2020年 9月 26日 (土)

ネタバレ・スクショの功罪 識者に聞く「キン肉マン」声明の見解

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   人気漫画「キン肉マン」を掲載する「週プレNEWS」編集部は、漫画のスクリーンショットをSNSやブログに著作権者の許諾無く投稿する行為、悪質な著作権侵害、文章を含むネタバレ行為に対して、法的手段を講じることもあると発表した。

   スクリーンショットや悪質な著作権侵害に対する処置には、称賛の声が寄せられている。一方でネタバレ行為に関しては、感想との線引きが不明瞭であるために、読者からは疑問の声も上がっている。

   J-CASTニュースは、漫画サービス「アル」の代表である古川健介(けんすう)さんと、NHK「みんなで筋肉体操」に出演して以来、「筋肉弁護士」として知られる小林航太弁護士に、「週プレNEWS」編集部の対応について見解を尋ねた。

  • ゆでたまご公式サイトより
    ゆでたまご公式サイトより
  • ゆでたまご公式サイトより

発端は作者「ゆでたまご」嶋田隆司さんのツイート

   「キン肉マン」は、漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)で、1979年から87年まで連載していた人気作品。作者は、嶋田隆司さんと中井義則さんの2人組漫画ユニット「ゆでたまご」。2011年からは、ウェブコミック「週プレNEWS」で続編の連載を開始。さらに、20年8月17日からは雑誌「週刊プレイボーイ」でも同時連載することとなった。

   連載日の毎週月曜日になると、SNS上には漫画に飛びついてきた読者たちによる感想があふれていた。一方で、悪質なネタバレ行為も横行するようになってしまった。これを受けて9月1日、作者の1人である嶋田さんは、自身のツイッター上で苦言を呈した。

「WEB『キン肉マン』の勝手なスクショのことです。特に今回のラストはスクショだらけ。私は悲しくなりました。これ以上続けるなら集英社さんと共にそれなりの罰則をかんがえます。週プレでの紙の本をたのしみにしているんです。どうかスクショはやめてください」

   さらに9月10日、公式サイト上で「ゆでたまご」と「週プレNEWS」編集部による声明が発表された。編集部からは

「たとえ軽い気持ちであったとしても、漫画のスクリーンショットをSNSやブログに著作権者の許諾無く投稿(アップロード)する行為は、法で定める一部の例外(※)をのぞき、著作権の侵害にあたり、場合によっては刑事罰が科され、あるいは損害賠償請求の対象となります」
「悪質な著作権侵害、ネタバレ行為(文章によるものを含みます)に対しては、発信者情報開示請求をはじめ、刑事告訴、損害賠償請求などの法的手段を講じることもありますので、ご注意ください」

と、スクリーンショットの無断掲載や、悪質な著作権侵害、ネタバレ行為については、法的措置を検討することを発表した。

「スクショ」「ネタバレ」の法的見解は

   「週プレNEWS」編集部の声明を受けて、読者からは、

「キン肉マン、スクリーンショットの禁止はわかるんだけど文章によるネタバレも告訴の対象って明示されるともう感想つぶやけなくなっちゃうよなって」
「キン肉マンのスクリーンショット問題はどの程度のものを問題にしてるのか分からなかったけど、単なるネタバレに対してまで刑事訴訟とか言い出してて本気なのかな?法的根拠なくない?」

といった疑問の声があがっている。

   そこでJ-CASTニュースは、コスプレイヤーとしてもマンガやアニメを愛する小林弁護士に法的な見解を尋ねた。

   小林弁護士は、無許可で漫画のスクリーンショットを用いることの法的問題を、こう指摘する。

「SNS 上やブログに無許可で漫画のスクリーンショットを掲載する行為は、著作権(複製権及び公衆送信権)の侵害になると考えられます。
著作権法上の『引用』の要件を満たしていれば、無許可での掲載も例外的に適法になります。ただし、『引用』の成否は判断が難しいですし、ツイートに漫画のページをそのまま添付するような場合はまず『引用』が成立しないと考えられますので、漫画のスクリーンショットを用いることは極力避けた方が無難です。
また、『キン肉マン』では散見されますが、一部のコマを切り抜いて台詞を改変する場合などは、著作者人格権(同一性保持権)の侵害にも当たると考えられます」

