2019年 8月 20日 (火)

復活の新谷仁美、記者が見た「成長の証」 空白の4年間で得たものとは

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   東日本女子駅伝が2018年11月11日、福島市信夫ケ丘競技場発着9区間(42.195キロ)で行われ、東京が2時間18分44秒で10年ぶり9度目の優勝を飾った。東京のアンカーを務めた新谷仁美(30)が、トップとの1分35秒差を一気に逆転。4年ぶりに現役復帰を果たした元女子1万メートルの女王が2020年東京五輪に向けて完全復活を果たした。

   異次元の走りだった。最初の1キロを2分50秒台で入り、そのままのハイペースで前方のランナーを次々と抜き去った。8キロ過ぎにトップの玉城かんな(長野代表)をあっさりとらえ、ペースを落とすことなくゴールした。

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「高橋尚子2世」として将来嘱望

   先月21日に行われた全日本実業団対抗女子駅伝予選会で、岩谷産業の第2区を務めた飯田玲(岩谷産業)が残り200メートルで走ることが出来なくなり、流血しながら四つんばいになってゴール。また、三井住友海上の第3区、岡本春美(三井住友海上)がレース中に脱水症状で途中棄権するなど、大きな話題を呼んだ。

   同予選会の事件に関しては賛否が分かれる論争が繰り広げられたが、女子駅伝界にとって決して明るいニュースではなかった。そのような中で新谷の復活劇は、女子駅伝界のみならず陸上界における明るいニュースだった。

   興譲館高時代、全国高校駅伝のエース区間の1区で3年連続区間賞を獲得。インターハイ3000メートル優勝、世界ユース銅メダルなど、五輪でメダルを獲得出来る選手として将来を嘱望された。

   高校卒業後、女子マラソンの名匠、小出義雄氏が率いる豊田自動織機(佐倉アスリートクラブ)女子陸上部に入部。165センチの恵まれた体格と1万メートルで世界に引けを取らないスピードを持つ新谷は「高橋尚子2世」と呼ばれた。

25歳で引退...OLしながら執筆活動

   社会人1年目の2007年2月、初マラソンとなった東京マラソンで2時間31分01秒の記録で初優勝を果たし、その後はマラソン、1万メートルと両軸で活躍し、2012年ロンドン五輪では女子1万メートル代表で出場した。

   ロンドン五輪では9位に終わり入賞こそ逃したが、序盤、積極的な走りで堂々と世界と渡り合った走りは高く評価され、2016年リオデジャネイロ五輪でのメダル獲得が期待されていた。

   そのような中で2014年1月に突然、引退を表明し、表舞台から姿を消した。右足の故障が思うように回復しないとのが引退の大きな理由だったが、25歳の若すぎる引退に陸上界から惜しむ声が多く上がった。

   現役を引退後、新谷は都内の会社でOLとして勤務した。事務仕事をこなす傍ら、スポーツ系のWEBサイトで陸上関連の記事を執筆。女子駅伝、箱根駅伝などの駅伝をはじめとし、シーズン中には地方の競技場を訪れ、外から競技を分析、リポートした。

   当時、記者はWEBサイトの編集長として新谷の原稿をチェックする立場にあった。新谷の指摘は正確で厳しくもあった。そして彼女が一番嫌ったのは「駆け引き」をする選手だった。世界選手権でも五輪の舞台でも常に自分のペースで走り、時には無謀ともみられるスタート直後からの独走もまた、「駆け引き」を嫌う彼女の信念からくるものだった。

走ることが嫌いで「もう二度と走ることはない」

   「走ることが嫌い」。これが新谷の口癖だった。現役時代から走ることが楽しいと感じたことがないと言っていた。ただその一方で、「走ることは仕事だから、走るからには必ず結果を出す」とも言っていた。

   競技に対してはどこまでもストイックだった。レースでは体重バランスが崩れるとして、腕時計やネックレスは一切着用せず、マニュキュアさえも塗ることはなかった。はたから見れば、そのストイックさは危うささえ感じさせるものだった。

   昨年5月にそれまで勤務していた会社を退職した。競技に復帰することは誰にも伝えずに会社を去っていったが、この4年間、陸上から離れ、外から冷静に競技と向かい合った結果、復帰の道を選択したのだろう。

「私は一度羽ばたき終わった人間なんですが、もう一度羽ばたけるように頑張りたい」

   走ることが嫌いで、「もう二度と走ることはない」と言っていた新谷が、空白の4年間で得たものは...。笑顔でゴールテープを切った新谷の耳たぶに金色のイヤリングが光っていたのが、成長の証だったと思う。

(J-CASTニュ-ス編集部 木村直樹)

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