2024年 5月 4日 (土)

格付け機関に反撃を始めた中国 20億ドルのソブリン債が注目されたワケ

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   中国共産党第19回党大会が閉幕した翌日、香港では中国政府の大きな動きがあった。

   中国財政省は2017年10月26日、香港で20億米ドル建てのソブリン債(国家などが保証する債券)を発行したのだ。これくらいの債券発行はごくありふれたことだが、今回は国際金融機関とメディアが注目した。それは何故なのか。

  • 中国による格付機関への反撃が始まった(画像はイメージ)
    中国による格付機関への反撃が始まった(画像はイメージ)
  • 中国による格付機関への反撃が始まった(画像はイメージ)

「格下げは間違った決定」

   今回のソブリン債発行は、国際3大格付け機関(S&P、ムーディーズ、フィッチ・レーティングス)が中国の信用格付けを共に下げた後に行われた。

   S&Pは9月21日に中国の格付けをAA-からA+に下げた。その前に、フィッチは5月26日の評価で中国の国としてのソブリン・レーティング(Sovereign rating)をA+の現状維持とし、ムーディーズはAa3からA1に下方修正した。

   これに対して中国政府は強い不満を表明し、財政省は「間違った決定だ」と反撃した。しかし、党大会の前は「口撃」以外の行動を取ったわけではない。

   S&P、ムーディーズ、フィッチの3大国際格付け機関は世界の信用評価を独占している。その3大格付け機関の信用評価を無視してみずから債権の値付けをするのは、これまでにはほとんど前例がないことだ。

   債券価格は、一般的に信用評価によって決まり、信用格付けが低ければリスクが高いことを表し、高利率で投資家に購買を促さなくてはならない。反対に信用格付けが高ければリスクは低く、それだけ利率も低くなる。

   中国政府が10月26日、香港で20億米ドルのソブリン債を直接販売の形を取り、信用格付けを無視して債券を発行したのは、「国際格付け機関の中国に対する評価は間違いであり、国際投資家は独自に客観的に評価することもできる」ことを国際社会に対して証明したかったからである。実質的に3大格付け機関への反撃に出たことを意味する。

格付けが上の韓国より低い利率

   債券売り出しから1時間以内に、買い注文は100億米ドルを突破し、当初予定した発行金額の5倍以上になった。その後、最終的には220億米ドルにまで増え、予定の10倍以上になった。

   ロイターが伝えるところによれば、シティバンクやHSBC、スタンダード・チャータード銀行、ドイツ銀行など外資系銀行が次々と購入に走った。

   『ウォールストリート・ジャーナル』によれば、投資家の需要が旺盛なため、中国政府は5年ものの債券の利率を2.196%に設定し、同じ期限の米国国債と比べ、わずかに0.15ポイント高いだけだった。

   この利率は、中国より格付けの高い韓国よりも低い。ムーディーズの韓国に対する格付けは中国より2階級高く、Aa2となっている。これは、マーケットが中国のソブリン・レーティングに与えた「待遇」が、ムーディーズが出した格付けよりも高かったことを意味している。

   一般的に、ひとつの国がソブリン債を発行するときは国家の信用が担保にされる。このため、国際格付け機関はその信用にもとづいて評価を行い、投資家に遅滞なく利払いを行い、満期になったら償還できるかどうかを評価する。これは、あたかも個人や企業が銀行に融資を申し込むようなものであり、これに対して銀行は融資を申し込んだ者や企業のバックグラウンドを調査し、申請人が借り入れ金を返済できるか否かを見極めるのと同じだ。

   国の格付けが高ければ、それはその国に対する信用度が高いことの証明となる。経済のファンダメンタルズが良く、金融システムが健全で、ソブリン債の違約リスクも低いとみられることで投資家の好感度は高くなる。逆に格付けが低ければ、ソブリン債は投資家に高い利率を提供しなければ、誰もハイリスク、ローリターンの債券を引き受けてはくれない。

「小金」で見せつけた「力量」

   これまで、3大格付け機関の中国に対する格付けの下方修正は、4回発生している。

   中国が今後数年間に債務が膨れ上がって負債比率が上がり、経済の低成長により中国の財政能力を弱めることを危惧したものだ。S&Pやムーディーズは中国のソブリン・レーティングを下方修正し、フィッチも2013年の下方修正を維持し、海外投資家が中国の債券市場参入に慎重になるよう注意喚起している。

   これに対して中国財政省は、「評価の下方修正は中国政府がサプライサイドの構造改革を深化させ、総需要を適度に拡大している現状を過小評価し、中国経済が現在直面している困難を過大評価している」と反論した。

   中国の債務残高はたしかに世界最多だが、近ごろはすでに改善しつつあり、「格付け機関は古い判断で中国を見ている」と中国政府は考えている。

   今回の債券発行のタイミングも微妙で、ちょうど中国共産党第19回党大会の翌日だった。

   現在、中国の外貨準備高は3兆ドルに達しており、20億ドルのソブリン債券は実際には微々たるもので、政府には融資を求める強い動機はない。債券発行の象徴的な意義の方が、投資資金の募集より格段に大きい。

   それは、第1に経済面で、海外投資家の投資意欲を通じて中国経済の先行きアピールをすることに意味があった。これについて『ウォールストリート・ジャーナル』は、「中国は木曜日に記録的に低い利率で20億米ドルの債券を発行したが、そのレベルは米国国債より若干高くなったにすぎない。これは、投資家が世界第2位の経済体の財政に信頼を寄せた結果である」と論評した。

   第2は政治面で、党大会が閉幕した翌日のこの行動は、欧米資本主義システムの重要な構成部分と見なされる3大格付け機関に対する直接的な反撃であり、世界に中国の力量を見せつけたことである。

   中国は今回、20億米ドルという小金を使って、国際資本の中国に対する予想を覆したということになる。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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