2024年 4月 25日 (木)

岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
アトランタ警官「ボイコット」相次ぐ異常事態

市長「警官の士気は10分の1以下に下がっている」

   6月17日、地元軍検察はロルフ元警官を、重罪謀殺などの容疑で訴追したと発表した。最高で死刑、あるいは終身刑となる可能性もある。今回の起訴は、警察の実力行使にまつわる事件としては異例の早さだという。

   検察は「ブルックスさんが武器を所持しておらず、テーザー銃は使用後すでに威力を失ったことを元警官は知っており、命が脅かされる危険はなかった」と指摘している。

   ブロズナン元警官も、倒れたブルックスさんを蹴ったとし、加重暴行などの容疑で訴追された。ブルックスさんは撃たれた後、2分12秒もの間、救命措置を取らずに放っておかれた、ともされている。

   2人の起訴が発表されたこの日、CNNは、市警の管轄する6区域のうちの半分で、警官が通報に対応しておらず、警官が次々と病欠を申し出ていることが明らかになった、と報道している。

   CNNの取材に対しアトランタのケイシャ・ボトムズ市長は、「警官の士気は10分の1以下に下がっている。いろいろなことが起きていて、率直に言うとその矛先が警官に向けられている」とし、「市は大幅昇給などを通して警官らとの約束を守ってきた。警官になった時の決意を忘れず、地域社会への約束を守ってほしい」と訴えた。

   警官らは、「士気が大いに削がれた。市の職員たちにも見捨てられた思いだ」と語っている。

   他のメディアも、アトランタの警官らの怒りや不安の声を取り上げている。

   ネットでは、「ついにボイコットか」、「無責任だ」などという声が上がっている。トランプ大統領は今回の事件について、「警官は正当な扱いを受けていない。警官に抵抗してはいけない。恐ろしい対立に陥り、あんな結末になる。ひどいことだ」と話した。その一方で、警察改革の必要性も認めた。

   16日には、警察改革の大統領令に署名した。しかし、ミネアポリスで白人警官が行ったような、容疑者を拘束するための首絞めを原則的に禁止するなど、限定的で不十分な内容だと非難が高まり、各地で抗議デモが続いている。

   そして、前回、2度にわたってこの連載で取り上げた、米西部ワシントン州シアトルを占拠して設置された「警察のいない自治区」は、今も続いている。(随時掲載)

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

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