女子体操の宮川紗江選手(18)に暴力を振るったとして、日本体操協会から無期限の登録抹消処分を受けた速見佑斗コーチ(34)が、東京地裁に指導者の地位保全を求める仮処分申し立てをしたものの取り下げたことについて、同時間帯にテレビ番組でコメントした識者の評価が二分した。バルセロナ五輪銀メダリストで協会理事の池谷幸雄氏(47)は、号泣しながら「気持ちを考えると早く復帰させてほしい。それだけです」と速見氏に同情。一方、全日本柔道連盟評議員で日本女子体育大学教授の溝口紀子氏(47)は、「宮川さんを切り捨て、自分の保身に走ったような印象を持ちます」と批判的だ。「相当悩んだと思います」速見氏は2018年8月31日、代理人弁護士を通じた文書で、仮処分申し立ての取り下げを発表。「もとを正せば私の行動により一番被害を受けているのが宮川選手です。しかしながら宮川選手が一番望んでいることが私の指導の復帰です」とし、「私がすべきことは処分を不服として争うことではなく、処分を全面的に受け入れ反省し、それを皆様に認めてもらった上で、一刻も早く正々堂々と宮川選手の指導復帰を果たすことが選手ファーストだという結論に至りました」と、無期限登録抹消処分を受け入れる意向を示した。池谷氏は31日の「バイキング」(フジテレビ系)に出演し、この速見氏の文書が読み上げられると、声を詰まらせ、口を押えて涙した。どうにか言葉を発すると、「どういう思いで取り下げるのか、相当悩んだと思います。宮川選手の指導を、どうしたら早くできるか、それが一番望んでいること。そのために、どれが一番正しいかの選択を、相当考えたと思います」と速見氏の葛藤を慮った。嗚咽をもらしながら、「でも、これしかないと思ってこうした(仮処分申し立てを取り下げた)と思います。その気持ちを考えると、早く復帰させてほしい。それだけです」と、速見氏の決断を評価した。「速水コーチのブレが見て取れます」協会が速見氏への処分を発表したのは15日。その後、同氏の指導を受けてきた宮川選手が29日に会見を開き、暴力があったことは認めながら「処分内容は重すぎる」と軽減を求めるとともに、「引き続き指導を受けたい」と表明した。一方で、協会の塚原千恵子・女子強化本部長(71)が処分に関与していたことを指摘し、「権力を使った暴力。パワハラだと思う」と告発。宮川選手側と塚原氏側との対立構図が表面化している。速見氏に同情的だった池谷氏に対し、同時間帯に放送された「ひるおび!」(TBS系)に出演した溝口氏の見方は違った。「この文書が出されて2つの論点が出てきた」とし切り出し、速見氏についてまず、「協会側になびくというか、宮川さんを切り捨てて、自分の保身に走ったような印象を持ちます」と批判的な見解を示した。協会は30日に副会長の塚原光男氏・千恵子氏夫妻が不参加の会議を開き、第三者委員会を立ち上げて夫妻のパワハラの調査をすると発表している。そこで溝口氏はもう1点目として、「第三者委員会で暴力を含めて調べるということで、改めて精査してもらえるから、『ここでは協会を敵にしない方がいいな』と、『協会と一緒に第三者委員会で協力した方が得策ではないか』と考えたか」と推測した。その上で、「でもなぜ今更、というのはある。速水コーチのブレが見て取れます」と速見氏の姿勢に疑問を投げかけた。協会は、速見氏からの仮処分申し立ての通知を23日に受けたことを発表している。池谷氏と溝口氏の見解の相違は一部ネットユーザーも着目していた。ツイッターでは、「バイキングでは速見コーチの取り下げ表明文を肯定的に扱ってたのか? ひるおびでは溝口教授が『コーチは保身に走ってる卑怯だ逃げだ』と頭ごなしに批判してたよ」「速見さんの謝罪文、バイキングでは絶賛されてるけど、ひるおびでは批判されてたよ。宮川選手が戦おうとしてるのに速見さんは取り下げるの!?って。難しいね」といった声があがった。
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