2021年 5月 13日 (木)

個人投資家が結託、巨大ファンドに反乱... 米市場を揺るがした「ゲームストップ騒動」を解説する

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   「ゲームストップ」。今回のことがなければ、多くの日本人は一生聞くことがなかった名前だろう。米国のゲームソフトの小売り大手の会社だ。

   本社はテキサス州、米国を中心に5000以上の店舗を持つが、オンラインゲームの台頭に新型コロナウイルス禍が加わり、2020年7~9月期の売上高は前年比3割も減少し、通年でも赤字見通しと、お世辞にも優良企業とはいいがたい。

   その株価が、このところ、常識では考えられない急騰と急落を繰り返し、あおりでダウ工業株30種平均株価が一時、3万ドルの大台を割り込むなど、米株式市場を揺さぶっているのだ。

  • ゲームストップ騒動とは
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個人投資家が「反乱」を起こした理由

   ゲームストップの株価は2020年を通じて概ね10ドルそこそこの水準で推移し、最近まで1日の出来高も1000万株に届かない日がほとんどという目立たない存在で、12月には相場全体の上昇トレンドに乗ったといっても20ドルにやっと届いた程度だった。

   それが、21年になって1月13日に前日終値比11.45ドル高の31.40ドルへ1.57倍に急騰し、出来高も1億4450万株に膨らんだのを皮切りに、以降、激しい値動きになり、28日には一時、483ドルの最高値をつけた。この日の最安値は112.25ドルという常識ではありえない乱高下だ。他に映画館大手AMCエンターテインメントなどの株価も、ゲームストップほどではないが、大きく動いた。

   こんなことが起きたのは、個人投資家のファンドへの「反乱」が原因だという。

   株価下落を見込んで「空売り」をする「信用取引」がある。その企業の株を保有していなくても、例えば時価100ドルの時に「売り」を注文し、一定期間後、株価が80ドルに下がったところで買い戻して精算すると、差し引き20ドル儲かる。

   ヘッジファンドなどは、これを大量に仕掛ける。それが市場に伝わり、値下がりを見込んで株主が慌てて売り、株価が下がれば、まさにファンドの思うつぼ。巨額資金で売りを仕掛けるのは実質的に相場操縦だとの個人投資家の反発が根強い。

米SNSで繰り広げられた「作戦会議」

   今回も、業績不振企業の株価下落を見越して「空売り」を仕掛ける米投資情報会社「シトロン・リサーチ」が、ゲームストップなどについて、株価下落を予想した。ところが、1月下旬、ネット交流サービス(SNS)「レディット」の個人投資家のコミュニティー「ウォールストリート・ベッツ」に、

「買い支えろ」
「金持ちのファンドとSNSメンバーとの闘いだ」

などと、ゲームストップ株などの購入を呼び掛ける投稿があふれた。レディットで「作戦会議」が繰り広げられ、大量の買い注文を入れて株価急騰を仕掛けた。

   空売りを仕掛けた株が値上がりすると、先の例でいえば、100ドルで売りを仕掛け、120ドルに上がれば差し引き20ドルの損になる。このため、急騰した場合は一定の損失を覚悟で慌てて買い戻す「損切」をせざるを得なくなることもある。

   そうなると、空売り分を買い戻すことで一段と買いが膨らみ、株価が一段と跳ね上がる。「踏み上げ」といわれる状況が、今回は、まさに起こった。シトロンは多額の損失を被り、1月29日に空売り狙いの投資手法からの撤退発表に追い込まれた。

「個人だけが規制された」

   さらに、同様の動きは商品市場などに飛び火。個人投資家がSNS上で銀の買いを呼びかける動きが増え、ニューヨーク市場の銀先物3月物は28日に一時、前日比6.7%上昇、2月1日には約10%上がって1トロイオンス30.35ドルと8年ぶりの高値を付けるという「おまけ」もあった。

   だが、今回の個人投資家の売買の舞台となったネット証券「ロビンフッド」などは、1月28日に相場の乱高下を受けてゲームストップなど急騰する銘柄の取引を停止した。このため、個人の買いが途切れ、ゲームストップ株は同日、44%も急落した。

   ネット証券を利用する個人投資家が取引機会を奪われた一方、投資ファンドなどは影響を受けなかったことから、

「ファンドは自由に売り買いできるのに、個人だけが規制された」

との批判が巻き起こった。ロビンフッドは当初、「利用者の保護」を規制理由に挙げていたが、実際には、個人の取引急増で取引を決済する清算機関への預託金が不足したことが原因だったと報じられている。

   日本では仕手戦といって、特定株をめぐり、売買を仕掛けて吊り上げることが以前はあったが、今回は個人投資家がファンドを打ち負かしたとして、数年前にウォールストリートを占拠する運動と重ね合わせ「エスタブリッシュ(支配層)への反乱」と評価する向きもある。

「反乱」の真相は?専門家の見解

   一方、米ブルームバーグ通信(2月2日、日本語版)は「実はヘッジファンド同士の暗闘か――個人投資家が『絶好の口実』に」と題して、「個人投資家の買い注文の結果というよりも、ヘッジファンドを標的に別のヘッジファンドがショートスクイーズを仕掛けたように思える」という専門家の見方を伝えており、真相はやぶの中だ(ショートスクイーズとは、市場が空売りに傾いている時に大きく買いを仕掛けて、相場を高めに誘導しようとすること)。

   今回の経緯は、SNS上の「買おう」といった呼びかけが相場操縦になるかという新たな問題も提起している。証券会社やファンドが「談合」して売りなり、買いなり、同一行動をとれば違法行為になる。SNSという公開の場での個人の呼びかけに多数の投資家が応じて相場が動いたが、これが相場操縦になるか、またSNSでの「作戦会議」は「共謀」にあたるかなど、専門家の意見は分かれる。

   いずれにせよ、ゲームストップのように業績とかけ離れて買い上げられた「実態の裏付けを欠く株価」(証券筋)は長くは続かない。

   直近2月2日のゲームストップ株の終値は前日終値比135ドル(60%)安の90ドルと急落。ロイター通信(2月3日、日本語版)は「個人投資家の熱狂近く終息か」と題して「このようなゲームはこうした結果になる。しばらくはうまく行くが、そのうちうまく行かなくなる。うまく行かなくなると急反転する」との専門家のコメントを報じている。買い上げてファンドに一泡吹かせた個人投資家だが、高値づかみに終わることが往々にしてある。

   金融緩和により株価が実体経済とかけ離れたバブル懸念も指摘される中、今回の騒動が今後、市場全体にどのように影響するか注視していく必要がある。

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