2018年 10月 21日 (日)

らくらくホンには一定支持あったのに... 富士通、「ケータイ」撤退の深層

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   富士通が携帯電話事業を売却することになった。米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」などに押されており、ジリ貧となっている状況を抜け出すのは困難と判断した。日本の電機メーカーはかつて競って携帯電話を生産、その数は10社を超えていたが、残るはソニー、シャープ、京セラの3社に絞られた。

   2017年9月にも1次入札を実施する。応札者として、欧米の投資ファンドやレノボ・グループなどの中国メーカーの名前が挙がっている。売却額は数百億円になるとみられている。開発・生産からは撤退するが、売却後も富士通は事業会社の株式の一部を保有し、「アローズ」「らくらくホン」といった自社ブランドは継続する意向だ。

  • 富士通のらくらくホン(画像は富士通の公式サイトより)
    富士通のらくらくホン(画像は富士通の公式サイトより)

「ガラケー」と揶揄

   富士通はかつて「電電公社の次男坊(長男はNEC)」と呼ばれただけに、電話機などの通信機器には強かった。携帯電話の時代を迎えた2000年代初めにあっても特にNTTドコモに食い込み、NECや松下電器産業(現パナソニック)、シャープとともに国内大手の一角を占めた。しかし、2008年のアイフォーン国内販売開始でスマホ時代へと大きく局面が変わった。消費者の欲することと必ずしもマッチングせず独自の進化を遂げた国内メーカー各社の携帯電話端末は「ガラパゴス」略して「ガラケー」と揶揄され、劣勢をしいられた。時間を置かず、櫛の歯が欠けたように次々と撤退するメーカーが相次いだ。

   富士通は2012年には東芝の携帯電話事業を統合。事業を立て直すため、2016年2月には本体から分社化していた。ただ、富士通は高齢者向け「らくらくホン」など独自製品を展開して一定の消費者の支持を得ている。出荷台数はピークだった2012年3月期の800万台から右肩下がりで、18年3月期に310万台程度とみられるが、それでも17年3月期に1500億円程度の売上高と100億円程度の営業利益を得ている。ジリ貧とは言え、少なくとも赤字を垂れ流して会社の足を引っ張っているわけではない。

格安スマホが本格的に普及し始めるなか...

   しかし、富士通の国内シェアは、アップル、ソニー、シャープ、京セラに次ぐ5位にとどまる。そもそも、2016年(暦年)の年間出荷台数は1位のアップルと国内4社(ソニー、シャープ、京セラ、富士通)合計がそれぞれ年1500万台程度で拮抗する状況だ。世界中を席巻する韓国サムスン電子のスマホを日本の消費者が嫌ってあまり受け入れないという、日本の特殊事情ゆえに国内メーカーが存在できているとも言える。ただ、スマホ自体が汎用品化して格安スマホが本格的に普及し始めたなかでは、高級機種でない限り、価格低下はまぬがれない。

   富士通としては将来的な成長を見込める法人・官公庁向けのITシステム開発など、BtoBのITサービスが経営の柱となるように事業の選択と集中を進めるため、携帯電話事業を本体から切り離す判断に傾いた。富士通はこれまでも、経営の構造改革の一環として、インターネット接続業を手がけるニフティの個人向け事業や、カーナビの富士通テンを売却。パソコン事業もレノボ・グループと統合するべく協議を進めている。汎用品化などが進んで競争が激しい「個人向け」からはほぼ撤退しており、もはや総合電機メーカーではなくなっている。今後は人工知能(AI)などを活用して法人向けITサービスを強化し、競争力を高めたい考えだ。

   残る国内3社はソニーが高性能カメラ、シャープが液晶画面といったふうにそれぞれ得意分野を強化して消費者の支持を得たい考え。「主力製品ではないものの、ラインアップとして最先端のスマホを保有することが他の事業分野にシナジー効果を与える可能性はある」(国内証券系アナリスト)と見る向きもある。果たして富士通の決断の成否は?

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