2019年 7月 21日 (日)

望月衣塑子記者の質問に、菅長官が語気強めた瞬間 会見場で何が起きていたのか

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   平日に2回行われる菅義偉官房長官の定例会見をめぐり、東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者とみられる「特定の記者」が「問題行為」を行っているとして、会見を主催する官邸の記者クラブ(内閣記者会)に対して「問題意識の共有」を求める文書を首相官邸が送った問題。

   官邸は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事の際の土砂投入をめぐる望月記者の質問をめぐり「事実誤認」があったと主張しているが、望月記者は菅氏らが現地の状況を自ら確認し、土砂の検査結果を沖縄県に出すように指示すべきだ、などと反発している。

   これまでもたびたび、その激しい応酬が注目を集めてきた望月記者と菅氏。会見場では、いったい何が起きていたのか。

  • 官房長官会見で挙手する東京新聞社会部の望月衣塑子(いそこ)記者(写真右、2017年6月撮影)
    官房長官会見で挙手する東京新聞社会部の望月衣塑子(いそこ)記者(写真右、2017年6月撮影)

「記者会見の意義が損なわれることを懸念」

   官邸が特定記者の質問について申し入れするのは異例。文書では「東京新聞の特定の記者」と名指しを避けているが、問題視している質問からすると、これまでも菅氏に厳しい質問をぶつけている望月衣塑子(いそこ)記者のことを指すことは明らかだ。

   文書は2018年12月28日、上村秀紀・官邸報道室長名で出された。12月26日の記者会見での望月記者の質問について、「事実誤認等」があったとする内容。望月記者について

「東京新聞側に対し、これまでも累次にわたり、事実に基づかない質問は厳に慎んでいただくようお願いしてきました。これに対し、同社からは、事実に基づく的確な質問を心掛けるよう同記者を指導していく旨の回答を繰り返し頂いてきましたが、にもかかわらず、再び事実に反する質問が行われたことは極めて遺憾です」

などと非難。「事実に反する質問」が動画で流れることで「官房長官記者会見の意義が損なわれることを懸念」するとして、「問題意識の共有」を求める一方で、

「記者の質問の権利に何らかの条件や制限を設けること等を意図したものではありません」

と主張している。

問題視のきっかけとなった「赤土」問答

   官邸が問題視したのは米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事をめぐる質問。望月記者は

「民間業者の仕様書には沖縄産の黒色がんずりとあるのに、埋め立ての現場では今、赤土が広がっています。琉球セメントは県の調査を拒否しており、沖縄防衛局は実態を把握できていない、としています。埋め立てが適法に進んでいるか、確認ができておりません。政府としてどう対処するおつもりなんでしょうか」

と聞いたのに対して、菅氏は「法的に基づいてしっかり行っています」。望月記者は

「適法かどうか確認していない、ということを聞いているんですね。粘土分を含む赤土の可能性が指摘されているにもかかわらず、発注者の国が事実確認をしないのは、行政の不作為にあたるのではないか」

と、質問と答えがかみ合っていないことを指摘すると、菅氏は「そんなことはありません!」と語気を荒げた。そこに望月記者が

「それであれば、政府として防衛局にしっかり確認をさせ、仮に赤土に割合が高いのなら改めさせる必要があるんじゃないですか」

と重ねると、菅氏は「今答えたとおりです」とのみ反応して会見場を後にした。

本人も菅長官に「ご自分の目で確認し...」

   官邸は「赤土が広がっています」「琉球セメントは県の調査を拒否」「沖縄防衛局は実態を把握できていない」という望月記者の発言について、それぞれ(1)現場では埋立区域外の水域への汚濁防止措置を講じた上で工事を行っている(2)琉球セメントは沖縄県による立ち入り検査を受けている(3)沖縄防衛局は埋立工事前に埋立材が仕様書どおりの材料であることを確認している、などと反論。これらを根拠に望月記者が「事実誤認」だと主張しているが、異論も出ている。

