2024年 4月 25日 (木)

芸能人の「政治発言」と、政治家の「インフルエンサー化」の功罪【歳末ネットメディア時評】

「自然体」か「背伸び」か、政治家のソーシャル活用

   政治家が近く感じられる、フランクな投稿も増えた。河野太郎衆院議員のツイッターは、行政改革担当相になってから、ますますスピード感を増している。筆者は昨年6月、河野外務相(当時)がツイッターで受けるポイントは「意外さ」「即レス」「いじられ力」にあると指摘した。その後、防衛相を経て、菅義偉政権になっても「ハンコ廃止」のように、時にはリトマス試験紙、はたまた既成事実をつくるため......と、行政改革のツールとして活用しつづけている。

   河野氏のデジタル対応が「自然体」に見えるのに対して、その親分には「背伸び」が指摘された。菅首相のニコニコ生放送での「こんにちは、ガースーです」発言(12月11日)は、ネットでの愛称に「乗っかった」形だったが、GoToトラベルなどをめぐる議論が過熱する中だけに、不評を買った。

   ネット文脈を踏まえていないと思われた点も、火に油を注いだ要因だろう。経緯をさかのぼる限り、元ネタは「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」などを手がけた日本テレビの元プロデューサー・菅賢治氏だ。かつて菅氏は「絶対に笑ってはいけない」シリーズなどに、たびたび「ガースー」と呼ばれて登場していたが、そこには「ザギンでシースー(銀座で寿司)」といった逆さ言葉を使いそうな「業界人たる菅P」という、ある種の蔑称かつ自虐ネタが背景にあったと思われる。そこまで理解して......とまで言うのは酷だが、ガキ使の「ガースー」とは違うアクセントからも、どこか「内なる部分から出た言葉」と思えなかった視聴者は少なくないはずだ。

   前任・安倍晋三氏による、うちで踊ろう(星野源さんの楽曲)の「勝手コラボ」動画が受け入れられなかったのも、同様の違和感からだろう。くしくも約50年前、大叔父にあたる佐藤栄作元首相は、新聞記者を排し、テレビカメラの前で退陣会見を行った。ここから、いわゆる「テレポリティクス」が進み、00年代の小泉純一郎政権時代にピークを迎える。その後継が安倍氏(第1次政権)だったが、民主党政権を経て、わずか十数年で環境は大きく変化した。霞ヶ関の「デジタル化」は進みつつあるが、永田町のそれも、喫緊の課題だろう。

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