2019年 12月 10日 (火)

全国で相次ぐ「地域電子通貨」発行 単なる「見せ物」に終わらせないためには...

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   企業や自治体がブロックチェーンなどのIT(情報技術)を活用した地域電子通貨を相次いで発行している。

  • 筑邦銀行が発行した地域電子通貨「常若通貨」(プレスリリースより)
    筑邦銀行が発行した地域電子通貨「常若通貨」(プレスリリースより)

あえてブロックチェーン採用、その狙い

   筑邦銀行(福岡県久留米市)は2019年8月23日、ブロックチェーンを活用した地域電子通貨「常若(とこわか)通貨」の提供を開始。利用第1弾として、同月23~25日に開催された「第6回宗像国際環境会議」の来場者などに50万円分を無料配布し、飲食店などの決済に使われた。

   維持・管理コストを上げないため、ブロックチェーンを採用しない地域電子通貨は多い。それでも、筑邦銀行が、常若通貨にブロックチェーンを活用したコミュニティ通貨プラットフォーム「Orb DLT」を用いて開発したのは、地元経済における存在感を発揮したいからだろう。

   ブロックチェーンを常若通貨に搭載していれば、筑邦銀行は購入履歴などの情報を蓄積でき、地元企業の融資業務に生かすことが可能だ。九州の金融機関初となる地域電子通貨の発行には、マイナス金利などで続く厳しい経営環境からの脱却を図ろうとする意図が見えてくる。

   閉塞感漂う地域経済に一石を投じようとするのは、金融機関だけではない。埼玉県深谷市はことし5月、地域電子通貨の導入に向けた実証実験として、「negi(ネギー)」と銘打った電子プレミアム商品券を1億1000万円分発行した。

   negiは常若通貨と同様に、QRコード決済を導入。スマートフォンにダウンロードする専用のアプリと、店舗側が読み取るためのQRコードが印字されたカードの2種類の決済方法を整え、老若男女が使いやすいようにしている。

決済手段だけではなく...先進事例は

   地域通貨はプラットフォームと予算さえあれば、導入に至るハードルは高くない。問題は定着させられるかだ。

   専修大学経済学部の泉留維教授らが行った研究では、地域通貨が発行後5年以上継続する割合は4割弱。過半数がコスト増や利用者・導入店の伸び悩みにより、淘汰されている。

   地域電子通貨に置き換えても、課題は似通る。無料配布するタイプは原資の確保が必要で持続性が課題となる一方、法定通貨と互換性があり販売流通させるタイプは、経済合理性の低さから、キャッシュレス決済市場で敗れる可能性がある。いずれにしろ、地域通貨を見せ物に終わらせずに、戦略性をもって流通させられるかが重要となる。

   模範はない訳ではない。飛騨信用組合(岐阜県高山市)の「さるぼぼコイン」は先進事例に該当する。

   さるぼぼコインは2017年12月に商用化を開始し、現在、加盟店は1000店舗、ユーザーは8000人を超えるなど、地域の決済手段として定着しつつある。

   それでも、キャッシュレス市場の競争激化に対する危機感があり、新たな利用拡大策として飛騨信組は2019年8月1日、さるぼぼコインのアプリ上で飛騨市の災害関連情報を発信するサービスを開始。アプリのプッシュ通知機能を市に提供し、市側がアプリを災害やクマ出没などの情報発信に活用できるようにした。決済手段に終始した地域電子通貨が多いなか、さるぼぼコインが一歩抜け出した格好だ。

   地域通貨は、経済活動の規模拡大を希求することだけが目的ではない。さるぼぼコインのように、決済手段としての枠を抜け出し、ユーザーからのプレファレンス(相対的なブランド好意度)をいかに集められるかが打開策となりそうだ。

(ライター 小村海)

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