストーリー性の高いCMで話題を呼んでいた。人気声優サイン入りTシャツも中止に「キリン氷結」のWeb限定のアニメCMは、キリンビールと、「キルラキル」「キズナイーバー」などで知られるアニメ制作会社のTRIGGERと、アニメイトラボのコラボレーションによるオリジナル。人気声優を起用、楽曲にも凝ったことで、アニメファンからは「作品」としての評価が高かったほか、人気声優のサイン入りオリジナルTシャツのプレゼントキャンペーンも予定していた。ところが、そのアニメCMはわずか8日間後の8月10日に打ち切り。背景には、ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)と主婦連合会が共同でキリンに対して提出した「キリン氷結ウェブ限定アニメCMの中止を求める要望書」があったとみられる。キリンは、このアニメCMを視聴するにあたり、「20歳以上」の年齢認証を設けて、未成年者が視聴しづらいように配慮していたが、ASKなどは「絶対的なものではありません」とし、未成年者でも見ることができると主張。「ウェブ上の年齢認証の徹底など不可能。『ウェブCMにもテレビCMと同じ基準が求められる』というのが、私たちの見解です。速やかな中止を求めます」と要望していた。そうしたなか、ツイッターのまとめサイトtogetterに2017年1月16日、「氷結×TRIGGERアニメCMが根拠のない理由で非公開にされた件について」が公開された。アニメファンとみられるツイッター主が、「キリン氷結」のアニメCMが「アルコール薬物問題全国市民協会(ASK)と主婦連合会の影響で非公開にされてしまいました。『アニメ=未成年者の飲酒を促す』という根拠のない理由でこじつけて非公開にされた事に憤りを感じています。TRIGGERのスタッフ達もこの件に関しては、悔しさを味わったに違いありません。」と綴り、「署名」を呼びかけた。1月19日正午時点で、2672人の署名を集めている。署名に賛同した人からは・・・「アニメ=未成年は偏見」「偏見でものを言わないでほしい...クレーマーの視野の狭さに軽蔑します」「アニメが未成年飲酒を促すっていう安易で空っぽな思考はまるで意味がない」「アニメ=未成年は偏見。登場キャラが何歳に見えようと関係ないしキャラが何歳か注意書きも必要ないと思う」「根拠もなくクレームをつければどうにかなるという人たちにも、事なかれでそれを受け入れてしまうメーカーにも腹が立ちます」「アニメが子供向けという思考自体が時代錯誤も甚だしい。去年大ヒットした『君の名は。』が、子どもに受けたからヒットしたとでも思っているのか?」といったASK(アルコール薬物問題全国市民協会)などへの批判的な声が少なくない。ただ、なかには「署名には賛同しますが、『テレビCMとウェブCMの基準が同じにすべきではない』という理由からです」など、ASKが指摘する「ウェブCMへの基準づくり」に言及する声もみられる。ASKによると、これまで「キリン氷結CM中止」の件で寄せられた批判的な声は、これまで1件もなかったが、「本日(17日)初めて、メールが2件、電話が6件寄せられています」と話す。キリンのアルコール飲料のCMをめぐっては、2014年1月24日に人気俳優の大沢たかおさんと着ぐるみのカエルを起用した缶入りチューハイ「本搾り」のテレビCMが、ASKなどが「未成年者を飲酒に誘導しかねない」と指摘したため、放映中止となったこともあった。酒類メーカーに求められた自主規制「キリン氷結」のウェブ限定のアニメCMについて、キリンは「(ASKなどから)要望書は受け取りましたが、ウェブCM中止の判断はそれ以前に『未成年者への配慮に欠ける』との声をお寄せいただいていたことから検討を開始。8月10日に中止を決定しました」と話し、要望書との「因果関係はありません」と明かす。CMづくりについて、「未成年者への配慮は常に考えていますし、今後ともそのことにかわりはありません」と話す。今回、「CM復活」を求める署名活動がはじまっていることは承知しているという。一方、ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)によると、「キリン氷結」のアニメCMの中止を求めた背景には、2010年5月に世界保健機関(WHO)が「酒類メーカーなどのマーケティングから若者を守る予防手段を検討すべき」との指摘を受けて、日本でも14年6月に「アルコール健康障害対策基本法」が施行され、酒類メーカーに自主規制が求められるようになった。2016年5月には「アルコール健康障害対策推進基本計画」が閣議決定され、酒類メーカーは、テレビCMについて、「25歳未満の者を広告のモデルに使用しない」「25歳以上であっても、25歳未満に見えるような表現は行わない」「喉もとを通る『ゴクゴク』などの効果音は使用しない」「お酒を飲むシーンに、喉もとを強調する描写はしない」といった基準を設けたが、ウェブ広告については現在も検討が進められている。ASKは「基準は、まず、テレビCMを先行するということで、『キリン氷結』のWebCMはそのすぐあとの8月に露出されたものです」と、これまでの経緯を説明する。ASK代表の今成知美さんは、「テレビCMであれば、業界の自主基準に明らかに反するので、そもそもつくられることはなかったと思います」と話し、「テレビCMにおける25歳という基準は、未成年者の世代モデルにすることを避けるという配慮があったはずです。(キリンは)ウェブCMだからという理由で、自主基準の対象から外したことがあります。また、イラストなどの仕事の合間に飲酒をしているシーンがあるなど、表現上の問題も見受けられます」と、問題点を指摘。「キリンさんとも話をしましたし、理解を得られたと思っています」と話す。ウェブCMの表現方法に「注文」をつけたわけで、表現手法にアニメが「ダメ」というわけではないようだ。
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