2020年 9月 18日 (金)

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
「定年延長」国家公務員法改正案は、黒川氏人事とは関係ない

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   ツイッターで「#検察庁法改正法案に抗議します」という投稿が話題になった。国会で大きく取り上げられた。

   まず、法案はどのような内容なのか。国会のサイトにもあるが、これはいわゆる「改める文」となっていて、担当外の官僚やましては一般の人が読めるようなモノでない。内閣官房のサイトにある概要などの方がわかりやすい。

   筆者は元官僚でしかも、後述するようにこの問題を担当していたことがあるので、興味を持って法案原文を読んでみた。なお、筆者は政治関係でよくわかないものにツイートすることを非難するつもりはないことを予め断っておく。どのようなものであれば、興味を持って発言するのはいいことだ。

  • 国家公務員法改正案が国会提出された
    国家公務員法改正案が国会提出された
  • 国家公務員法改正案が国会提出された

定年延長までには「長い経緯」が

   国会提出された法案の正式名は「国家公務員法等の一部を改正する法律案」で、内閣官房サイトにある法案概要を読むと、検察官だけではなく、国家公務員全体の定年延長であることがわかる。簡単にまとめると、今の法律では、

(1)国家公務員一般の定年は60歳。ただし、定年の特例延長の規定あり
(2)検察官の定年は63歳、ただし検事総長は65歳

となっているのを、

(1)国家公務員一般の定年を65歳
(2)検察官の定年を65歳。特例延長の規定も追加

と改正するものだ。

   ネットの上では、三権分立が保てなくなるという意見もあるが、検察庁は行政の中の一部であるので、三権の問題ではない。というか、日本ではもともと行政と立法は首相が衆議院から選ばれる段階で独立していないので三権分立でなく、間違った考えを前提とする批判は意味ない。

   国家公務員定年延長には長い経緯がある。2008年国家公務員制度改革基本法中に65歳まで定年延長は盛り込まれている。その法律は福田康夫政権のときだが、その企画立案の一人として筆者も関わり、当時の民主党の協力で成立した。その後2回(2011年9月、2018年8月)の人事院から政府への意見申出、3回(2013年3月、2017年6月、2018年2月)の閣議決定を経て現在にいたる。

検察官だけ定年延長しないとどうなるか

   これまでの議論の基本は、定年延長と年金支給開始年令引き上げと連動することだ。こうした経緯からみても法務省における特定人物の人事とはまったく無関係に、政権交代を超えて議論されてきた。

   しかも、今回の法案について、安倍政権が黒川弘務・東京高検検事長を定年延長し検事総長にするために法改正するとの一部野党と一部マスコミの主張があるが、おかしな話だ。というのは、法施行日は2022年4月1日、黒川氏は1957年2月8日生まれの現63歳で、65歳の誕生日は2022年2月8日なので、適用はあり得ないからだ。

   また、今回の法改正で特例延長があるので、安倍政権が恣意的な人事をするための法改正ともいうが、任命は検察は行政の一部なので内閣が行うが、その延長は不可というロジックが破綻している。しかも、日本では官僚トップに政治任用がなく、政治任用が当然の欧米の実情(米は数千人程度、英独仏でも数十人から100人程度の政治任用がある)からみて、先進国の中で日本は最も政治人事介入のない国だ。今回の法改正でもその伝統を崩さなければいい。

   検察官だけ定年延長しないとどうなるか。定年延長は年金支給開始年令引上げと連動しているので、定年延長がないと、定年になるが年金はまだという「年金難民」になりうる。要するに、特定人物の人事と制度としての定年延長は別だ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「韓国、ウソの代償」(扶桑社)、「ファクトに基づき、普遍を見出す 世界の正しい捉え方」(KADOKAWA)など。


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