2021年 9月 24日 (金)

外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(12)
ノーマ・フィールドさんと考える「人種・核・ウイルス」

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オバマ政権の総括

   最後に、シカゴが地盤だったオバマ前政権の8年間をどう評価するのか、ノーマさんに尋ねた。

「夫ともよく議論するのですが、彼は、黒人一家がホワイトハウスでいかにも『ふつう』に暮らす様子はアメリカ国民にとってとても大切だったという。ただ、私は、2期8年でやり残したことはたくさんあったと思う。オバマ政権は、経済の新自由主義にはあまり抵抗しなかったし、彼が目指した『核兵器のない世界』は遠のいた感すらある。民主党が上下院の多数をしめていた1期目に、もっと遺産になる成果を残せなかったのがとても残念。ただ、オバマ自身も先日、『自分が今、選挙に臨むなら、あの時とおなじ主張はせず、他のことを追求しているだろう』と語っていました。単に時代の流れを指しているのかも知れませんが、彼自身が、2期8年で不十分だったことを、認めているようにも聞こえました。」

   ちなみに、ノーマさんの夫は、アメリカ連邦環境保護庁で長年働いた法律家だという。

   アメリカでは、先住民の居留地では、部族の慣例法、州法、連邦法が三層で適用されることが多い。環境汚染や狩猟・漁業権などが争われるとき、州はとかく地域の利害関係に動かされることがあるが、一歩距離を置く連邦環境保護庁は、先住民側に立つ可能性を保持している、という。お目にかかったことはないが、たぶん、ノーマさんと同じく、リベラルな生き方を貫く方なのだろう。

   「源氏物語論」から、「天皇の逝く国で」を経て、「小林多喜二」へ。ノーマさんの仕事は、一見、脈絡なく展開してきたかのように映る。だが、「源氏物語論」は、王権論を踏まえた物語の解読だったし、「天皇の逝く国で」は、その問題意識の当然の帰結だった。「自粛」のただなかでも世間一般の常識に抗い、少数派であっても自分の信念に忠実な人々の記録は、戦前に言論統制で斬殺された多喜二の生き方にまで直結する。

   そう考えれば、日米のはざまで生きてきたノーマさんの姿勢が見事に一貫していることに気づかずにはいられない。それが、インタビューを終えての感想だった。

ジャーナリスト 外岡秀俊




●外岡秀俊プロフィール
そとおか・ひでとし ジャーナリスト、北大公共政策大学院(HOPS)公共政策学研究センター上席研究員
1953年生まれ。東京大学法学部在学中に石川啄木をテーマにした『北帰行』(河出書房新社)で文藝賞を受賞。77年、朝日新聞社に入社、ニューヨーク特派員、編集委員、ヨーロッパ総局長などを経て、東京本社編集局長。同社を退職後は震災報道と沖縄報道を主な守備範囲として取材・執筆活動を展開。『地震と社会』『アジアへ』『傍観者からの手紙』(ともにみすず書房)『3・11複合被災』(岩波新書)、『震災と原発 国家の過ち』(朝日新書)などのジャーナリストとしての著書のほかに、中原清一郎のペンネームで小説『カノン』『人の昏れ方』(ともに河出書房新社)なども発表している。

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