2024年 4月 19日 (金)

「ちょっと寝不足」でがんと認知症に 怖い「睡眠負債」を返す正しい熟睡法

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【NHKスペシャル 睡眠負債が危ない】(MHK)2017年6月18日放送
「6時間睡眠で大丈夫? ちょっと寝不足が蓄積」

   「ふわわ~、眠いな~」と大あくびをしたアナタ。単なる「寝不足」と侮ってはいけない。いま睡眠研究の分野では、この「蓄積した睡眠不足」のことを「睡眠負債」(Sleep Debt)と呼び、がんや認知症につながる重大な疾患として危険視しているのだ。

   ある研究では、毎日6時間の睡眠が2週間続くと、2晩徹夜したのと同じ脳の衰えの状態になることも判明、交通事故の隠れた原因になっている。睡眠の「負債」をしっかり返済し、健康を取り戻す正しい睡眠方法を探る。

  • 睡眠不足の借金が続くと…
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寝不足の蓄積で前立腺がん4割・乳がんが7割増

   番組では冒頭、20~70代の男女10数人に「睡眠負債」の実験をしてもらった。全員、睡眠には自信がある人ばかり。ホテルに泊まり、まず一泊目は普段と同じように就寝する。翌朝、いつもどおり出勤。翌日は土曜日で休日。さあここから「睡眠負債」実験の本番だ。ホテルの部屋の窓に目張りをして暗くする。時計も外す。腕時計やスマートフォンなど時刻がわかる物も預かる。時間を気にせず心置きなく翌朝まで寝てもらった。この状態で普段より多く眠った分が「睡眠負債」、つまり本当に寝たいのに眠れていない分なのだ。そして、8人の初日と2日目の睡眠時間を比較すると――。

   全員、睡眠時間が増加していた。2時間未満が40%。2~3時間が33%、3時間以上が27%。いつもより2時間以上眠る人が「睡眠負債」といわれるから、6割の人が「睡眠負債」だ。中には5時間という人もいた。

   「睡眠負債」が進むとどうなるのか。まず、がんの発症リスクが高くなる。前立腺がんでは38%増、乳がんでは68%増になることが東北大学の研究でわかっている。番組では「睡眠負債」研究の第一人者、シカゴ大学のデービッド・ゴザル教授が行なったマウスの実験を紹介した。がん細胞を移植したマウスを、普通に睡眠をとるグループと、2週間「睡眠負債」の状態にしたグループの2つにわけた。すると、わずか2週間で「睡眠負債」のマウスのがん細胞は、十分睡眠をとったマウスの2倍近くの大きさにふくれあがった。

   ゴザル教授「睡眠負債に陥ると、本来ならがん細胞を攻撃するはずの免疫細胞が、眠った状態になるのです。結果として、がん細胞の増殖の手助けをするような働きに転じるのです。睡眠と免疫システムは密接な関係にあり、睡眠不足になると免疫システムに悪影響をおよぼす可能性があるのです」

働き盛りの寝不足が30年後のアルツハイマー病

   もう1つ怖いのが、認知症の中で最も多いアルツハイマー病の発症リスクが高まることだ。米スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所長の西野精治教授はらは、マウスを使った実験で、睡眠中にアミロイドベータと呼ばれる「脳のゴミ」が排出されることを突き止めた。アミロイドベータはアルツハイマー病の原因物質といわれている。発症の20~30年前から毎日少しずつ蓄積する。日中の活動を通じて「ゴミ」が脳に産生される。「ゴミ」は夜寝ている間に掃除されるが、睡眠が足りないと「ゴミ」が残ってしまう。これが長年溜まり続けるとアミロイドベータの塊(かたまり)になり、脳神経を傷つけ、アルツハイマー病になるのだ。

   西野教授「だから、働き盛りの30~50代に十分な睡眠をとっていないと、数十年先に認知症になるリスクを高める可能性があるのです」

   「睡眠負債」は病気以外に日常生活でも重大な危険につながる。たとえば、交通事故がそれだ。米ペンシルバニア大学の研究チームが面白い実験を行なった。被験者を(1)2晩徹夜したグループと、(1)睡眠時間を推奨される7~8時間より1~2時間少ない6時間のグループに分け、注意力と集中力のテストを行ってどう変化するか調べた。徹夜組は初日、2日目で成績が急落した。

