2021年 4月 18日 (日)

平畠啓史がJリーグを見続ける「意味」 サッカーを通じて会う「人」への思いを語る【インタビュー】

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   いよいよ2020年6月15日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による中断明けの対戦カードと日程が明かされるJリーグ。この人の姿を見る機会も増えることだろう。「僕にとっては、その先々にいる『人』に会っているという意味があったんですよね」。筋金入りのサッカー好きとして知られるお笑い芸人・平畠啓史さん(51)。3か月以上の中断期間で、ふとそう気づかされたという。

   Jリーグ公式YouTube番組に出演し、DAZN(ダゾーン)が配信するJ3の試合では実況を任されることもある平畠さん。この6月には、J1・J2・J3の全56クラブを巡った書籍も刊行し、もはや単なる「サッカー芸人」の枠を超えて存在感を増している。ただ本人は、「たとえば『日本のサッカーを変えよう』なんて大それたことは微塵も考えてないんですよ」と笑う。

   平畠さんにとって、Jリーグを追い続ける「意味」とは何なのか。J-CASTニュースは5月28日、オンラインでインタビュー。言動の軸にあるのは、どこまで行っても「人」だった。

  • 平畠啓史さん
    平畠啓史さん
  • 新著『平畠啓史 Jリーグ56クラブ巡礼2020』
    新著『平畠啓史 Jリーグ56クラブ巡礼2020』
  • 平畠啓史さん
  • 新著『平畠啓史 Jリーグ56クラブ巡礼2020』

「同じ試合を見ても、人によって感じ方は違いますよね」

「サッカー以外に趣味がない人間やなあと思いましたね。サッカーがないと土日が本当に長い。朝起きて、昼過ぎまでテレビを見ても、まだ全然時間がある。ここ数年は日曜日に必ず毎週スタジアムに行ったり毎節何試合も見たりと、バタバタしていることが多かったんで落差ありますよね」

   新型コロナウイルス感染対策のため、Jリーグは2月下旬の開幕戦直後に中断期間へ入った。取材日の時点で中断から既に3か月が経過。平畠さんはその間に感じたこともあった。

「何が寂しいって、誰というでもなく人に会えない。自分はもちろんスタジアムにサッカーを見に行っているんですけど、その先々にいる『人』に会っているという意味もあったんですよね。そんなことに気づかされました」

   今季の開幕前、並大抵のサッカー好きではそうできないことに取り組んだ。平畠さんは19年3月から20年2月にかけ、J1・J2・J3の全クラブを自ら行脚。『平畠啓史 Jリーグ56クラブ巡礼』(ヨシモトブックス)を6月5日に刊行した。各クラブゆかりのある人物に1人ずつ取材し、それぞれの「物語」を紡いだ1冊。その大きな特徴は、取材した人物が選手や監督だけでなく、サポーターやスタジアムDJなど、とにかく幅広いことだ。

「同じ試合を見ても、人によって感じ方は違いますよね。それぞれの感じ方を聞きたいし、教えられることも多いんですよ。1個1個が自分にとってためになります。たとえばAさんとBさんが正反対の意見であっても、どっちも参考になるし、自分のサッカーの見方も広がります」

「試合内容だけ知りたいならサポーターと話す必要はないでしょう。でも...」

   これまでに各地を訪れ、出会ってきた中で印象的な出来事はあるかと聞くと、「まず皆さんに本当に優しくしていただいています。こちらから押しかけているのに歓迎してくださったり、車で最寄り駅まで送っていただいたり、お土産をいただいたり。感謝しかないです」と頭を下げる。エピソードが次々と出てくる。

「FC琉球を草創期から支えるサポーターにヒロさんという方がいて、2020年の年明けに沖縄へ行った時にお会いしました。僕は沖縄が好きで、名所を訪れるわけでもなく行くんですけど、不憫なおっさんに見えたんですかね。ヒロさんが『海、行きますか?』って誘ってくれたんですよ。正月の静かな浜辺や、僕みたいなヨソモノには見つけられない海岸にも、車で連れて行ってくれたんです。

熊本の饅頭屋のおじさんにはずっと仲良くさせてもらっていて、電話で話したりお饅頭を送ってくださったり。群馬ではスタジアムグルメを出している方から、『プリン作ったから食べて!』と家に送ってくれることもあります。この前は浦和の中華料理屋さんから、『もう少し(新型コロナウイルスが)落ち着いたらみんなで来ていただいて一緒に食事しましょう』と連絡いただきました」

   「何にもない状態でいきなり仲良くなるのは壁が高いですが、サッカーやJリーグがあると一気に壁を超えさせてもらえます」と平畠さん。興味があるのは、その人たちがサッカーを通じて何を感じているか、にある。

「サッカーに関わる仕事・活動をされている方はたくさんいます。選手や監督はもちろん、実況や解説の方、売店のおっちゃん、ボランティアの皆さん、サポーターの方々。本当にありがたいことに、僕はいろんな人と話をさせてもらってきました。

試合内容だけ知りたいならサポーターと話す必要はないでしょう。でも僕は、1つの試合でも立場によって感じ方、見え方が違うということを、人を通じて知りたいです。十数年スタジアムに通って、毎回誰かと話していると、Jリーグの見方も自然に変わってきます。

たとえばスタジアムグルメのお店を開いている人。『昨日クラブに聞いたら○○人くらいの動員だって言うんですけど、蓋を開けたらめちゃくちゃお客さん来るんですよ。だったらもっと食材用意してましたわ!』って、嬉しい悲鳴かもしれないですけど怒ってるわけですよ。1万5000人収容のスタジアムに1万3000人入ったと言っても、立場によって感じ方が違いますよね。小さい話かもしれないですけど、そうした1個1個の物語みたいなものが僕にはすごく興味深い」