   一方で、文章によるネタバレツイートに対しては、法的措置を執ることは難しいという見解を示した。

「今回"ネタバレ"として具体的に想定されているのは、無料配信された漫画の内容に言及しつつ、感想をツイートすることだと思います。それを前提にすると、"ネタバレ"ツイートによっては何らの権利侵害も生じず、民事上・刑事上の手段は執り得ないのではないかと考えます」

画像拡散で有名作品になった例も

   今回はゆでたまごの2人が明確にスクリーンショットを禁じているために、無断でのスクリーンショット使用は、権利者はもちろん読者からも非難されている。一方で作者や出版社によっては、マンガの画像が広まることを容認、もしくは黙認している場合もある。マンガのコマがミーム化することで、作品が売れる可能性があるからだ。

   漫画サービス「アル」の古川さんは、コマ画像が広まることで有名になったマンガもあると指摘する。

「たとえば、『NEW GAME!』などは、マンガのコマがミーム化することにより、作品の知名度に大きく影響をしていると聞いたことがあります。実際に当時、単行本が多くの本屋で売り切れたりもしたようです」

   「今日も一日がんばるぞい!」と意気込む女の子の1コマは、SNS上で多用されている。これは、漫画「NEW GAME!」(作:得能正太郎さん)の主人公、涼風青葉のセリフ。現在では同シーンのラインスタンプを販売するなど、出版社もこの影響を認知しているとみられる。

漫画「NEW GAME!」(作:得能正太郎さん)の主人公、涼風青葉
漫画「NEW GAME!」(作:得能正太郎さん)の主人公、涼風青葉

   一方で、直接作品の知名度につながりきっていないケースもあると古川さんは述べる。

「たとえば、『しあわせアフロ田中』の中の『誰も消防車を呼んでいないのである!』というものもミーム化して有名になりました。こちらは、弊社事例で恐縮ですが、『消防車メーカー』というものを作って提供したところ、1万件近くの画像が作成されたのですが、その際に『このマンガがアフロ田中だとは知らなかった』という声も多数いただきました。作品名などがセットできちんと提供されないと『見たことがあるけど、作品を知らない』ということも起こりえると考えています」
消防車メーカー
消防車メーカー

   古川さんは、作者がスクリーンショットについてポジティブである場合、作品名がわかりやすく記載された状態で掲載されるなどの対応があるとよりよい形になるのではないかと考えている。そこで漫画サービス「アル」を立ち上げ、出版社や作者から許可された漫画のコマ画像を自身のブログなどに埋め込むことができるサービスを展開している。

「マンガのスクリーンショットのアップロードなどは、作者によっては、『作品の宣伝になるからどんどんやってほしい』という人もいれば、やらないでほしいという方もいます。
また、スクリーンショットのアップロードをされるケースを見ていると、少なくないケースで法令で定められている範囲を超えていることが多くあります。
我々は、まず、一番大事にすべきは、作者の方や出版社の方の想いであり、また作品がきちんと売れて読者に届くことだと考えています。その上で、『画像が出回ることで、宣伝に少しでもなれば』と考えている作者・出版社の方と、インターネット上でコマを使うことでコミュニケーションを盛り上げたい人をつなげることで、よりよい形にしたいと考えたのがきっかけです」

   そして、権利者も読者も安心して楽しめる方法を提供できるべきだと述べる。

「漫画業界では、あまり読者の楽しみを制限しない、うるさくいわない、という文化があります。しかし、それはあくまで、作者も出版社の許容範囲の話にすぎません。SNSなどが爆発的に普及している今、権利者も読者も安心して楽しめる方法を提供できるべきだと思っています」