   一方、6時間睡眠組では、最初の2日間はほとんど変化がなかった。しかし、その後徐々に脳の働きが低下し、2週間後には徹夜組の2日目と同じレベルの成績に下がった。つまり、「6時間睡眠を2週間続けた脳は、2晩徹夜したのとほぼ同じ状態になる」といえる。しかも驚いたことに、6時間睡眠組は脳の働きの衰えを自覚していなかった。徹夜と比べ、わずかな睡眠不足がじわじわ蓄積した場合、なかなかその影響を自覚できない。同大学の研究者は「交通事故の原因の多くに、運転手の睡眠負債が隠れているといってよいでしょう」と指摘する。

しっかり寝たバスケ選手はシュート成功率アップ

   逆に睡眠時間を増やして成功した例を紹介した。米のバスケットボールのあるチームが選手たちの睡眠時間を調査すると、平均6時間半だった。みんな睡眠は十分だと言っていた。そこで実験で好きなだけ寝てもらうと、いつもより2時間多く眠った。1か月間8時間半睡眠を続けさせると、3ポイントシュートの成功率が上がり、ダッシュのタイムも上がった。「睡眠負債」の返済をしっかり行なうと、脳や筋肉の動き、やる気までアップするのだ。

   ここで番組では、自分に「睡眠負債」はあるかどうか手軽にチェックする方法を紹介した。過去1か月間のことについて、下の8つの質問に回答する。「問題なし」が0点、「少し悩む」が1点、「かなり悩む」が2点、「深刻な問題」が3点だ。これに年齢や性別などの問いがあるので、一概には言えないが、10点以上はリスクが高く、6~9点はリスクが中等度、5点以下はリスクが低い。

   (1)寝つきはいいか?

   (2)夜間、睡眠途中で目が覚めることがあるか?

   (3)希望する起床時刻より早く目覚め、それ以上眠れないことがあるか?

   (4)ここ1か月の総睡眠時間は十分か?

   (5)全体的な睡眠の質に満足しているか?

   (6)日中の気分で滅入ることはないか?

   (7)日中の活動(身体的および精神的)の気分はいいか?

   (8)日中に眠くなることがあるか?

   それにしても、「睡眠負債」を解消するにはどうしたらよいか。番組では、ゲストたちが睡眠の専門家、睡眠評価研究機構代表・白川修一郎教授、東京医科大学の井上雄一教授らに質問をぶつけた。

   タレントの陣内智則「いったい、1日に何時間眠ればいいのですか」

   白川教授「人によって違いますが、7~8時間は必要です。4~5時間では危険です。ただし、高齢者は睡眠時間が減るので、必ずしも7~8時間寝る必要はありません。『8時間寝なければ』と意識しすぎると、かえってストレスになり、不眠につながります」

「寝だめ」と「寝酒」がいけない理由

   タレントの優木まおみ「私、忙しくて4~5時間しか眠れなくて、休みの日にガバーっと寝ちゃいますが、寝だめはいいのですか? まとめて睡眠負債を返済するわけだから」

   井上教授「寝だめはオススメできません。普段の生活が乱れ体内時計が狂いますから、別の健康への悪影響が出てきます(ええっ~!とスタジオからブーイングの声)。睡眠負債はまとめて返さず、毎晩の睡眠を増やして少しずつ返すのがいいのです」

   MCの寺門亜衣子アナ「主婦の中には昼寝でカバーしている人もいます」

   白川教授「やはり生活のリズムが崩れます」

   お笑い芸人の尾形貴弘「僕は5時間ですが、寝酒を飲んで熟睡しています」

   白川教授「寝酒は絶対にやめてください。結果的に睡眠を浅くして、睡眠負債をどんどん増やしているようなものです」

   尾形「......(ショックで口がきけない)」

   結局、日々の生活の中で時間をやりくりして、夜の睡眠時間を1~2時間増やしていくしかないという。「早めに寝床に着いても、なかなか眠れない」という悩みを持つ人も多いだろう。そんな人の対策として番組では、「ベッドでのスマホは厳禁」「上を向いて歩こう(午前中に太陽光を視野に入れる)」という2つを「眠りの極意」として紹介した。スマホを見ていると、脳の感情部位が働き、睡眠ホルモンの分泌が止まるからだ。また、わずか15秒太陽光を浴びるだけで、体内時計がリセットされる効果があるという。

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