2018年 5月 28日 (月)

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
国会論戦で注目 裁量労働の考え方

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   裁量労働をめぐる厚労省の不適切なデータが問題になって、国会が盛り上がっている。

   2018年2月19日の衆議院予算委員会において、加藤勝信厚労相は、平均的な残業時間について、一般労働者と裁量労働者で異なる基準で質問した不備を認め、謝罪した。今後は、関係法案をいつどのように出すかという政治問題になっている。法案内容は、残業時間上限、高度プロフェッショナル制度、裁量労働の拡大だ。

適用除外対象者はアメリカで2割、フランスで1割...

   野党は、6党で反対姿勢である。衆院では旧民進党が3分裂して、その中で希望の党の動向が注目されたが、やはり組合の支持を得たいのか、先祖帰りして、徹底抗戦である。

   労働は、教育と並んで誰でも議論に参加できる話題だ。そして、個人の体験に基づく意見がでて、百家争鳴となりやすい。

   フェアになるよう筆者の経歴をいえば、役人時代二十数年、民間で大学教授十余年で、前者では労働基準法適用除外(いわゆるホワイトカラーイグゼンプション)、後者では裁量労働である。

   労働時間規制の縛りを受けていなかったわけで、日本ではかなり珍しい経歴だ。日本では、欧米における適用除外対象者の労働者に対する割合は、アメリカで2割、フランスで1割、ドイツで2%程度といわれている。日本で、この数字をみるのは難しい。労働時間でいえば、管理者は含まれないが、それ以外は基本的に労働基準法の対象である。ただし、現業を除く国家公務員は基本的に適用除外である。となると、日本での適用除外者は、現業を除く国会公務員50万人程度ということになる。それ以外のほとんどのサラリーマンは労働時間管理で労働基準法の適用になっているというのが建前だ。

   そこで、裁量労働が議論になると、一応労働基準法の対象であるが、残業時間はみなし労働時間となって定額になる。裁量労働が拡大すると聞いただけで、まるで自分も裁量労働者になるような感じだろう。現状で残業時間分の残業手当をもらっていないとなると、その状態が合法化されると思う人は多いのではないか。

厚労省が追加したい裁量労働業務は2つ

   現在、裁量労働者の割合は1~2%である。この意味で筆者の境遇は珍しい。裁量労働者にとって、自分の労働時間はよくわからない。論文一本を書くのに必要な時間なんてよくわからない。裁量労働とは、かけた時間がわからない業務だ。だから、そうした業務を行う人は少ない。

   それを無制限に拡大するというのなら、裁量労働の濫用である。ここで、我々がどのよう雇用状況なのか、まず確認してみよう。確認できない場合は違法契約のおそれもあるので労働基準監督署へ行ったほうがいい。

   確認出来た場合、自分が裁量労働者かどうか調べてみよう。適法な裁量労働者は1~2%なのでそれほど多くない。もし、適法な裁量労働者ではないにもかかわらず残業代が少ないと思うなら、これも労働基準監督署に行ったほうがいい。

   違法な裁量労働、違法な残業代不払いは、今の法律の下でしっかり取り締まるべきだ。それとともに、労働時間を計れない業務もあるので、それを適法な裁量労働として追加するのは合理的だ。ちなみに、厚労省が追加したい裁量労働業務は2つだ(「課題解決型の開発提案業務」と「裁量的にPDCAを回す業務」)。

   労使の合意がないと企業として裁量労働を採用できない。人手不足を背景として、みなし労働時間の単価をいくら以上と決めて労使交渉すれば、裁量労働を導入する企業はどうなるか。今なら単価を高めても採用したくなるだろう。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「大手新聞・テレビが報道できない『官僚』の真実」(SB新書)など。


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