2021年 8月 2日 (月)

岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
討論会の夜、NYの街頭で聞いた「トランプ支持」

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「バイデンに投票したが、勝つのはトランプ」

   その店から歩いて数分の店では、外に4台のテレビが置かれ、4台とも討論会を映していた。討論会でロシアとイランの選挙妨害の話題が上がると、「他国の選挙妨害をしているのは、アメリカだ」「そうだよ、イランとかロシアとか」と言い合っている2人がいた。

   中東で育ち、英米に国籍があるインド系男性(26)と、シリア系アメリカ人男性(27)だった。2人ともトランプ氏に投票するという。

   インド系男性は、「僕らは2人とも高学歴で科学者なんだ。政治についてもいろいろな情報を入手して、客観的に分析している」と話し、「バイデンはFRB(連邦準備制度理事会、米国の中央銀行)の影響を強く受けている」と批判した。

   シリア系男性は、「この国、そして世界を動かし牛耳っている勢力『エスタブリッシュメント』と、トランプは闘っている」と評価した。

   その隣にテーブルには、カリブ海にあるトリニダード・トバゴ出身のアメリカ人2人と、店員の白人女性がいた。彼女はすでにバイデン氏に投票したが、「勝つのは誰か、わかってる。トランプよ。支持者たちの思いは、変わらないわ」と言い捨てて、店の中に入っていった。

   男性2人は、トランプ支持者だった。

   隅の席で1人でコーヒーを飲んでいた白人男性ポール(73)が、男性2人に向かって、「お前たちが誰に投票するか、内緒にしておいてやるからな」と笑った。

   この人は店の常連だという。4年前はトランプ氏に投票した。

「オバマが連邦政府の負債を2倍にした。民主党にはもう任せておけない。金のことがわかる人間が必要だ。そう思ったからだ」

   トランプ氏が「人工妊娠中絶」と「銃規制」に反対しているため、今回は誰にも投票しないが、どちらか選ばなければならないとしたら、迷わずトランプ氏を選ぶという。「人工妊娠中絶」を支持するが、育てられない子供の命を守るために、それ以前に「避妊」の必要性を強く感じている。

   ポールは、トランプ氏が再選、しかも圧勝すると予想する。

「アメリカ人の多くはまだ、保守的だ。5か月前から高まった黒人差別運動に便乗した暴動で、ビジネスがめちゃくちゃにされ、人が殺された。あれで彼らは、何かを手に入れたのか。『秩序を取り戻す』と力強く訴えたのは、トランプだ。バイデンには、強さがない。民主党で最良の候補が彼しかいないのは、悲しいことだ」

   店には民主党支持者も多くいたはずだが、彼らは臆することなく自分の考えを話していた。そして、この街では珍しく、彼らに喧嘩をふっかける人もいなかった。

   ニューヨーク市は今でも圧倒的に民主党支持者が多いはずだから、じつに不思議な夜だった。

   翌日、トランプ氏を毛嫌いしているドアマン2人が私の顔を見るなり同時に、「討論会を見たか」と聞いてきた。

   西アフリカのマリ共和国出身(54)と、プエルトリコ系(50代)のアメリカ人だ。そしていつものように、大声でトランプ批判を繰り広げた。

「前回よりはまともだったけど、嘘八百は相変わらずだ」
「トランプは自分のことしか考えていない」

   締めの言葉は、やはり「Anybody but Trump!」だ。

   投票日まであと10日。運命の日がやってくる。(随時掲載)

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

   
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