不明瞭な「ネタバレ」の定義

   「キン肉マン」の措置は、ほかの漫画にも波及するのではないかと、読者から高い注目を集めている。そんな中、「少年ジャンプ+」編集長の細野修平さんは9月10日、ツイッター上で、「週プレNEWS」と同じスタンスだとコメントした。「ジャンプ+」では、「週プレNEWS」から2週遅れで「キン肉マン」を掲載している。翌11日には下記のツイートを加えている。

「2週間ネタバレ駄目ということではないです。『キン肉マン』に関して酷いネタバレをやめてねというのが、ゆでたまご先生と同じ気持ちということでした」
「酷いネタバレ」とはどういったものを指すのか、具体的な説明はない。
「これは集英社全体の方針がそうなんですか?」
「『ネタバレ』の基準は人それぞれなんですから曖昧なままの方針で訴訟とか振りかざさないでよ頼むから」
「マジで『ネタバレ』の定義をきちんと決めてくれよ」

   読者たちの間には、感想をつぶやくことへの不安が残っている。さらに今後、この方針が「ジャンプ+」連載作品を始めとする他のマンガにも適用されていくのか、注目が集まっている。

   このように、マンガの感想をつぶやくことに大きな影響を与えた「週プレNEWS」編集部の声明に対し、小林弁護士は苦言を呈する。

「ゆでたまごの嶋田先生や『キン肉マン』編集部が紙媒体で作品に触れる読者を思う気持ちも理解できるのですが、文章によるネタバレに対してまで法的措置を仄めかすのはやや踏み込んだ表現であるという印象を受けました。これまで(私も含め)大勢のファンが毎週月曜日0時のキン肉マンの更新を心待ちにし、読み終わるや否や、あれこれ感想を言い合うということを繰り返してきました。もちろん、皆『キン肉マン』が大好きだからです。
今回のように、ゆでたまご先生・編集部としてはどこまでが許容できるのか、その線引きも不明確なまま法的措置を仄めかす声明が出されてしまうと、上述のとおり、感想ツイート程度であれば法的問題は生じないと思われるとはいえ、ファンとしては感想を言うことも委縮して難しくなってしまいますし、盛り上がっているところに冷や水を浴びせられたような気分になってしまうのではないかと思います。他方で、法的に問題ないとはいえ、作者・編集部の考えも尊重されるべきであることも間違いありません。作者・編集部の考えを理解してもらうためにも、声明の表現やその後のツイート内容をもう少し慎重に吟味しても良かったのではないかと思います」

   なお小林弁護士は来春、「オタクのオタクによるオタクのための法律書」をテーマにした『オタク六法』(KADOKAWA)を出版予定だ。同書では、「オタ活」中のトラブルなどについて、ケーススタディを紹介。SNS利用の注意点やトラブルにも触れる予定で、「オタクライフをエンジョイする皆さんの法的なガイドブックになれば良いですね」と語っている。

   古川さんは「週プレNEWS」編集部の声明について、適切な対応だという見解を示しながらも、ネタバレの許容範囲については分かりづらいと述べる。

「ゆでたまご先生が心を痛めている以上、適切な対応だと思います。一方で読者の方が『どこまでやっていいのか』と不安や心配になっている面もあり、ネタバレの範疇や、どこからは問題で、どこからは許容範囲なのかわかりづらいという問題もあります。
しかし、これらを権利者がルールを明確にしてしまうと、NGのものへの対応を強くしないといけないという圧力にもあり、ルール上は許容のものだが、問題があるケースへの対応が難しくなったりします。それをやる場合、厳しめに線引きをすることになり、権利者も読者も損してしまうということになりかねません。 その意味で、実務的に書ける範疇としては、権利者側の対応としては妥当な範囲だと思います。
むしろ、我々のような権利者ではない漫画関係者が、双方が納得しやすい基準の提案などを行うべきなのかもしれません」

   そして古川さんは、「ネタバレ」は人によって捉え方が違うとし、自身のブログでその見解について記している。(「マンガのネタバレ問題がややこしい理由」)

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