2019年 11月 23日 (土)

守りたいのは「報道の特権の自由」? 望月氏のため「立ち上がる」記者たちの陰にメディア間の「分断」

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   菅義偉官房長官の定例会見をめぐって首相官邸が記者クラブ「内閣記者会」に対して「問題意識の共有」を求める文書を送るなどした問題で、2019年3月14日、首相官邸前で抗議集会が開かれた。

   集会は、新聞労連や民放労連でつくる「日本マスコミ文化情報労組会議」(MIC)が主催。現役記者や野党の国会議員ら600人以上(主催者発表)が集まり、知る権利や言論の自由を守ることを訴えた。ただ、国民の「知る権利」を担っているのは、日常的に官房長官会見に出席できる記者クラブ加盟社の記者だけではない。週に1度だけ会見に出席できるフリー記者からは、集会について冷ややかな声もあがり、メディア間の分断が際立つ形にもなっている。それはなぜなのか。

  • 抗議集会には600人以上が集まった(主催者発表)
    抗議集会には600人以上が集まった(主催者発表)
  • 集会の最後にマイクを持つ東京新聞社会部の望月衣塑子(いそこ)記者。「メディアが権力に厳しい質問をできなくなったとき、民主主義は衰退する」などと訴えた
    集会の最後にマイクを持つ東京新聞社会部の望月衣塑子(いそこ)記者。「メディアが権力に厳しい質問をできなくなったとき、民主主義は衰退する」などと訴えた

「社会部の記者であれば、ごくごく一般的」だと望月記者

   官邸が内閣記者会に送った文書では、東京新聞社会部の望月衣塑子(いそこ)記者による質問は「事実誤認」で、望月記者が「問題行為」を行っていると主張している。だが、質問が「事実誤認」かについては異論もあり、上村秀紀・官邸報道室長が、望月記者が質問を始めるのとほぼ同時に「簡潔にお願いします」「質問に移ってください」などといった声を出すことも「妨害行為」だとして問題化している。

   新聞労連の南彰・中央執行委員長(朝日新聞記者)は、集会で

「質問内容にまで政治見解を当てはめるような不当な行為は、一刻も早くやめさせなければならない」

と声をあげた。望月記者も集会の最後にマイクを持った。官房長官会見の質問では、事実関係や見解を確認するにとどめる記者が大半だが、望月記者は自らの主張を織り交ぜながら質問するのが特徴だ。望月記者は自らの質問のスタイルについて「政治部と全く違う聞き方」だとする一方で、

「おそらく長官は、(望月記者の登場までは)そのような質問を受けたことはなかったのではないか。しかし、私のような質問は、何も異常なことではなく、社会部の記者であれば、ごくごく一般的な質問だと今でも思っている」

とも主張。官邸が文書を出したことは

「私や社への精神的圧力にとどまらず、質問する他の記者への萎縮を招き、報道の自由、国民の知る権利を踏みにじる暴挙」

だとして撤回を要求し、

「メディアが権力に厳しい質問をできなくなったとき、民主主義は衰退する」

などと訴えた。

クラブ加盟記者とフリー記者の記事の価値は同じはずなのに

   官房長官会見は平日に2回開かれるが、ネットメディア(日本インターネット報道協会の加盟社)やフリーランスの記者が出席できるのは原則として金曜日の午後のみ。継続的に官房長官会見に出席している極めてまれなフリーランス記者が、政治ジャーナリストの安積明子氏だ。その安積氏は、今回の集会には批判的だ。

「内閣記者会加盟社の記者とフリーランスの記者では、記事の価値は同じはず。『報道の自由』と言いながら、今回の集会ではこの観点が全く抜け落ちている。報道の自由を享受するのは、記者ではなく国民であるはずなのに、会見に容易に参加できるクラブ加盟社記者の『お友達』を守る『報道の特権の自由』を主張しているに過ぎない」

   一応、新聞労連は10年に「記者会見の全面開放宣言」を出しており、委員長の南氏も集会で

「私は記者クラブに属していた記者のひとりだが、フリーランスの方を含めて幅広く、どういう記者会見であるべきなのか、国民・市民の知る権利はどういう形で守られるべきなのか、そのことを一緒になって考える場にしたい」

とも話している。だが、記者クラブはフリー記者の会見参加についてずっと否定的だったことから、安積氏は

「『表現の自由』を標ぼうして話を広げるにあたって、穴があったから取り繕っているにすぎない。南氏が、記者会見の開放について前向きな発言をしたことを(望月記者の事案が浮上するまでは)一度も聞いたことがない。都合がいいときだけ、われわれフリーランスを利用しないでほしい」

と反発している。

集会翌日、望月記者本人が菅氏に...

   翌3月15日午後の官房長官会見では、望月記者が抗議集会について見解を求めた。菅氏は

「集会の詳細は承知しておらず、政府としてはコメントは控えたい」

としたうえで、

「事実に基づかない質問をすることは、質問を見る限り個人的な主張を述べることが繰り返された場合、官房長官会見の本来の趣旨が損なわれる」

などと従来の政府見解を繰り返した。続いて望月記者は、米国の記者が「米国では、記者の問題意識をまず伝えた上で質問することは、ごくごく当たり前だ。日本では官邸の記者の質問の自由が狭められているのではないか」などと話したことを紹介して見解を求めたところ、菅氏は閣僚クラスが定例会見に臨むのは先進国では珍しいことを挙げながら、

「この事実だけ見ても、政府が国民の皆さんの知る権利をどれだけ重視しているかご理解いただけるだろうと思う。そういう中で、事実に基づかない質問を平気で言い放つ、そうしたことは絶対許されないことだと思う」

と語気を強めた。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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