   国民民主党の山井和則国対委員長代行は2月6日、上村秀紀・官邸報道室長らに対するヒヤリングを行い、直後に記者団に対して埋め立て現場の写真をタブレット端末で示しながら

「これはどうみても赤土。これを事実誤認だと言われると、記者も質問しづらくなるのではないか」

と話した。望月記者はこの問題を2月7日午後の記者会見で取り上げた。自身が質問を始めると、すぐに司会者から「質問は簡潔にお願いします」「質問に移ってください」といった声が飛ぶという「質問妨害」にも言及しつつ、

「この文書は私や社への精神的圧力のみならず、知る権利を阻害する行為ではないのか」
「政府が事実誤認と言うのであれば、菅長官や長谷川氏(編注:長谷川栄一内閣広報官)自身が現場に行き、赤土が混じっているかご自分の目で確認し、(沖縄)防衛局に『数年前のものではなく、投入中の土砂の性状検査の結果をすぐに県に出せ』と指示すべきではないのか」

などと主張。西村康稔官房副長官は

「いずれにしても建設的なやり取りができればと思いますし、できる限り政府としては、色々な質問にお答えしていく」

と応じた。

   副長官が代理出席した場合を含むと、19年1月に34回行われた官房長官記者会見のうち、望月氏は11回で質問。質問数は関連質問を含めると21問におよび、そのうち13問が辺野古移設に関連するものだ。

自らの主張を織り交ぜながら質問

   官房長官会見の質問では、事実関係や見解を確認するにとどめる記者が大半だが、望月記者は自らの主張を織り交ぜながら質問するのが特徴だ。1月17日午後の会見では、

「政府はなぜ、目で見て分かる赤土の問題を認められないのか」
「適法な手続きでやっているのであれば、正々堂々と、県が要求している調査を受けるべきではないのか」

などと主張。菅氏は

「法的に基づいて行っています。防衛局に聞いてください」
「正々堂々、法律に基づいて行っているという報告を受けている」

とのみ応じた。

   1月18日午前の会見では、県民投票をめぐり

「5市の投票不参加は、法の下の平等に違反するが、若者がハンストで抗議の意を示さざるを得なくなっている。この状況について政府の認識をお聞かせください」

などとして、投票不参加が違憲だと断定した上で質問。菅氏の答えは、「その方に聞いてください」と、まったくかみ合わないものだった。

   これ以外にも、同種類の質問であっても望月記者の質問だと答えない、と疑われる場面もあった。1月8日午前の会見では、埋め立て海域にあるサンゴの移設問題で、望月記者が

「報道では、埋め立て海域全体では7万4000群体の移植が必要だが、移植が終わったのは別海域の沖縄浜サンゴの9群体にとどまる、としている」

などと政府の見解を改めて求めたのに対して、菅氏は

「『報道によれば』に答えることは、政府としてはいたしません。どうぞ報道に問い合わせをしてほしいと思います」

と切り捨てた。だが、1月17日午後の会見で、時事通信の記者が

「厚生労働省の事務次官を処分する方向で検討している、という一部報道がありますが、事実関係をお願いできますでしょうか」

と事実確認を求めると、菅氏は

「現時点において、報道のような処分を決定したという事実はありません」

と答えた。

新聞労連「本来は官房長官が間違いを正し、理解を求めていくべき」

   今回の官邸による申し入れは、情報誌「選択」が2月1日にウェブサイトで指摘して広く知られるようになり、これを受ける形で、日本新聞労働連合組合(新聞労連)が2月5日付で

「政府との間に圧倒的な情報量の差があるなか、国民を代表する記者が事実関係を一つも間違えることなく質問することは不可能で、本来は官房長官が間違いを正し、理解を求めていくべきです。官邸の意に沿わない記者を排除するような今回の申し入れは、明らかに記者の質問の権利を制限し、国民の『知る権利』を狭めるもので、決して容認することはできません。厳重に抗議します」

とする抗議声明を出している。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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