「ほんの0.1%でも『楽しみが増えた』と思ってくれたらそれでいい」

   中断期間中は、直接の触れ合いが大幅に制限。その中で、Jの現役選手がネットでライブ配信をするなど、新しい形でファンの前に姿を見せるようにもなった。「コロナが早く収束するに越したことはありません。一方で、この環境で生まれた交流の形は、Jリーグが再開しても続けられるんじゃないかなと思います」と平畠さん。「それに、九州で鹿島アントラーズを応援されている方もいれば、北海道でサンフレッチェ広島を応援されている方もいるでしょう。場所が離れていようが、試合後に全国のガンバのファン同士がオンラインで集まって、サッカーの話をすることも簡単にできる。それはすごく良いことだと思います」とファン同士のつながりにも期待する。

   自身もYouTubeチャンネル「ひらはたフットボールクラブ」を開設し、3月から精力的に動画配信。Jリーグ各クラブ注目の新加入選手紹介にはじまり、スタジアムDJの座談会、「鳥栖オススメツアー」紹介など、扱うネタは幅広い。J1に限らずJ2やJ3までテーマを広げているのも特徴だ。

「僕がマイナー志向というのもありますが、いわゆるスター選手や、J1で優勝を争うチームの主力はみんな知っています。もちろんそうした選手も大事ですが、僕があえて取り上げなくてもスポーツニュースなどで扱ってくれます。一方で優勝争いをするクラブだけで、リーグは成り立たない。『こっちにも素晴らしい選手がいますよ』『面白いクラブがありますよ』と伝えたい意識はあるかもしれませんね。

本当に本当のところでは誰にも教えたくないですけどね(笑)。好きなロックバンドとか深夜番組もできるだけ売れてほしくないタチなんですよ。でもいろんな人と共有できたら、実はもっと楽しめますよね」

   軸足を置いているのは、試合の詳細な分析や戦術論というよりも、サッカー小僧のように「もっとJリーグを楽しみたい」という純粋な思い。「『Jリーグ愛がすごいですね』と言われるんですよ。でも『サッカーが好き』ってことがすべての源。それが高じてやりたいことが増えていくし、気づいたら行動してるんだと思います」と平畠さんは言う。そんな自身が絶えず情報発信することの根っこには、どんな意識があるのか。

「サッカーを見ている人は誰しも普通の生活があって、仕事、子育て、学校と忙しい。『たくさん試合見ましょう』と言いたいけど、実際は見る時間がありません。必然的に、応援するクラブの試合、あとは優勝争いするクラブ同士の注目カードくらいに限られます。その中で『このクラブにこんな選手がいます』『こんな楽しみ方もあります』と僕が発信することは、意味があることなんじゃないかと思ってます。

自分が何かすることで日本のサッカーが強くなるとか、Jリーグが発展するとか、そんなことは全く考えていない、というか、できません。サッカー好きな人が僕の話を聞いて、ほんの0.1%でも『楽しみが増えた』と思ってくれたらそれでいい。Jリーグを強くしよう、日本サッカーを変えようなんて大それたことは微塵も考えてないんです(笑)」

再開したら「何気ない話をしたい」

   色々な立場の「人」に思いを馳せてきたからこそ、「戦術やシステムの大切さがまた分かってきました。今まで思っていた戦術論とは違った楽しみ方もできるようになってます」と平畠さんは話す。

「サッカーしているのは『人』なんですよね。以前は『システムがこう、戦術はこうで、こうやって攻めれば崩せるでしょ』って、理論や数字の噛み合わせで考えてました。だけど、そのシステムを採用するまでには監督や選手のいろんな試行錯誤があって、もしかしたら土地柄なんかも関係しているかもしれない。

僕も監督や選手とお話しさせていただく機会がありますが、『相手の長身FWにヘッドで1発決められて負けた。対策を練ってきて完璧のはずだった』といった裏話を聞かせてもらえることもあります。僕と同じくらいのおっさん世代の監督が夜中も考えまくってるんやろなあ、悔しいやろなあって思いますよ。試合でどっしり構えてる監督が、普段は狭い部屋でああでもないこうでもないと悩んでるって知ることもある。その中で、監督や選手がゴールを決めて、勝って喜んでるところを見ると感慨深くなりますよ」

   Jリーグ再開後は「できるだけ多くスタジアムで見たい。去年は本の制作で全国を移動していて、例年よりも見た試合数が少なかったので」。現地観戦できる日を待ち遠しく思う一方、「いざ始まったらいつもの光景に戻っていくのでは」とも考える。

「この中断期間で感じた『日常のありがたみ』は頭の片隅に絶対に置いておかないといけません。でも、う~ん、毎回『サッカーできてありがたい』と思いながら観戦するのはちょっと違いますよね。当たり前に選手たちがサッカーをして、僕らも当たり前に現地で見られるようになることが、本当に日常に戻るということだと思います」

   スタジアムに行けるようになったら何をしたいか。最後に聞くと、「何気ない話をしたいですね。『こんにちは、試合楽しみですね』『あそこのグルメが美味しいんですよ』とか、そんな話を皆さんとしたいです」と平畠さん。やはり、サッカーを通じて人と会えることを待ち望んでいた。

   このインタビューの翌日5月29日、Jリーグは7月4日にJ1を再開、6月27日にJ2を再開、J3を開幕することと、無観客での開催から始めることを発表。6月9日の実行委員会では、7月10日以降段階的に観客を動員する方針が示された。そして、対戦カードと日程が6月15日に発表される。スタジアムで試合を見られる日が、少しずつ近づいている。

(J-CASTニュース編集部 青木正典)

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