半藤一利さんが「100年」の単位に込めた意味
保阪正康の「不可視の視点」<特別編>(2)

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   半藤一利さん(享年90)の遺言として、私はいくつかの大切な言葉があると受け止めている。むろん半藤さんは、特に遺言として言葉を残したわけではない。年齢から言って、死を受け入れる心境にはなっていただろうが、かと言って今年の1月12日に死が訪れるとは考えていなかったように、私には思える。従って半藤さんとの交流の中で、私が遺言として受け入れている言葉を語っていきたいと思う。

  • 2021年1月に死去した半藤一利さん。「日本社会が四文字七音の世界に没入したなら、時代は危険だということだよ」などと訴えていた(写真:明田和也/アフロ)
    2021年1月に死去した半藤一利さん。「日本社会が四文字七音の世界に没入したなら、時代は危険だということだよ」などと訴えていた(写真:明田和也/アフロ)
  • ノンフィクション作家の保阪正康さん
    ノンフィクション作家の保阪正康さん
  • 2021年1月に死去した半藤一利さん。「日本社会が四文字七音の世界に没入したなら、時代は危険だということだよ」などと訴えていた(写真:明田和也/アフロ)
  • ノンフィクション作家の保阪正康さん

「日本社会が四文字七音の世界に没入したなら、時代は危険だということだよ」

   ひとつは、「絶対」という言葉を使わないという覚悟なのだが、これについては前回に書いた通りで皇民教育への怒りが背景にある。事象を相対的に見なければ、また軍事ファシズムへの道に入り込んでしまうとの怒りである。私は、この言葉を使わない半藤さんの心理に潜んでいる歴史観こそ、もっと検証されるべきだと思う。もうひとつは、四文字七音を安易に用いるな、ということであった。これは私との雑談でも何度か繰り返していた。幕末維新から現代まで、日本人はこの四文字七音が大好きなのである。

   いくつか思いつくままに並べてみよう。尊皇攘夷、大政奉還、公武合体、富国強兵、昭和に入ってからも王道楽土、五族協和、国体明徴、万世一系、一億一心、聖戦完遂などがすぐに浮かぶ。これはいわば左翼的な運動でも同じで闘争勝利、要求貫徹などが次々に浮かんでくる。日本人の心情に合うリズムなのかもしれない。同時にこれは日本人の感性に合致して、その段階で思考が止まってしまうということでもあろう。つまり考えることを放棄してしまうのである。その上で陶酔に陥るのだ。半藤さんは、「日本社会が四文字七音の世界に没入したなら、時代は危険だということだよ」と晩年には何度か繰り返していた。同時にそのような原稿も書いて注意を促していたのである。

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