2020年 2月 24日 (月)

岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 
日本の記者に大統領は本当に無礼だったのか

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恣意的に切り取られる言動

   この記者会見ではトランプ氏が、英語が母国語ではない別の記者に対しても、「言っていることがわからない」と伝えたことから、「差別的だ」、「アクセントのある妻メラニアの英語は、理解できるのか」、「このトランプの対応が世界中に流されたと思うと情けない」といった批判が相次いだ。

   一方で、米国ではトランプ氏を擁護する声もあがっている。

「トランプは本当に聞き取れなかったのだろう」、「私もこの日本の記者が何を言おうとしているのか、理解できなかった」、「日本の記者が質問することなど滅多にないので、せっかくならもう少し英語をうまく話せる人に質問してほしかった」

   全世界に記者会見の様子が流れるなか、あの場で挙手するのはかなり勇気のいることだし、英語で質問するのは、相当、緊張するだろう。おそらくそれもあって、日本の記者の英語は聞き取りにくかった。focusの「f」が「h」であるなど日本語なまりが強い。

   米国に住んでいるとよく感じるが、私たち日本人にはほとんど同じように聞こえる発音でも、相手にはまったく伝わらないことがある。また、日本人にありがちなように、記者の質問が漠然としていて具体的でなかった。

   トランプ氏は記者の質問を、本当に理解できなかったのではないかと思う。実際、「わからない」と言ったあとで、一生懸命に聞き取ろうとしているように見える。

   彼が思い切って挙手したため、日本の記者が質問する絶好の機会を与えられたのだから、トランプ氏が触れた日米間の自動車貿易の不均衡について、右ハンドル車など日本のニーズに合わせる米企業の努力の欠如を指摘するなど、もう少し具体的に突っ込んだ質問をしてほしかった。トランプ氏ばかりか米国民、そして世界中の人たちに、日本の立場を理解してもらうきっかけになったかもしれない。

   今回の記者会見では、トランプ氏が米国のメディアと口論する場面もあった。CNNテレビの記者が、中米からの移民集団は「侵略者ではない」と抗議。トランプ氏が次の記者に質問を移そうとするのをさえぎり、さらに「ロシア疑惑で起訴の懸念はあるか」と続けた。トランプ氏の指示に従い女性スタッフがマイクを取り上げようとすると、抵抗。質問を繰り返した。トランプ氏が「CNNは君を雇っていることを恥じるべきだ」と非難。記者は会見後、取材記者証を一時、取り消された。

   CNNの記者に対するこの処分は行き過ぎだと感じるが、トランプ氏がらみの報道では、非難一辺倒の偏った情報が流れることに疑問を感じる。発言は一連の流れの中でなされるもので、前後関係やその場の雰囲気やニュアンスも伝えなければ、誤解を生むことになりかねない。

   紙面や放送時間の制約はあるが、トランプ氏の場合はとくに彼の過激な言動だけが恣意的に切り取られ、メデイアの意図に沿って報道されることが多いのではないだろうか。

(随時掲載)

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計37万部を超え、2017年12月5日にシリーズ第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

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