2018年 5月 24日 (木)

三菱重工の「異例」社長人事 「なりふり構わぬ」経営立て直し策

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   三菱重工業の宮永俊一社長が業績悪化の中で、同社社長としては異例の在任6年目に突入する。開発が遅れる国産ジェット旅客機「MRJ」の納入契約で初のキャンセルが出るなど逆風がやむ気配はなく、三菱自動車株の売却などなりふり構わぬ経営立て直しに取り組むことになる。

   宮永社長は2018年2月6日、都内で開いた決算記者会見で、「今は大きな問題に会社全体で取り組む『戦闘状態』にある。早期に対策のめどをつける」と、続投への決意を語った。

  • MRJ開発の視界は…(写真は三菱重工公式サイトより)
    MRJ開発の視界は…(写真は三菱重工公式サイトより)

開発が大幅に遅れている国産ジェット旅客機「MRJ」

   三菱重工は、社長任期は5年までというのが事実上の慣例になっている。戦後の財閥解体で分割された3社が1964年に再結集した「三重工合併」以降、5年超の在任は相川賢太郎氏(在任1989~1995年)だけ。宮永氏はこの「記録」を24年ぶりに破ることになる。

   この日発表した2017年4~12月期連結決算は、売上高が前年同期比5.8%増の2兆8514億円、営業利益は同16.9%増の800億円。受注高は前年同期比3%減の2兆5776億円にとどまった。18年3月期通期の業績予想を据え置いたが、17年10月に通期の連結純利益を、前期比14%増の1000億円予想から9%減の800億円へと大きく下方修正しており、厳しい状況に変化はない。

   部門別では、世の中の注目度も高いのが「航空・防衛・宇宙」部門で、2018年3月期の受注高は前年比4割近く少ない6000億円にとどまる見通しだ。足元では防衛関連の航空機の低迷が響いているほか、開発が大幅に遅れている国産ジェット旅客機「MRJ」の視界が開けない。

   MRJは商業運航に向けて当局の承認をなかなか得られず、納期を5度延期。航空会社への納入開始は当初予定より7年遅れ2020年となっている。この1月末には米イースタン航空が予約していた最大40機のキャンセルを発表している。イースタン航空の事業を買収した米スウィフト航空が契約を引き継がなかったもの。受注は全体で約450機といい、その1割近くを失った痛手は小さくない。宮永社長は2016年秋からMRJ事業を社長直轄として現場に発破をかけ、「試験飛行機の製造を追加で始めるなど、1年で着実な進歩があった」と強調するが、これ以上開発が遅れ、またキャンセルが増えるようなことになれば、社長としての責任問題に発展しかねない。

主力「パワー」部門の苦境

   ただ、注目されるMRJもさることながら、事業として一番苦しいのは、売上高全体の4割を占める主力の「パワー」部門。火力発電機器を中心とする事業だが、一時期ブームだった石炭火力発電も期待に反して低迷するなど、宮永社長も「火力発電市場は構造的に厳しい。苦しい状況は少し長くなるのでは」と認める。パワー部門の2018年3月期の受注見通しは前年比2700億円少ない1兆4500億円と苦しんでいる。

   宮永社長はこの間、事業再構築に様々に取り組んできた。祖業である造船事業を分社し、この1月に「三菱造船」(本社・横浜市)を設立。豪華客船の建造で大赤字を出すなどの痛手を受けた事業の立て直しに取り組む。

   また、最新のトピックスでは、保有する三菱自動車株(保有比率9.9%=間接保有を含む)のうち8.5%分を、三菱商事のTOBに応募する形で売却することも明らかになった。これにより950億円の資金を得るという。三菱自はもともと三菱重工の一部門が独立した。燃費不正など不祥事が重なり、三菱東京UFJ銀行を含む3者で支えてきたが、三菱商事主導で資本関係を整理することになった。三菱重工にとっては、売却で得られる資金をいかに成長に生かせるかが問われることになる。

   逆風が収まらない中の異例の続投だが、日経新聞が大きく報じたほか、朝日、毎日など一般紙は決算発表の記事でMRJに焦点を当てた書きぶりで、社長続投には記事の中で軽く触れる程度という扱いが目立った。

   組織再編や事業の選択と集中といった改革を断行してきた宮永社長。これから1年、さらに成果を積み上げ、次世代にバトンタッチできるか、正念場が続く。

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