2018年 8月 20日 (月)

出社なしで辞められる「退職代行」話題に 何ができるの?運営会社に聞くと...

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   「明日から会社に行かなくてOK!」――。こんな過激な売り文句が公式サイトに並ぶ「退職代行サービス」が、インターネット上で注目を集めている。

   2017年春にサービスを開始した「EXIT(イグジット)」のことだ。電話やLINEで依頼者の希望を伝え、料金を振り込むだけで、退職にあたっての会社とのやり取りを全て任せることができるという。なんと、「即日」での対応も可能だそうだ。

   具体的には、どんな人が退職代行を利用するのか。そして、この斬新なサービスを始めた狙いはどこにあるのか。J-CASTニュースが、運営会社代表の新野俊幸氏(28)、岡﨑雄一郎氏(29)に取材した。

  • 退職代行サービス「EXIT」公式サイトより
    退職代行サービス「EXIT」公式サイトより

「第三者が間に入ることでスムーズに」

   「EXIT」は退職時に必要な連絡を仲介するサービスだ。価格は会社員が税込5万円、アルバイトが同4万円。「ネクストサポート」と題し、2度目以降の利用は1万円の割引となるキャンペーンも実施している。

   具体的に、退職代行では何をするのか。18年7月13日の取材に対し、新野氏は、

「こちらは『退職をしたい』という依頼者の意思や希望を、本人に代わって会社へ通知するだけです。逆に、会社からの連絡もこちらが間に入って本人へ伝えます。交渉事は一切しません」

と説明する。

   退職が完了するまでの連絡の仲介は回数無制限。必要であれば、会社側に対して「本人には連絡をしないように」と伝えて貰うこともできる。退職届や保険証などのやり取りは郵送でも可能なため、依頼後に出社する必要もないわけだ。

   新野氏によれば、依頼者の傾向は大きく2パターンに分けられる。まずは、本人が退職の意思を言い出せないケース。例えば、上司に恐怖心を抱いていたり、本人が入社直後だったりする場合だ。

   もう1つが、本人が退職を申し出ているにもかかわらず、会社側から拒否されているケースだ。こうした場合での代行業務について新野氏は、「第三者が間に入ることでスムーズに話が進む場合が多いです」。その上で、

「依頼者に対しては退職を拒否するような強い態度が取れても、代行業者の我々に対して同じことを言うのは難しいのでしょう」

と話した。過去に、退職が成立しなかった依頼は1件もないという。

依頼の多い業界は「介護、建設、飲食」

   代行作業にあたって、会社側とトラブルになることはないのだろうか。新野氏と共に代表を務める岡崎氏は、

「ごくたまに、ご理解を頂けない会社の担当者から責められることはあります。ですが、大きなトラブルに発展したことはありません。基本的に、こちらは本人の意思を代わりに伝えるだけですので」

とも話していた。

   顧問弁護士と契約し、代行プロセスに法的な問題がないかどうかも確認済みだ。EXIT側で会社と交渉をしないルールも、弁護士の指導によるものだ。また、弁護士と契約することで、依頼者の信頼を得るための狙いもあるという。

   なお、EXITがこれまでに代行した退職は約500件。依頼者は20代~40代が中心で、男女比は半々ほど。アルバイトよりも正社員からの依頼が多い。なかには、50代の依頼者もいたという。職種などの特徴について2人に聞くと、

「多いのは介護、建設、飲食。『ブラック』『人手不足』といったイメージも聞かれる業界ですが、依頼者の話を聞いていても、確かにそうした側面が強いように感じます。実際、『上司が怖いので言い出しづらい』『人手が足りないので辞めにくい』といった依頼も本当に多いですから」

という。

   こうした現状があるだけに、代行作業にはスピード感を重視しているという。過去には、会社に向かう途中の社員から「もうギリギリの状態で出社ができないので、一刻も早く退職の連絡をして欲しい」との依頼を受けたこともあるそうだ。

退職代行を始めたきっかけは...

   ところでなぜ、退職代行サービスを始めようと考えたのか。新野氏は「私自身もこれまでに3社を退職していまして、その度に実は...『本当に面倒くさいなあ』と感じてしまったんです」として、次のように話す。

   「最初に辞めたのはソフトバンクという会社でしたが、退職が決まるまでに人事、課長、部長、統括部長、本部長との面談があって、かなりのエネルギーが必要だったんです。正直、『辞めるだけなのに、なんでこんなに大変なんだ!』と思いました。

   また、同世代の社会人と話していても、『会社は辞められない』と勘違いをしている人が多いように感じます。退職は『裏切り』というイメージも未だにあるでしょう。だから、もっと退職を身近で手軽なものにできないかと考えて、このサービスを始めたんです」

   こうした立ち上げの狙いを語ったうえで、新野氏は「もう1点、サービス開始後に強く感じていることがあります」と付け加える。退職の代行を利用する人に対して、「そんなことも自分で言えないのか」と否定的に感じる人もいるはずだとして、

「『そんなこと』すら言えない状況にしてしまっているのは、会社にも責任があります。部下と良好な関係を築くことは、上司の仕事ですよね。いわゆるブラック企業に入ってしまって、本人は辞めたいと悩んでいるのに、周囲の問題でそれができない。そういった若者を救うお手伝いができれば、とも考えているんですよ」

と話していた。

   なお、「EXIT」がネット上で注目を集めたのは、サービスの利用者が18年7月上旬にツイッターへ体験談を投稿したことがきっかけ。一連の投稿が、「5万で全部やってくれるんなら確かに楽かも」「これ流行るんじゃない?」と大きな話題を集めたのだ。

   こうした反響について岡崎氏は、「本当にSNSで話題になった影響は大きくて、今はほとんど一日中電話が鳴りやまないような状況です」と嬉しい悲鳴を上げていた。

   この退職代行サービスを利用する際に、注意する点などはあるのか。

   J-CASTニュースが、労働問題に詳しいアディーレ法律事務所の中西博亮弁護士に取材すると、「違法ではないですが、気になった点は、(編注・EXIT公式サイト内の)『よくある質問』の中の『会社から訴えられませんか?』の部分です」。その上で、

「突然『今日辞めます』などと引き継ぎもなく辞めてしまい、会社側に損害が生じた場合、会社から損害賠償請求されることが絶対にないとは言い切れません。退職する従業員の従事する職務内容、会社に対する地位によってはいきなり退職することで会社に大きな損害が生じ、実際に損害賠償請求される可能性もあるので、その点は注意が必要です」

としていた。

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