2024年 4月 24日 (水)

吉野家が中国で「ザリガニ丼」売り出した理由 海外800店舗を実現したローカライズ戦略

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   あなたは、「ザリガニ」を食べたことがあるだろうか。記者は先日、初めて口にする機会があった。エビと似ているがまた違い、思ったよりは臭みもない。なかなかの珍味である。

   どこで食べたかというと――「吉野家」だ。

   と言っても、日本の吉野家ではない。中国・深センの店舗である。実は吉野家は年々、海外での展開を広げ続けている。その規模は、近い将来に国内を越える可能性も。その拡大を支えているのが、各地独自のオリジナルメニューである。

  • 中国・深センの吉野家で販売されていた「ザリガニ丼」。濃いめの味付けがご飯と合う
    中国・深センの吉野家で販売されていた「ザリガニ丼」。濃いめの味付けがご飯と合う
  • 店頭に貼られていたポスター。「ザリガニ」の文字も
    店頭に貼られていたポスター。「ザリガニ」の文字も
  • 深センの別の料理店で食べたザリガニ料理。殻ごとむしゃむしゃと食べる。味付けはやはりピリ辛が主流で、おつまみにぴったり
    深センの別の料理店で食べたザリガニ料理。殻ごとむしゃむしゃと食べる。味付けはやはりピリ辛が主流で、おつまみにぴったり
  • 中国・深センの吉野家で販売されていた「ザリガニ丼」。濃いめの味付けがご飯と合う
  • 店頭に貼られていたポスター。「ザリガニ」の文字も
  • 深センの別の料理店で食べたザリガニ料理。殻ごとむしゃむしゃと食べる。味付けはやはりピリ辛が主流で、おつまみにぴったり

中国で巻き起こる「ザリガニブーム」

   2018年8月。中国最大のIT都市・深セン。旅先の街角で、お馴染みのオレンジの看板を見つけた。

「へ~、こんなところにも吉野家が......」

   何気なく近づいてみて驚いた。メニューを張り出したポスターに、カタカナで「ザリガニ」の4文字が躍っていたからだ。

   実は中国では近年、「ザリガニ」料理ブームが巻き起こっている。食べられるのは、日本でもおなじみのアメリカザリガニだ。日本人の感覚では「ゲテモノ」という印象が強いが、もともと米国などでは一般的な食材である。中国には日本経由で持ち込まれたともいわれ、今やその養殖は一大産業だ。ここ最近、「小龍蝦(小さいイセエビ/ロブスターの意)」の呼び名で本格的に売り出され、人気食材の座をつかんだ。

   翌日、お店を再訪し、件の「ザリガニ丼」を頼むことにした。お重入りで、小エビほどのサイズに調理されたザリガニ肉が、トウモロコシとともにピリ辛に仕立てられている。お値段は36元(約600円)、近所の相場からすればやや高級路線だ。

   口に運んでみる。肉の味は、割合に淡泊だ。食感も、エビのような弾力はない。シャコあたりが近いが、日本人の舌にはちょっと味わいが物足りない。だがそれがかえって、こちらの麻辣な調理法にはしっくり来る。臭みも、この味付けなら気にならない。米の飯ともしっかり合う。ゲテモノなんてとんでもない。日本の吉野家に並んでも、人気メニューになりそうだ(もちろん、抵抗はあるだろうが......)。

テリヤキに角煮、ラーメン...海外吉野家の独自展開

   吉野家ホールディングスの広報担当者によれば、この「ザリガニ丼」は、上述したようなザリガニ料理ブームを取り入れ、北京エリアで独自に開発したメニューだ。あくまで「お試し」としての投入で、9月以降は順次販売終了となったというが、こうした「現地オリジナル」のメニューは、ザリガニ丼に限った話ではない。

   たとえば、海外進出の先駆けとなった米国では、1985年から「テリヤキチキンボウル」を販売、ヘルシーなイメージが受け大ヒット商品に。中国でも、出店当初の90年ごろは牛肉への馴染みが薄かったことから、豚の角煮を使った「東坡飯」を販売した。ほかにも各国の吉野家のメニュー表を見ると、ラーメンや鶏カツ丼、天ぷらなど、日本とは趣の違った、バリエーション豊かな商品が並ぶ。

   直営、フランチャイズと、エリアによって経営形態の違いはあるが、

「牛丼は日本のレシピを変えずに各エリアで提供していますが、その他のメニューについては、現地の食文化にあわせて各エリアが新商品開発を行っています」(吉野家ホールディングスの広報担当者)

あくまで現地のお客が最優先

   日本の吉野家に慣れた目からは、こうしたラインアップは時に奇異に見える。だが、海外の吉野家のお客は、日本人ではない。現地に暮らす人たちである。

   それを象徴するのが、「牛丼の味の違い」のエピソードだ。

「日本の方が海外で吉野家の牛丼を食べた際、なんか味が違うと思うと言われます。これは、牛丼のたれは吉野家オリジナルですが、現地の米、水、現地のたまねぎなどで煮込むことで、日本とまったく同様にはならず、現地の味が出来上がるからです」(広報担当者)

   特に米を主食とする地域では、現地で食べられる米に合わせないと、受け入れてもらうのは難しい。「主力の顧客でない日本人がどう感じるかでなく、現地のお客さまが美味しいと思う商品を提供し続けるため、現地の意見を大切にしています」と担当者は言う。

   メニューに限らず、店の作りも現地の事情に合わせている。たとえば記者が訪れた深センの店舗は、日本流のカウンター席ではなく、フードコートのようなテーブル&セルフサービス式だった。実際、米国や台湾への進出当初はカウンター席を導入したものの、現地では受け入れられず、すぐにテーブル席に改装したこともあったという。

   海外1号店を米デンバーに開店して43年。着実にその勢力を伸ばし、8月時点で米国、中国、台湾、インドネシアなどに829店舗を数える。10年前の2倍以上だ。さらに2019年からの3か年で、国内の店舗数(8月時点で1205店)を追い抜くことを目指す。

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