2024年 4月 25日 (木)

「エアロゾル感染」「空気感染」違いはあるの? 新型コロナめぐり混乱、専門家の見解

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   新型コロナウイルスによる肺炎の蔓延が続く中、感染経路として「エアロゾル感染」する可能性があることが報じられた。インターネット上では、この「エアロゾル感染」がいわゆる「空気感染」と同じ意味なのか、違う意味なのかをめぐって混乱が生じている。ワイドショー番組でも、両者は同じと伝えるものもあれば、違うと伝えるものもある。

   専門家はJ-CASTニュースの取材に「『エアロゾル感染』という言葉は、学会などで正式に定義されたものではありません」と説明。予防方法については、引き続き手洗いなどの「飛沫感染対策を徹底することが肝要です」としている。

  • エアロゾルとは?(写真はイメージ)
    エアロゾルとは?(写真はイメージ)
  • エアロゾルとは?(写真はイメージ)

ワイドショーでも「エアロゾル感染」の扱い割れる

   英BBC中国語版は2020年2月8日、中国・上海市民政局が新型コロナウイルスの感染経路について、衛生防疫専門家の意見として、これまでの飛沫感染、接触感染に加え、新たに「エアロゾル感染」も含まれることを確認したと報道。中央日報日本語版も9日、同様の発表内容を報じている。

   10日にはワイドショーでも取り上げられたが、「エアロゾル感染」の扱いが若干異なる。たとえば「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)は、「(エアロゾル感染は)飛沫が空気中で混ざり合って感染するということで、空気感染ではない」という厚生労働省のコメントを紹介。「スッキリ」(日本テレビ系)では専門医を招いて解説し、図解で「(ウイルスを包んだ)水分が蒸発しウイルスが空気中を漂う→空気感染と同じ」と説明した。

   ネット上でも「エアロゾル感染と空気感染は違います!」「コロナウイルス、空気感染(エアロゾル感染)確認だとさ」「まぁ空気感染もエアロゾル感染ってことなのか?よくわからん」と錯綜している。

   「エアロゾル感染」について、どのように受け止めればいいのか。関西福祉大学教授で医学博士、また元外務省医務官として海外医療に携わってきた勝田吉彰氏は10日、J-CASTニュースの取材に「『エアロゾル感染』という言葉は、学会などで正式に定義されたものではありません」と話す。

「飛沫感染」と「飛沫核感染」は異なる

「エアロゾルというのはいわば霧状に浮遊する粒子のことです。私としては『エアロゾルを介した感染』という表現をしています。一般に『エアロゾル感染』と言われる場合、エアロゾルと一緒に『飛沫』がとんで感染したかもしれないし、『飛沫核』がとんで感染したかもしれない。どちらの場合でも使えることになります。

『飛沫感染』と『飛沫核感染』の2つの言葉の意味については、ほとんど異論を唱える人がいません。『飛沫感染』は、『飛沫』つまり痰や咳といった体から分泌されるものによって、核が覆われた状態でウイルスが飛び、感染することです。感染する距離はせいぜい半径2メートルです。飛沫感染するウイルスは、覆っている飛沫がなくなり、裸になったら活動できなくなります。

これに対して『飛沫核感染』は、ウイルスを覆っている痰や咳といった飛沫がなくなり、裸になった『飛沫核』でも活動できるウイルスによる感染です。こちらは慣用的に『空気感染』といわれます」(勝田氏)

   上海当局の発表を受けて、新型コロナウイルスの感染予防方法は変わるのか。勝田氏は「今行われている『飛沫感染』の対策を徹底することでしょう」とし、「あくまで私の推測ですが」と前置きしたうえで次のように見解を示す。

「理由としては、中国国外で(上海当局の発表と)同様の経路による感染が起きていないということがあげられます。今回の上海当局の発表は、中国の環境下であるから起きている感染なのではないか、というのが私の推測です。

今回の発表からは、2003年SARS流行中に発生した事象を想起させられました。中国の老朽化した集合住宅でトイレ配管の損傷部からウイルスが漏れ出し、同じ向きの部屋に居住する住民が集団感染する事象が発生し、すわ空気感染かと不安がかきたてられました。しかし、その後、同様の集団感染は発生していません。今回も中国の集団住宅で同様事象が発生したのではないか、と考えています」

「不確定な情報が流れ、マスクを奪い合うようなことが起きてはいけません」

   逆にネットの一部で言われているような「空気感染」、つまり飛沫核感染の可能性については懐疑的だ。勝田氏はこう話している。

「『飛沫核感染』するのは、たとえば麻疹(はしか)や結核です。飛沫核感染がもし疑われるようなことになれば、予防方法も麻疹や結核と同じになります。それに必要なのは『N95マスク』(編注:密度が高く、より小さな粒子を捕らえられる医療用マスク)です。

しかし、これまで明らかになってきたコロナウイルスの性格上、おそらく空気感染は起こらないものと考えられ、N95マスクまでは不要です。N95マスクが必要だという誤解が広がらないよう、私たちは情報に注意しなければならないと思います。

不確定な情報が流れ、マスクを奪い合うようなことが起きてはいけません。まずは手洗い、咳エチケット、アルコール消毒、飛沫がつく手すりなどの頻繁な掃除といった、基本の飛沫感染対策を徹底することが肝要です」

(J-CASTニュース編集部 青木正典)

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